特設サイト第36回 八事キャンパスの薬用植物(6)

春を迎え、八事キャンパスでも沈丁花の香りや、ユキヤナギの白い花とレンギョウの黄色い花の共演を楽しみました。今年は若干遅かったのですが、キャンパスの入り口にある桜は見事な花を咲かせましたし、今は芝桜が見頃を迎えています。

そんな春の訪れとともに、薬用植物も芽を吹き始め、まだ小さいものの、日々育っています。
生薬(しょうやく)としては、根や根茎など地下にある部位を薬とするものが多いですし、一年草でも多年草でも地上部は大抵冬枯れして、冬季は寂しい思いをします。
仕方のないことですが…。

今回は、いくつか芽吹いてきている生薬をご紹介します。

カンゾウ

カンゾウ

まずは、わが国でヘビーロテーションされている生薬として、このコラム第10回でも紹介した「甘草(かんぞう)」です。第一七改正日本薬局方では、マメ科のGlycyrrhiza uralensis FischerまたはGlycyrrhiza glabra Linneの根およびストロン(匍匐茎)をカンゾウとし、主成分であるグリチルリチン酸を生薬の乾燥物に対して2.0%以上含むものを医薬品としています。もともと、中国の内モンゴル自治区、黒竜江省、吉林省、遼寧省、甘粛省、寧夏回族自治区、新彊ウイグル自治区の各地、ロシアやアフガニスタン、イラン、パキスタンで生産される野生品で、わが国では年間約2,000~10,000トン程度輸入しているとか。医薬品として用いられているものは100%中国からの輸入に頼っており、国内では試験栽培に過ぎないのが現状です。

昨年、数株植栽し、冬の間どうなっているのか心配していたのですが、乾燥した日向の草原や河川流域の砂質粘土地に生育するものだからか、なんとか生きていたようで、芽吹いてきています。地表直下を走る匍匐茎のためか、区画の端でも芽が出てきており、その成長が楽しみです。

マオウ

マオウ

甘草と同様、漢方薬における重要な配合生薬であり、かつ副作用でも知られ、さらに同じように資源問題でもその名が知られる生薬が「麻黄(まおう)」です。麻黄は、マオウ科のEphedra sinica Stapf.、Ephedra intermedia Schrenk et C.A. MeyerまたはEphedra equisetina Bungeの地上茎を用いる生薬で、本コラムでもたびたび登場しています(第9回第11回第20回)。この植物も中国の遼寧省、山西省、河北省や内モンゴル自治区より輸入し、年間700トンを数えると報告されています。昨年2株を入手し、植栽したのですが、なんとかうまく根付き、今後の成長を期待しています。もともと、乾燥高地に自生する多年生草本状の小低木なので、このまま育ってくれないかなと願っています。

八事キャンパスは、吹き抜ける風が強く、また夏は日差しが厳しい場所でもあり、いろいろな個性をもつ薬用植物を揃えるには、それ相応の工夫が必要です。できるかぎり、身近に薬用植物をというポリシーの下、キャンパスに薬用植物を配置しておりますが、もっとたくさんの薬用植物を春日井キャンパスに整備して、そこをベースにして薬学教育や社会活動にも活用して行きたいですね。なんといっても、薬の大半は自然からの、それも植物からの恵みなのですから。

ボタンのつぼみ

ボタンのつぼみ

追伸:
もうすぐボタンの花が咲きます。生薬である牡丹皮(ぼたんぴ)は根の皮を薬用部位としますから、看板には「ボタンピ」とあります。薬用部位である根の成長をよくするため、開花時にはできるだけ摘花するのが常套なのですが、毎年花を楽しむべく、そのままにしています。
今年も大輪の花を咲かせそうです。

(2017.4.27)

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