名城大学通信 44 [2012 summer]

名城大学通信 44 [2012 summer] page 24/44

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食事が欧米化する中でも新米の季節になると炊きたてのお米が食べたくなるのは、みなさんも同じではないでしょうか。しかし、高齢化による労働人口減少やTPP問題など国内の稲作業は岐路に立っているかもしれません。....

食事が欧米化する中でも新米の季節になると炊きたてのお米が食べたくなるのは、みなさんも同じではないでしょうか。しかし、高齢化による労働人口減少やTPP問題など国内の稲作業は岐路に立っているかもしれません。寺田理枝教授は分子育種学を専門とし、イネの遺伝子を目的通りに改変する『遺伝子ターゲティング法』技術を世界で初めて開発。いもち病への耐病性強化やイネの開花に影響を及ぼす遺伝子についても研究を行っている寺田理枝教授に研究室を紹介してもらいました。日本発のユニークな特色を持ったイネで国内農業を活性化させる従来の品種改良では、イネの交配育種法によって優良遺伝子を実用品種に組み込む方法が主流でしたが、『ターゲティング遺伝子改変』によってイネの実用品種を作ることができれば、従来に比べ短時間で幅広い遺伝子の機能を利用した優良品種を作り出すことができます。また、最近では遺伝子機能の研究とDNA塩基配列の情報に関する研究が加速的に進んでおり、これらが組み合わさることで、例えばビタミンを多く含んだイネ、厳しい環境でも多くの収量を確保できるイネなど日本発のユニークな特色を持ったイネを創り出すことができ、国内農業を活性化させることが期待されます。私たちは現在、開花時期をコントロールするフロリゲンという遺伝子の研究を進めるため、フロリゲンと共に機能する多くの遺伝子がどう機能するのかを追跡するためのさまざまな『ターゲティング改変』イネを作っています。その他にも変異挿入ターゲティング法の利便性向上を目的とした形質転換などの改良研究も進めています。植物は何も言ってくれない。だから研究には集中する私たちは膨大な数の『ターゲティング改変』イネを培養し、研究に使用していますが、その培養細胞であっても生物としていろいろな反応を示すため、培養細胞を健全な状態に保つことが必須条件になります。しかし、培養細胞は何も言ってくれません。培養が失敗していれば学生は卒業研究の限られた時間をロスするため、研究には集中して取り組んでもらうようにしています。ただ、一生懸命やっても失敗はします。その時は学ぶチャンスと考え、何が原因だったのか?改善方法は?など整理してから責任感を持ってやり直すことが大切だと学生には伝えています。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・〈研究室を訪れて〉「精密な作業が多いですが、この過程から多くのことを習得することができますね」と自信に満ちた返事をしてくる学生たち。そんな彼らの夢は、イネの収量を増やし世界の食糧難から人々を救うこと。日々、生物の仕組みをダイナミックに実感しながら、しかし着実に夢をターゲティングしているようで逞しく感じた。世界初の『遺伝子のターゲティング法』で未来の農業を考える。〈農学部生物資源学科〉寺田理枝研究室寺田教授(中央)と研究室の皆さん?“知”の最先端レポート2344