ブックタイトル名城大学通信 47 [2014 Spring]

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概要

名城大学通信 47 [2014 Spring]

08高校時代から電池に興味「高校時代に、化学の授業で電池に興味を持ちました」と柳さん。また高校の化学の教科書にカーボンナノチューブ(CNT)の紹介が載っており、「いつかこの魅力的な新材料を使って、世の中の役に立つ開発をしたい」とも考えていました。学部生の時はCNTの生成方法を研究。大学院進学を機に指導教員である安藤義則教授(ナノ材料工学)と大河内正人教授(同)に「CNTの応用として電気二重層キャパシタ(電池は化学反応のエネルギーを電気エネルギーに変換しているものであり、キャパシタは電気をエネルギー交換なしでそのまま蓄えるもの)を研究したい」と思いを伝えたところ、以前同様の研究に取り組んだ本学大学院OBと、その際にお世話になった企業を紹介してもらうことができ、共同研究の道が開けました。「このつながりと出会いが、この研究、そして私自身を大きく変えるきっかけになりました」と柳さんは語ります。こだわったコスト電気自動車(EV)やスマートフォンにはリチウムイオン電池が使用されていますが、充放電を繰り返すうちに容量が低下し、寿命理工学部材料機能工学科安藤義則教授理工学部材料機能工学科大河内正人教授理工学研究科材料機能工学専攻修士課程1年柳智大さん多層カーボンナノチューブ使用で、大容量が期待できる電気二重層キャパシタ「スマートキャパシタシステム(SCS)」を提案!が短くなる弱点があります。これを電気二重層キャパシタに変更すると、寿命は伸び、急速充放電も可能になります。しかし、現状の電気二重層キャパシタは容量やエネルギー密度が低く、大きな電力を必要とするEVには不向き。そこで、キャパシタの電極に使用される活性炭をCNTに置き換え、容量が大きくできないかと考えたのです。課題はコスト。CNTには単層、多層とありますが、単層CNTは大量生産に不向きで、1gあたり数万?10万円と高額。そこで目を付けたのが、多層CNT。本学発ベンチャー企業である株式会社名城ナノカーボンが扱う、クスノキから採れる樟脳を原材料に生成した多層CNTは、500gで5万円程度。環境面にも配慮でき、量産も可能。「実用化にはコストが重要です。多層CNTで実験したところ、ある程度の容量が確保できる結果が出て、イケる!と思いました」と柳さん。関連企業やOBの協力で、提案内容をまとめ上げました。安藤教授と大河内教授は「本学だけではできないことを、先輩や企業を巻き込んで発展させた。その行動力とコミュニケーション力が成果として表れた」と評価します。起業することが目標「このスマートキャパシタシステムで起業することが一つの目標」と柳さん。「今回の経験で、コストと品質の両面を担う生産技術にも興味が湧きました。企業に入って、海外の生産工場を立ち上げるプロジェクトリーダーもやってみたい」と新たなチャレンジ目標も語ってくれました。特別賞名古屋商工会議所会頭賞受賞「まさか受賞できるとは思いませんでした。研究内容をできるだけ分かりやすく説明するよう、プレゼンの練習を重ねた甲斐がありました」