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特色ある大学教育支援プログラム

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医学教育との連携による臨床薬剤師教育

文部科学省 平成16年度「特色ある大学教育支援プログラム」に 薬学部・薬学研究科『医学教育との連携による臨床薬剤師教育』が採択されました。 「特色ある大学教育支援プログラム」は、募集テーマに5テーマ例の設定があり、 国公私立の大学、短期大学から534件の申請があり、うち58件が採択されました。 その中で、本学の『医学教育との連携による臨床薬剤師教育』は、 募集テーマ2の主として教育課程の工夫改善に関するテーマへ申請、 そして採択されました。
採択率から見ても、約10%という難関のなかでの採択といえます。

Topics (08年03月21日 Update)

※ 詳細は、各トピックスをクリックするとご覧いただけます。

『医学教育との連携による臨床薬剤師教育』の取組概要

名城大学は、1975 年以来、1 年コースの薬学専攻科を開設し、専門的な 知識・技能を有する臨床薬剤師教育の理念を掲げて他大学に先駆けて 実施してきた。 この実学専門教育をさらに充実させるために、2003 年、薬学専攻科を 修士課程「臨床薬学専攻臨床技能コース」へと改組し、近郊の 藤田保健衛生大学医学部と協定を締結し、「医・薬連携大学院」を開設した。

これからの社会に求められる臨床薬剤師の育成には、薬学部教員に加え、 診療にかかわる医学部教員、病院薬剤師、及び看護師の医療チームの 協力が不可欠である。 名城大学では、この連携によって、医療施設を持たない私立薬科大学・ 薬学部では初めて、医療施設を研修の場とする高度な臨床薬剤師教育が 可能となった。 藤田保健衛生大学医学部に設置された「名城大学サテライトセミナー室」 では、薬学部教員が医療現場教育へ積極的に参加する機会を与えられ、 また院生による症例検討や種々のセミナーの開催を通して、医・薬の 交流が深められている。

『医学教育との連携による臨床薬剤師教育』の詳細は、以下のとおりです。

1.本取組の内容

(1) 本教育システムが目指す実践的臨床薬学教育

▼図1
連携大学院における臨床薬剤師教育 が目指す人材像

名城大学薬学部は、医療倫理に基づいた専門的な知識・技能を有して、社会に奉仕できる臨床薬剤師の養成を目的として創立され、2004年には創立50周年を迎える。1966年、大学院薬学研究科修士課程の設置に続き、医療現場における薬剤師職能の拡大とその定着を図るために、1975年、実践的薬剤師教育に特化した1年コースの薬学専攻科を開設した。

薬学専攻科では、病院薬剤部での調剤業務のみならず、患者のベッドサイドにおいて薬の作用と病状の推移に関わりうる薬剤師教育、すなわち「臨床薬剤師教育」を他大学に先駆けて開始した。当時は、病棟における薬剤師の活動は理解されず、苦難の時代であった。しかし、「病棟活動を中心とした実務能力のある臨床薬剤師の養成」という理念のもと、28年間の活動を通して、「名城大学といえば薬学専攻科」といわれるほどに、臨床薬学教育のリーダーとなってきた。その後、学部教育における臨床薬学教育をさらに充実させるため、1996年、全国で初めて、学部を医療薬学科と薬学科に再編した。日本の薬剤師養成教育は、医師、看護師など、他の医療職種養成分野に比して、医療現場における実務教育の取組が大きく遅れているが、近年、医療の高度化に伴う社会的要請の強まりとともに、多くの大学で種々の取組が始められている。

名城大学大学院薬学研究科は、臨床現場における薬物療法を理解し、安全で、質の高い医療に貢献しうる薬剤師の養成を目的として、修士課程に「臨床薬学専攻臨床技能コース(定員10名/学年)」を設けた。「臨床技能コース」における教育は、28年間の薬学専攻科教育をベースとして編成されている。「患者の心と現場がわかる薬剤師」(図1参照)の養成を目指した教育は、

  • (ⅰ) 自己学習型のPBL(Problem Based Learning)チュートリアル教育
  • (ⅱ) コミュニケーションスキル教育
  • (ⅲ) 1年3ヶ月におよぶ本格的な臨床研修(臨床現場での実務教育)

の三つを軸として構築されている。

これらの教育には、薬学部教員、医学部教員、病院薬剤師、および看護師からなる医療チームの協力が不可欠であり、その実現のために、2003年、名城大学薬学部は、藤田保健衛生大学医学部と、連携大学院協定を締結し、全国初の「医・薬連携大学院」を開設した。連携大学院では、薬学研究科の院生は藤田保健衛生大学病院における医療チームの一員として、日常の診療活動に参加して研修を受けることが可能である。この医・薬連携による研修制度では、医学部と薬学部教員の双方からの指導・教育が行われ、病院全体を研修の場とした高度な臨床技能教育を実践することができる。この学際的な教育体制は、学長名による大学間の契約として、全学的な支援体制のもとに実現したことは大きな意義がある。この方策は、医学部を有さない全国の私立薬科大学・薬学部にとって、学部学生・大学院生(薬剤師)が臨床研修の場を確保するための一つのモデルとなるものである。学際的な連携により、このような「臨床分野」を薬学教育に導入することができたことは、基礎薬学の発展を促す上でも、大きな力になるものである。

我々は、連携大学院における教育を具体的に進めるため、藤田保健衛生大学医学部内に名城大学薬学部「サテライトセミナー室」を設置した。ここでは院生の症例検討会を始め、医・薬系教員の交流が図られるなど、大きな効用がある。

(2) 国際交流と海外臨床研修

名城大学薬学部は、現在、南カリフォルニア大学(USC)薬学部とアラバマ州サンフォード大学薬学部の2大学と学術交流協定を結んでいる。本学術交流協定に基づき実施される海外臨床研修では、米国の学生とともに、現地で臨床研修に参加し、米国の先進的な薬剤師の役割を理解し、将来に対する明確なインセンティブを与えることを目的としている。院生は、修士課程の2年次に約2週間の海外臨床研修プログラム(選択科目)に参加する。さらに、米国の交流協定校から、毎年、臨床薬学教員を招聘し、本学臨床薬学教員と医学部教員を交えたセミナーを開催することにより、教員の臨床薬学教育能力の向上を図っている。

(3) 臨床薬学に必要な医薬情報教育

薬の専門家として、薬剤師が医療の現場で最も頻繁に求められる知識は、医薬品の有効性と副作用に関する情報である。すなわち、種々の疾患と患者の症状に最も適した医薬品情報を提供することが重要である。院生は「臨床研修」を通して薬物治療を学ぶ中で、必要に応じてサテライトセミナー室からインターネットを介して薬学部医薬情報センターにアクセスし、種々の医薬品情報を収集、解析し、医師または患者に提供する技能を身に付ける。

2.本取組の特色

(1) よりスキルアップした臨床薬学教育

大学院臨床技能コースの特色は、学部教育における「医療倫理学」、「薬物治療学」、「臨床医学関連科目」、「医薬品情報学」等の習得を基礎として、本格的な薬物治療への参画を目指した臨床薬剤師を養成することにある。その到達目標は、患者の病態に対する医師の治療方針を理解し、適切な薬物療法を支援できる能力を習得することにある。 図2に大学院「臨床技能コース」のカリキュラム内容とスケジュールを示し、図3に本教育システムの概念図を示した。このコースの特徴は、(ⅰ)特論科目「臨床薬物治療学」および「臨床薬物動態学」に問題基盤型学習であるPBLチュートリアル教育を導入したこと、(ⅱ)患者の「病(やまい)」に関する情報収集に重要な臨床コミュニケーションスキルの教育、(ⅲ)1年3ヶ月に及ぶ「臨床研修」を病院の医療現場で履修することにある。

▼図2
臨床や苦学選考臨床技能コースのカリキュラム内容
スケジュール

▼図3
  臨床技能コースにおける教育システム概念図

(ⅰ) 実践的なPBLチュートリアル教育の特色

PBLは、臨床医学教育に効果的であることは良く知られている。医療現場では種々の症例に対する最新の薬物療法を実践的に理解しなければならず、将来体験するであろう種々のシナリオに対するバーチャルスキル学習として、極めて効果的である。

本教育法を臨床薬学教育に採り入れるために、2001年から本学部の臨床薬学担当教員は本格的な研修を開始し、国内外のPBL関連の研修会等に参加してきた。同時に、USCならびにサンフォード大学から教員を招き、PBL学習の実演と講演を開催している。特に、サンフォード大学からは、同大学の開発したPBL関連教材の提供を受けている。

(ⅱ) 臨床コミュニケーションスキル教育と客観的臨床能力試験 (OSCE)

臨床コミュニケーションスキル教育では、「医療面接」を通して、薬剤師が現場で直面する種々の技能を模擬体験的に学ぶ。臨床で最も重要なことは、クライアントとしての患者への応対であり、適切な医療面接によって、患者の「病(やまい)」を理解することである。適切な医療面接法は、学生間のロールプレイを通して学び、その成果は、客観的臨床能力テスト(Objective Structured Clinical Examination;OSCE;オスキー)によって評価される。このオスキーでは、模擬患者を用いて、院生は医療面接の実演を行い、医学部教員、薬学部教員ならびに他大学教員による第三者評価が行われる。院生は、この試験をパスしなければ、臨床研修へ進むことができない(写真1参照)

▼写真1
喘息のモデル患者(SP)に使い方を説明している
院生(右側)とそのコミュニケーションを審査している
医学部・薬学部教員(手前の2人)

(ⅲ) 医学部附属病院における臨床研修

本教育システムにおける「臨床研修」は、従来の調剤する場所(薬剤部)から、薬物療法が行われる場所(病棟)へその研修場所が移行したことが大きな特徴である。藤田保健衛生大学病院薬剤部における実務研修(6週間)と看護部における看護体験(1週間)を経たのち、下記の8診療科(センター)

  • 一般内科
  • 呼吸器内科
  • 循環器内科
  • 血液・化学療法科
  • 代謝・内分泌科
  • 消化器外科
  • 消化器内科
  • 救命救急センター

において、患者を実際に受けもつ、「臨床研修」を受ける。研修指導責任者は医師であり、研修医らとともに臨床指導を受け、実際の薬物療法を学ぶ。さらに病院薬剤師(薬剤部長)及び薬学部教員を加えた三者協力体制のもとに、「医療チームの一員」として、臨床の場における薬剤師の役割を学ぶ(写真2、3参照)。診療科の部長(教授)は薬学部の客員教授を兼務しており、院生の「臨床研修」に薬学部教員とともに責任を担っている。

▼写真2
回診に同行する大学院生(左側)

▼写真3
患者面接の様子

「臨床研修」では1年3ヶ月間を4診療科の病棟・外来において研修医らと共に医師の指導を受ける。病棟活動における院生の典型的な1日の学習行動を表1に示す。 他のほとんどの私立薬科大学・薬学部39校(新設を含める)では、このような本格的な臨床薬学教育はまだ行われていないのが現状であり、今後の発展が求められている。

表1 院生の「臨床研修」における1日の学習行動の1例
8:30- 9:00 モーニングカンファランス:
朝の研修医による患者症例報告会に参加し、新たに入院した患者の診断・治療プロセスを理解する。
9:00-10:00 看護師申送り参加:
看護師の勤務交替申送りに参加して、夜間の患者の状態・症状の変化を確認する。
10:00-12:00 回診同行:
主治医の回診に同行して、診断のプロセスと患者を理解する。
12:00-13:00 休憩 (食事・記録の整理)
13:00-14:00 患者諸検査等の理解:
薬物療法の結果を監視するための諸データを理解するため、患者の受ける検査に参加(見学)する。
14:00-15:00 患者面接:
担当患者と面接して、薬物治療上の問題点(薬の効果・副作用など)をモニターする。
15:00-17:00 服薬指導:
患者に服用しているくすりを説明し、患者自身が薬物療法に参加することの重要性を説明する。
17:00-18:00 診療録記載:
自ら得た患者情報及び医薬品情報を診療録(カルテ)へ記載する。
18:00-19:00 症例検討会参加:
医局での症例を中心とした勉強会へ参加、医師の患者診断、治療計画・目標設定を理解し、必要に応じて医師へ患者情報・医薬品情報を提供する。

(2)「医・薬連携大学院」と「サテライトセミナー室」

院生の臨床研修の場として、自前の医療施設(臨床研修病院)を持たない名城大学は、藤田保健衛生大学医学部と連携大学院協定を結んだ。臨床技能コースの院生は、病棟(診療科)を活動の中心として、医師・患者・看護師を軸とした医療体系と、臨床における薬物治療の実際、処方設計を学び、これらに対する薬剤師の役割と責任を学ぶ。名城大学薬学部「サテライトセミナー室」は、連携大学院教育の活動拠点として、全国で初めて学外の医学部内に設けられた。院生は、医学部教員・薬学部教員とともに、勉強会、症例検討会、セミナー、資料調査、自習など多目的に利用して いる(写真4,5参照)。医学部との連携を円滑に進めるため、サテライトセミナー室には薬学部教員が常駐している。従来、研究室に活動の中心があった薬学部教員にとって、このサテライトセミナー室は臨床医学に接し、その経験を学部教育に生かす絶好の場ともなっている。

▼写真4
サテライトセミナー室における症例検討会にて報告を行う
大学院生と、報告に耳を傾ける参加者

▼写真5
サテライトセミナー室における症例を検討する大学院生、
医学部・薬学部教員と招聘教授

(3) 海外臨床研修

名城大学では、1975年以来、毎年この海外臨床研修を続け、既に、300名近い学生が、米国における先進的な臨床薬剤師の活動に触れている。約2週間の海外研修で、臨床薬学専攻の学生は、

(4) 臨床薬学教育を支援する「医薬情報センター」

薬剤師の臨床における最も大きな役割は医薬品の適正使用ならびに副作用の防止である。医薬品情報は、薬剤師が臨床活動を行う上で不可欠なものである。名城大学は、薬学専攻科開設当初から全国に先駆けて、臨床活動を支援する「医薬情報センター」を薬学部内に設置し、管理運営費についても全面的に支援している。

3.本取組の有効性

(1) 名城大学薬学部の臨床薬学教育に対し、日本薬学会「教育賞」

日本で初めて「患者中心の医療」の思想と「薬剤師の病棟活動」を実践的に示して、教育へ導入し、医療現場から名城大学「薬学専攻科」の臨床薬学教育の立ち上げに参加した二宮 英 国立名古屋病院薬剤科長(当時、後に名城大学薬学部教授・第三代薬学専攻科長)は、「患者中心の薬剤業務」教育を一貫して推し進めてきた。その功績に対し、二宮教授は、2002 年度 の日本薬学会教育賞を受賞した。また、その前年の2001年度には、奥田 潤名城大学名誉教授(第二代薬学専攻科長)が、同じく名城大学の臨床薬学教育を医療倫理教育の立場から確立した功績により、日本薬学会教育賞を受賞した。このことは、医療現場を薬学教育の 場とした本学臨床薬学教育のあり方の正しさを、医療       現場のみならず専門学会も認めたことを意味している。

(2) 臨床薬学教育の成果としての「薬学専攻科報告集(全28巻)」と薬学専攻科修了生の評価

1975年に「薬学専攻科」を設置以来、28年間に名城大学の臨床薬学教育を受けた薬剤師は294名を数える。そのうちの75%が、現在、全国の種々の医療現場で活躍し、臨床薬学の発展に貢献している。薬学専攻科修了生全員の臨床研修の成果は、「薬学専攻科報告集(全28巻)」に収載されている。ここで報告された種々の疾病とその薬物治療に対する薬剤師の取組を図4に示した。

▼図4
28年間に薬学専攻科の臨床研修の中で取り組んだ 疾患の一覧(n=428)

日本の臨床薬学教育にかかわる課題を、このよ うに集約した資料は他に類を見ず、今後の我が国の臨床実務教育の一つのモデルとなるものである。過去10年間における臨床研修に参加した修了生の感想を表2にまとめた。

▼表2

(3)「サテライトセミナー室」の有効性

藤田保健衛生大学医学部内に設置された名城大学薬学部「サテライトセミナー室」では、院生は、受けもった患者の薬物療法に関して、医学部教員・病院薬剤 師・薬学部教員による三位一体の指導を受ける。薬 学部教員にとって、医療現場における教育を実施する 上で、サテライトセミナー室は必要不可欠な場となっている。薬学部からは、延べ14名の教員が参加してい る。症例検討会への教員の参加は、従来、なじみの薄かった臨床研修に対して教員の意識を大きく変えた。 例えば、参加教員へのヒアリングでは、「臨床薬学へ の取り組み方に対して、ひとつの突破口を見つけることができた」という意見が圧倒的であった。

(4) 国際交流としての「臨床研修」

名城大学では、毎年、南カリフォルニア大学とサンフォード大学の教員を大学へ招聘してサテライトセミナー室を中心とした臨床研修活動を行っている。ここでは、症例検討を含めてすべての議論が現実の臨床現場を背景として行われること、また、医学教員も加わって、米国の高いレベルの臨床薬学研修が、英語で行われることは、極めて高い教育効果がある。

(5) 「医薬情報センター」の有効性

医薬品情報の提供は学内のみにとどまらず、名古屋市内外の病院や薬局、また一般市民からの質疑にも応じ、その成果は臨床薬学教育へも反映されている。この活動は大学の社会貢献としても高く評価されている。本施設は全国の教育機関では唯一の施設である。特に、同センターが独自に構築したCARPIS副作用評価システム(WEB版)は、医学文献に報告された約37,000症例の副作用・中毒情報をデータベース化し、集積しており、医療現場における院生の活動を強力に支援している。

4.将来展望 社会人教育を組み込んだ臨床薬学教育

2003年4月に新設した臨床薬学専攻臨床技能コースは、医学・薬学の連携の特徴を活かした「臨床研修」を最大の特色としている。薬剤師が医療現場で抱える課題は、大学における薬学教育が取り組むべき課題でもあり、その解決は大学の責任でもある。従って、今後、5年間の重点目標として、大学院への社会人(現場で働く薬剤師)参加を促進し、臨床薬学教育の幅と深みを増すことを目指している。そのための具体策として、卒後教育をさらに充実し、社会人入学を積極的に推進する予定である。