名城大学通信 45 [2013 spring]

名城大学通信 45 [2013 spring] page 23/40

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名城大学通信 45 [2013 spring]

でしょう」と聞くと、皆さん「ええそうです」という。この会場でも、「無宗教でしょう」と聞いても、多くの方々は「そうです」とおっしゃると思います。でも、「無神論者ですか」と聞くと、「えっ」とみんな言うと思います。無神論と無宗教は根本的に違う。無神論は「神はない」と、積極的に自ら決断をして、神がないことを証明できる人です。しかし、無宗教ということは、宗教について何も考えていない。宗教に全くカラーがないということです。これが普通の人だと考えられます。でも、アメリカやヨーロッパに行って、無宗教と言うと、みんなが怪?な顔をします。あなたは一体、何を信じているのですかと必ず聞かれます。アメリカ合衆国に行けば、誰でもがキリスト教。大統領は必ず聖書に誓約します。韓国もアジアで最もプロテスタントが多い国で、カソリックが多いのはフィリピンです。世界最大のイスラム国家はインドネシアです。ですから、インドネシアでムハンマドの冒涜があったというので、大変なデモが起きています。私が言いたいことは、何らかの宗教を信じろと言っているのではない。宗教について、考えることが必要だということです。距離を置いて、しっかりと宗教を考えることは重要なことだと思います。世界の十数億の人口はイスラム教徒ですから、海外に出て、中東やアジアでイスラム教徒と出会って、そこでビジネスをしたり共に考えたり、一緒に暮らしたときに、何も分からないとするとカルチャーショックを受ける。私は1979年にドイツに行って、イランとイラクの区別もつきませんでした。イラン革命が起きた時、さっぱり分かりませんでした。イランとイラクの区別がつきませんから。でも、今、世界を動かしているのはやはり宗教の力です。信仰を持たなくてもいいんです。しかし、宗教というものはどういうものなのかについて考えなければいけません。政治の劣化と無党派無党派もそうです。今、日本が陥っている最大の問題は何か。それは政治の問題だと思います。政治が劣化している。多くの国民は賢明です。被災地に行っても、多くの方々は本当に、涙が出るほどにしっかりと頑張っているし、そして、地域社会を支える中堅の方々は、日本はさすがにいい人材がいます。どの政党を信じるかはその人が自由に選べばいいと思います。日本の社会は言論の自由があるし、中国のような一党支配ではありませんから、そこが日本が優れている点です。でも、政治から遠ざかるということは避けなければなりません。お任せ民主主義ではなく、自分が当事者にならなければいけません。つまり、よき市民、よき国民になるということは、政治について、自分なりにしっかりとした考え方を持つということです。今まで、大学教育は、この二つを、どちらかと言うと非常に末梢的な問題、瑣末な問題、あるいは、あまり大学では教えられない問題として避けてきましたが、今、図書館や大学の書籍売り場にいくと、宗教関係や政治関係のものが非常に多くなっています。しかし、同時に、宗教と政治は最も危ういものです。人をいわば、過たせる場合があるし、非常に対立の種をばらまくことにもなります。しかし、宗教と政治は、私たちが、どう生きるかという価値、この社会を私たちはどのように担うのかというもう一つの公共的なもの、この二つにかかっています。そして、人間学部という、このヒューマンサイエンスに関わるということは、この二つが土台ではないでしょうか。この二つの土台と、科学技術というものが、本当に調和をした時に、初めて私たちは望ましい社会というものが現れてくると思いますし、今まで日本は、あまりにも、アンバランスだったのではないか。今後、ますます、この人間学部がやるようなテーマというものが、私たちの社会の中に、非常に必要になってくると思います。悩むことの先に見えるもの悩むということは、そう簡単に解けない問題に対面するということです。最初から分かっているのなら悩む必要はありません。答えがない問題を、問題として受け止め、それと格闘するということです。そこから初めて私たちはマニュアルでは解けない問題に向き合っていけるのではないでしょうか。我々はどうしても臆病になっています。限定主義になっています。何か問題が起きると、みんなから批判されるのではないか。組織の中で、自分がミスをすると、みんなから叱られるのではないか。積極的に何かをやるよりは、積極的に何かをしなくて過ちがないようにした方がつつがなくこなせる、と考えてしまう。こうなると、社会はどんどん閉塞していきます。日本の社会は絶えずイノベーションしてきました。それはやはり、解けない問題にチャレンジしていくということが、この社会の中に根付いていたからだと思います。ソニーを作った盛田さん、ナショナルの松下さんもそうでしょうし、ホンダの本田さんもそうだと思うんです。日本の世界に冠たる非財閥系の創始者たちは新しい企業を創ってきました。そういうチャレンジングなものを持っていました。徹底して悩むということは決してこれは後ろ向きなものではない。大学は、解答のない問題に向き合うことが必要なんだということを、ぜひとも若い人に今後、教えていっていただきたいと思いますし、そういう中から初めて、この日本の社会の在り方というものも見えてくるのだと思います。日本の社会は今、閉塞感が漂っていますが、韓国と比べれば、日本の社会は本当にまだ安定していますし、そして、それだけの力を持っています。また、地域を見れば、それだけの人材は育っています。島崎藤村の「夜明け前」の青山半蔵という、あのへんぴな地域の中で頑張ろうとした人々が、明治維新を作りだしてきました。そういう地域のしっかりとした中堅どころの人材を、何とぞ、この大学からも輩出していっていただきたいということを申し上げて、私のつたない話にかえさせていただきたいと思います。22あやま