特設サイト第8回 お屠蘇(とそ)

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師走の声を聞いてからというもの、毎日寒い日が続きます。
例年になくインフルエンザの流行も早いようですが、予防接種はすませましたか。
先日、かかりつけの歯科医院で歯科衛生士さんから、「卵アレルギーの人がワクチン接種できないのはなぜか」と聞かれました。一般的にワクチンは弱毒化したウイルスを鶏卵中で増やし、そのウイルスを取り出して感染しないよう不活性化して作るのですが、「その際に卵白アルブミンのような卵アレルギーの原因である抗原を完全に除けないからですよ」とお答えしました。意外と知られていないことなのかもしれませんね。

さて、今回は、新年を前にして「お屠蘇」の話。

「屠蘇」とは、お正月の祝儀に用いる薬酒です。一年間の邪気を払い、長寿を願って飲むものです。元々中国の風習で、「蘇」という悪鬼を「屠る(ほふる)」という意味です。
魏(220~265年)の名医である華佗(かだ)の処方と言われ、10種類ほどの生薬が入っていました。猛毒の烏頭(トリカブト)や下剤の大黄(ダイオウ)も入るなどいろいろな処方がありましたが、今では山椒(サンショウ)、細辛(サイシン)、肉桂(ニッケイ)、乾薑(カンキョウ)、白朮(ビャクジュツ)、桔梗(キキョウ)などが主に使われます。
お腹を温めたり、胃腸の働きを助けたりする効能を持ち、また初期の風邪にも効くような、そんな処方内容です。

日本では、嵯峨天皇(在位809~823年)の弘仁2年(811年)に初めて宮中で用いられ、それが民間に広まったと言われます。大晦日に紅絹の袋に入れて井戸の中に吊るし、元旦の早朝にそれをお酒の中に振り出し、一家揃って雑煮の前に祝うものでした。息災を祝うという意味で、年少者から順次年長者が飲むという作法があり、残りかすは井戸に投じ、この水を飲めば1年中水あたりしないと言われたそうです。
基本的には、西日本の風習とも言われ、他の地方ではお正月に飲む「祝い酒」を単に「お屠蘇」と呼んでいるようです。私はこの「お屠蘇」が苦手で、「祝い酒」ばかりが好きでした。土佐の酒屋の家系ですから、仕方がありません(苦笑)。

昨今では、年末にドラッグストアなどでこの「屠蘇散(屠蘇延命散)」を配ったりしています。新しい年を古式ゆかしい「お屠蘇」からスタートしてはいかがでしょう?

(2014.12.18)

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