近年の経済悪化に伴う厳しい財政譲許により、公共事業の予算が大幅に削減されている。しかし、社会資本整備などの公共事業は、事業効果(施設整備中に発生する背経済効果、いわゆる乗数効果)と施設効果(施設完成後に発生する経済効果)を併せ持ち、経済活性化の起爆剤となりうる。また、東日本大震災後、災害に強いまちづくりに関連した社会資本整備の必要性に対する国民の認識が高まりつつある。ただし、公共投資に見合った経済効果が得られないような公共事業は厳に慎まなければならず、公共投資の「選択と集中」が重要である。
現在の公共投資では、いわゆるシーリングによって事業毎の予算が配分されており、スローガンとしての「選択と集中」は実質を伴っていない。本研究センターでは、行政サービス(社会資本整備)の計画科学と分析科学の観点から、統計科学を基礎として社会資本整備の評価方法を論じることにより、政策代替案の優先順位づけを行えるようにする。また、社会経済モデルを構築することにより、社会資本整備による経済効果の計測が行えるようにする。さらに、民間企業の生産性向上に関するノウハウも研究対象とすることにより、とかくコスト意識の低さが指摘される行政サービスに対して、PFⅠ(Private Finance Initiative)やICT(Information and Communication Technology)を活用した新しい発想の政策代替案の提案が行えるようにする。具体的な研究課題は、次のとおりである。
Ⅰ.マクロ経済学と意思決定に関する研究
①新しいマクロ経済学の構築(正と反の経済学)
②正と反の経済下における社会資本整備の考え方
Ⅱ.行政の社会資本整備に関する研究
①地方自治における政策評価
②地域経営の持続可能性
③環境・観光関連事業の経済評価
Ⅲ.民間企業の生産効率向上に関する研究
①労働集約的サービスの生産性向上
②高度知的サービスの付加価値向上
③医療サービスの安全と質向上
ところで、現在サービスサイエンスにおけるサービスの価値計測はほとんど経験と勘に頼り、価値理論がない。したがってサービス分野(行政、企業、NPO等)におけるサービスの価値計測が可能になるであろう。次にサービスサイエンスの視点を示す。1)サービスサイエンスは、サービスの特性・性質の発見と理解から始まる。そして、サービスサイエンスにより発見・理解された特性・性質を人間の社会において分解・合成することにより、新しいイノベーションを創造することが必要である。2)サービスサイエンスは、人と技術の共創から生まれる新たな価値を提供するものである。3)サービスサイエンスが人間の社会に定着するためには、可視化することが必要である。4)サービスサイエンスの適用分野は多岐に亘るので、共通のサービス価値測定方法の確立が必要である。
本研究センターではサービス科学をサービスの「計画科学」と「分析科学」に分類し、計画科学の観点から行政サービスに関する政策代替案の設計方法を論じ、また分析化学の観点か行政サービスの評価方法を論じようとしている。その結果、サービス科学の研究基盤構築に対して、次のような貢献が期待できる。1)サービスについて、今まで困難であった可視化や価値測定が可能になる。2)行政サービスについて、在り方と優先順位が明確になる。3)民間サービスについて、生産性向上のノウハウが整理される。さらに、社会資本整備については、以下のようば貢献が期待できる。4)現在のような経済状況下において、財政出動は正しい政策である。5)現在のような経済状況下においては、社会資本整備を行う歴史的な機会である。6)現在のような経済状況下で必要な社会インフラを建設することは正しい政策であるだけでなく、将来の納税者の負担を軽くすることにもなる。
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