特設サイト第29回 八事キャンパスの薬用植物(5)

  • ゴマの種子
    ゴマの種子

東海地方にも接近した台風がようやく過ぎ、少し秋めいてきました。
この春から植栽した薬用植物も、いくつかの一年草は花を咲かせ、結実し、さらに種を収穫できるほどになりました。一年という時間が過ぎて行くことを実感する瞬間でもあります。

さて、今回ご紹介する薬用植物と生薬は、そんな一年草の一つ、ゴマ(胡麻)です。
ゴマ科(Pedaliaceae)のSesamum indicumという植物の成熟種子を生薬として用います。薬用には、ふつう黒胡麻が使用されますから、本学でもクロゴマを植えています。ご存じのように、油分に富み、噛むとわずかに甘く香ばしい味がします。食用にするなら、炒って使いますよね。いわゆる、「いりごま」です。

インドや中国、東南アジアが産地ですが、ここ八事キャンパスでも立派に育ち、弾けた種子を来年に向けて集めているところです。春に種まきをし、時間がかかりましたが、芽が出て、双葉となり、葉を大きく広げて成長し、花を咲かせ、実となり、種子となってきています。
来年も同じように種まきから始めますから、今年見られなかった方は来年ぜひ観察してください。

5月中旬、4月の種まきから3週間ほどかかって双葉に(右上は拡大)

5月中旬、4月の種まきから3週間ほどかかって双葉に
(右上は拡大)

7月下旬、大きく成長

7月下旬、大きく成長

ゴマの花と果実

ゴマの花と果実

生薬としては、中国の薬物書である「神農本草経(しんのうほんぞうきょう)」から収載されておりますが、当時は胡麻(コマ)と呼ばれたり、巨勝(キョショウ)と呼ばれたりしたようです。また、「本草綱目」では、黒脂麻(コクシマ)と呼ばれており、いろんな呼び名があるものの、古来より私たちの身の回りにある「くすり」であることには変わりありません。

この種子には脂肪油が40~45パーセントも含まれ、得られる油(ゴマ油)は酸敗しにくく、またゴマ自体肌を潤す作用をもつため、紫雲膏(しうんこう)などの軟膏基剤として用いられますし、湿疹などに用いる消風散(しょうふうさん)という処方にも配合されています。アトピー性皮膚炎の治療などで、服用された経験のある方もいらっしゃるのではと思います。
その他の成分としては、sesaminやsesamolinといったリグナン化合物が含まれ、抗酸化作用があるということで、健康食品としても注目されています。「セサミン」という名前には聞き覚えがありますよね?

薬用植物を身近に置くという取り組みは、まだ始まったばかりです。
今あるものだけでなく、少しずつでも数を増やし、普段のキャンパスライフの中で、薬学らしさを体験してもらえればいいと思います。

(2016.9.27)

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