ブックタイトル名城大学通信 51 [2016 Spring]

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概要

名城大学通信 51 [2016 Spring]

16プロダクトは、言葉よりも応用力を持っているのだと思います。2014年8月には、「h220430」で発信してきたプロダクトをまとめた「NewMade in Japan The Works of h220430」という作品集を出版しました。エルメスのデザイナーとして、「petit h」のモノづくりにも挑戦。作品集の出版後、エルメスから連絡がありました。パリの本社でお話を聞いて、発想の実験室とも言える「petit h(プティアッシュ)」の考え方に共感し、自分はこんなものがつくれるという提案をしたところ、エルメスのデザイナーとして、契約させていただくことになりました。十数点におよぶ提案のなかで、最初に完成したのが、金継ぎの磁器のオブジェ。わずかな傷や絵付けのずれなどが原因でそのままでは商品として展開できなかったエルメスの磁器に、日本の伝統的技法である金継ぎの技術を使って金箔やプラチナ箔を施し、新たな命を吹き込みました。私にとってのRISINGとは、次の時代にまで残るものをつくること。ここまで、建築を中心に取り組みながら、メッセージ性の強いプロダクトを発信してきましたが、ここがゴールだとは思っていません。次は、量産が可能で誰もが自然に使えるプロダクトのデザインに挑戦したいと思っており、少しずつ量産品も手がけています。一方、建築では、100年、200年後まで残る建物とそれを次の世代に受け継いでいくための仕組みづくりにも挑戦したいと考えて活動しています。今はそのための基礎を築いている段階でしょうか。オフィスではインターンも募集しています。現在、スイス、ポーランド、インドネシア、そして日本の学生さんが高い志を持って、私たちと一緒にクリエイティブに取り組んでいます。大切なのは、学生時代という贅沢な時間を有効に使い、世界に目を向けること。やる気のある学生さんは、ぜひ挑戦してください。写真(上左)がMushroom Lamp、写真(上右)はEdoma。一方の建築物は、ラインを生かした美しい空間の中に、人が心地よく過ごせる場所を、という思いが見事に表現されている。社会性のあるメッセージを発信するプロダクトと建築物の世界観は大きく異なるが、そのいずれもに真面目でひたむきにクリエイティブに取り組む、板坂さんの姿勢が表れている。製作にあたって、日本中の金継ぎ職人に連絡を取って興味を持ってくれる人を探し、協力をお願いするという経緯もありましたが、職人さんとの出会い、職人さんからの提案などもあり、さまざまな面でチャレンジを楽しむことができました。2015年10月、エルメスが京都の東本願寺の別邸である渉成園で開催した「petit h」で、この金継ぎのオブジェを発表し、おかげさまで大好評をいただきました。次は金継ぎとは別のものを発信したいと、製作に取り組んでいることろです。