理工学部/電気電子工学科研究室紹介

電気電子工学科の研究とは

電気電子工学科では、「エネルギー・環境」「電子物性・デバイス」「システム・情報通信」「電子生命情報」を研究の4本柱として掲げています。

エネルギー・環境研究室

村本教授・村上准教授

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沿面放電の様子

電気エネルギーの発生や貯蔵、輸送、変換を環境にやさしく行うための材料工学の研究に取り組んでいます。一つは、電気を通さない絶縁材料についての研究です。発電所で作られた電気は送る途中の損失を少なくするため、電圧を高くして送ります。その電圧は何万ボルトに及び、電気絶縁材料が劣化すると沿面放電などにより膨大な電流が流れ、機器が焼損につながります。当研究室では、このような絶縁破壊のきっかけとなる電界発光についての研究を行うとともに、植物油や氷など環境にやさしい新たな電気絶縁材料の開発を行っています。

もう一つは、電気を貯める電気二重層キャパシタについての研究です。科学反応を利用して蓄電する電池に対し、コンデンサは電気を電子のまま蓄えます。その容量の非常に大きなものが電気二重層キャパシタであり、当研究室では、電気二重層キャパシタの高性能化をめざした研究にも取り組んでいます。

山中教授

図、写真

本研究室所有の太陽光発電システム

太陽光発電の急速な普及にともない、数々の問題点が浮上しています。その一つに、運用中の太陽光発電システムの評価・診断の難しさがあります。太陽光パネルは住宅の屋根に設置されることが多いため、表面が壊れたり汚れたりしても簡単には分かりません。しかも、発電量は季節や天気によって大きく変化するので、単に発電量をモニターするだけでは、太陽光パネルなどの故障を見つけることは困難です。そこで当研究室では、太陽光発電システムの評価・診断方法についての研究を実施。これまでに、太陽電池の特性であるI-Vカーブを用いる方法や発電量をシミュレーションするソフトウェアを使った方法などを提案してきました。

益田教授

図、写真

現在の電力系統では、長年にわたって培われてきた制御・運用技術によって電力が安定に供給されています。しかし、風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギーの大量導入、従来の電源ミックスの見直し、蓄電池や電気自動車といった新たなエネルギー機器の普及、電力自由化に係る制度変革など、将来の電力系統にはこれまでにない大きな変化が予想されています。当研究室では、2030~2050年といった将来の電力系統を想定し、需給バランスや適切な潮流状態を維持するための先進的な制御・運用に関する研究に取り組んでいます。研究には主として高速計算機を使用し、系統解析のためのモデル・アルゴリズムの設計・開発や、シミュレーションによる分析・評価を行っています。

電子物性・デバイス研究室

内田教授

図、写真

Liイオン電池の充放電測定

本研究室では、次世代の高性能エネルギーデバイスに関する研究を行っています。具体的には高容量Liイオン電池と高効率太陽電池をテーマに掲げ、これを実現するための新規材料開発とデバイス作製研究を行っています。新規材料開発は各種ドライプロセスを駆使して、新たなナノ構造を有する複合材料の創成を試みています。これに関連して、異種材料の接合界面を高精度に制御し、高強度に接合する新規異材接合技術の開発にも取り組んでいます。

児玉教授

図、写真

透過電子顕微鏡

電子顕微鏡は、パソコンなどの電化製品に数多く使われているトランジスタ・集積回路などの半導体デバイスの研究開発過程や製造における品質管理になくてはならない存在です。通常、顕微鏡は光を使いますが、電子顕微鏡は光に比べて波長が短い電子を使うため、より小さな物を観察することが可能です。当研究室では、電子顕微鏡の高機能化・高性能化をめざし、電子銃や検出器、信号処理システムの開発、真空中の電子の振る舞いの解析、ナノ構造の計測技術開発などに取り組んでいます。

平松教授・竹田准教授

図、写真

カーボン構造体の解析に用いる
ラマン・フォトルミネセンス測定装置

プラズマ化学気相堆積法という手法を用いることにより、メタンと水素の混合ガスから、ダイアモンドやカーボンナノウォール、カーボンナノチューブなどのカーボン構造体を創製しています。現在は、これらカーボン構造体のすぐれた特徴を応用した次世代電子デバイスの開発に注力。ガスセンサやバイオセンサ、燃料電池など、カーボンナノウォールやカーボンナノチューブを利用した種々の新しいデバイスの実用化には大きな期待が寄せられています。

村田教授

図、写真

マルチエミッタ評価装置

有機ELディスプレイは、スマートフォンやタブレット向けの次世代ディスプレイとして期待されています。これに対し、電界放出ディスプレイは、薄型大画面の次世代ディスプレイとして期待されています。その原理は、平面状のフィールド・エミッション電子源から真空中に電子を放ち、蛍光体にぶつけて発光させるというものです。当研究室では、平面状のフィールド・エミッション電子源となるフィールド・エミッタ・アレイやカーボンナノチューブの形状や配置を最適化するために、マルチエミッタの評価技術やフィールド・エミッションのシミュレーション技術の開発を行っています。

システム・情報通信研究室

小林准教授・中條教授

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FPGAを用いた可視光通信送受信機


図、写真

モバイルロボットの無線制御

照明やディスプレイのLEDを送信機、室内カメラやスマートフォンカメラのイメージセンサを受信機とする可視光を用いた無線通信技術を開発しています。可視光通信は 電波による混信がなく、指向性が鋭く情報漏えいの心配がありません。イメージセンサにより送受信機の位置特定やマルチデバイスと双方向通信も可能です。イメージセ ンサのローリングシャッターを利用した高速伝送技術、機械学習を利用した信号検出など、通信技術と映像技術を融合した研究を進めています。 もう一つは、ロボットやドローンを無線で遠隔制御を行うための無線通信技術を開発しています。高信頼な無線制御を行うためには、コントローラとロボットの間で周期 的な双方向通信の必要性や時間制約があったりと、汎用の無線通信とは求められる通信のあり方が大きく異なってきます。フィードバック制御や自律分散制御、様々な制 御の目的に合わせた通信方式設計など、通信技術と制御技術を融合した研究を進めています。

都竹教授

図、写真

受信環境の評価

東京スカイツリーの基幹となっている地上デジタル放送のシステム開発に携わってきましたが、地上デジタル放送については、いまだ正確な周波数の測定法や電波の受信環境の評価法が確立されていません。そこで、新しい周波数の測定法や受信環境の評価法を開発し、その有用性を実証することで、地上デジタル放送の発展に寄与することをめざして研究に取り組んでいます。また、太陽光発電を動力源とする航空機、ソーラープレーンや飛行船を無線通信や放送の基地局として利用する研究も進めています。

堀田教授

図、写真

アスベスト検出の例
(赤い枠で囲われた部分が自動的に
検出されたアスベストです)

コンピュータに人間のような知力を持たせたいというのは長年にわたる人類の夢です。そうした試みのひとつとして、当研究室では、コンピュータに学習能力や認識能力を付与するパターン認識と呼ばれる分野の研究を行っています。コンピュータはあらかじめプログラムされたこと以外はできないため、対象の見え方や周囲の環境が変化した場合には、正確な認識ができなくなってしまいます。そこで、脳科学、心理学、統計物理学、制御工学などの異分野の知見をヒントにパターン認識の方法を考えることにより、従来よりも見え方や環境の変化に左右されにくい認識法を開発しています。さらに、建築材料中に含まれるアスベストを自動検出したり、細胞内画像から特定の対象だけを計数するなど、これまでパターン認識技術が利用されてこなかった分野への応用も行っています。

田崎准教授

図、写真

距離センサーとカメラの情報で制御する
ロボットアーム

本研究室では、人間を超えるロボットの目を開発するため、ロボットビジョンの研究に取り組んでいます。特定の環境で、人間を超える目を持つロボットは登場していますが、人間が普段生活している全ての環境で動作することを考えた場合、まだまだ人間の目には到底及びません。例えば、自動車の自動運転でもロボットの目は重要ですが、逆光になったときや暗い場所では、障害物を見失うこともあります。そこで、人間の五感にはないような、ロボットならではのセンサーや、ロボットがセンシングしやすいように体を動かすといった身体性を利用することで、カメラによるセンシングを高精度化する研究をしています。研究の成果は、自動車の自動運転やロボットアームの制御に応用しています。

増山准教授

図、写真

エキスパートの行動マップ


図、写真

ロボットにとっての理想的な行動マップ

未知環境で適応的に振る舞うことができる自律性を備えたロボットシステムの開発を目的に、ロボットが試行錯誤を重ねることでその動作を洗練させる学習制御の手法を研究しています。闇雲に試行錯誤を重ねるのではなく効率的に学習するためには、1) どのようなデータが得られればよいか、2) よいデータを得るためにロボットが実行すべき行動は何かを考える必要があります。有効な方法の1つはロボットの行動に対する評価基準を、与えられる問題に関するエキスパート(人など)から学ぶことだと考えます。そこで、エキスパートの振る舞いを観測することでその意図を推定し、推定された意図に沿うようロボットに試行錯誤をさせるというアプローチをとっています。また、一般にエキスパートとロボットでは身体構造などが異なるため、観測から適切に意図を推定するというのは非常に難しい課題です。身体間のギャップを克服するために、異なる身体間の対応関係も学習するという試みも行っています。

電子生命情報研究室

伊藤教授

図、写真

プラズマなどを扱うクリーンルーム

プラズマとは原子核と電子がバラバラになっている気体であり、同一の空間の中に+の電荷を持つ原子核と-の電荷を持つ電子が別々に飛び交っています。全体としては±0ですが、個々の粒子を見ると+または-のどちらかになるという特徴を持っています。電荷を持つ粒子が動いているということは電磁場を発生させるということであり、ディスプレイや光源、半導体デバイスの製造工程などで用いられてきました。近年、プラズマを大気圧下、低温で生成する技術が開発され、医療をはじめとする様々な分野に応用されつつあります。当研究室では、高密度の低温大気圧プラズマを生成する技術を開発し、バイオ関連や環境関連など多岐に渡る分野で、その技術の応用を進めています。また、プラズマを計測する技術を活かし、半導体デバイスの製造工程などで必要とされる新たな光センシングシステムの開発なども行っています。

太田教授

図、写真

大気圧プラズマを用いたカイワレの生長促進

電気エネルギーを使って生成したプラズマの中には、高いエネルギーを持った電子やイオン、化学反応性が高い原子や分子(例えば活性酸素種など)が存在します。それらの粒子がもつ化学反応性や発光性といった特徴は,様々な分野に応用できます。本研究室では、真空から大気圧までの性質の異なる様々なプラズマを使って、農作物の生長促進などの農業・バイオ応用、難分解有機物の分解などの環境応用、半導体デバイス用ナノテクノロジーの技術や自動車部品用の金型やコーティングなどの工学的応用など、多岐にわたる最新の応用研究をしています。

熊谷教授

図、写真

生体を構成する最小単位である細胞は、外部からの様々な『刺激』に対して反応します。これまで、化学試薬を加えたり、環境温度を調節したり、機械的な力を加えたりすることで、細胞の生命活動を制御することが試みられてきました。もし、一つの細胞に対して直接『刺激』を与えることができれば、我々にとって有用な性質を持った細胞を一つずつ創り出し、自在に応用できると考えられます。
本研究室ではナノバイオテクノロジーを駆使して、一細胞レベルでの反応解析と制御の基盤研究を進めています。

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