ブックタイトル名城大学通信 52 [2016 Summer]

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概要

名城大学通信 52 [2016 Summer]

特集◎池上彰先生とトークセッション05いい会社に入って出世しようと思っている学生は、そんなこと考えませんよね。また、自分の研究さえできればいい、という先生もいます。そうではなく、少しでも世の中を良くするために何ができるだろうと考えられる学生を、先生がどれだけ意識して育てられるか。そこが大きいのではないでしょうか。ファルック/教育の中身が重要なのですね。インドネシアは未だに貧困率が高く、この状況を改善するのが私の目標です。学生は自ら学ぶ存在。先生は教育者としての自覚を。西部/そうした教育が行われるには、先生と学生の関係性も大事だと思います。理系は研究室に所属することで先生と学生が密接な関係を結べると思うのですが、文系は少し距離があるように感じています。池上/それは学生次第ですね。先生方は積極的に質問や相談に来る学生を大歓迎すると思いますよ。というのも、先生方は師と仰ぐ先生に食らい付くようにして学び、研究者の道を進んできたわけでしょう。自分がそうやってきたので、皆さんもそうだろうと思っています。だから皆さんも、「これは!」と思った先生の研究室を、どんどん訪問すればいい。そのために研究室を開放する時間が設けてあるのですから。西部/分かりました。待ちの姿勢ではなく、こちらから活用しないといけないですね。池上/高校までは生徒ですが、大学からは学生です。生徒は受身で学ぶ存在ですが、学生は自ら学ぶ存在なのですね。そして、やる気のある学生をバックアップするのが大学です。ただ、先生方もいろいろです。先生が教育者としての自覚をどれだけ持てるかどうか。授業評価もそのためにあり、今後ますます重要になってくるでしょうね。―グローバル社会で活躍できる素養について大学時代の学びや経験が物の考え方の根底に。横井/グローバル化の進展については、私は研究の面ではメリットを感じています。今はインターネットで検索をすれば、世界の最先端研究を知ることができ、情報を得た上で研究活動を進めることができます。必要な素養としては、英語の論文なので英語力は当然として、膨大なデータの中から自分に必要な情報を取捨選択できる力も大切になってくると思います。西部/文系の学生の場合、何となく大学時代を過ごせてしまうからこそ、自分で課題を見つけ、こういう力を身に付けたいと努力する必要があるのではないでしょうか。僕は社会に出るに当たり、学問と同時に聴く力や質問力といったコミュニケーション能力、人間力を身に付けることも重要と考え、意識的に学んでいます。池上/それは素晴らしいですね。よく言われるように、大学の勉強は社会に出てすぐには役に立たないかもしれません。ただ、仕事の上で難問にぶつかり、どうしたらいいか考えていると、大学時代に一生懸命考えたことや、仲間や先生と討論したことが、自分の発想や意識に影響を与えているということに、ふと気が付くときが来ます。大学時代に知らず知らずのうちに身に付けた物の考え方や判断力、分析力は、すぐには役に立つものではないかもしれませんが、いつか必ずどこかで役に立つ。私の場合は、「すべてを疑え」という教授の言葉を胸に刻み、仕事をしてきました。それが今の私を形作っていると思います。自分の頭で考え課題を見つける力を身につけるファルック/今回、ジャーナリストとして社会に貢献されている池上先生とお話をさせていただき、自分なりに社会に役立つ生き方をもっと探したいと言う気持ちになりました。横井/私も目的意識をもって取り組むことの重要性をあらためて実感しました。まだ専門分野は決めかねていますが、研究を通して世の中に貢献したいという夢があり、まずは研究者になるという目標に向かって邁進していきたいと思います。西部/僕は自分では誰にも負けないと思うほど、これまで主体的に活動をしてきたつもりでした。でも、世界に出て「自分はまだまだだな」と自覚できたことは大きかったです。大学時代は社会に出るまでの準備期間。後悔しないようにもっともっと挑戦し、いろいろな失敗もして経験を積んでいきたいです。池上/ぜひ、それぞれの道を切り拓いていただきたいですね。私は、やはり学生の皆さんには、大学時代に課題を見つける力を身に付けてほしい。そして、自分の頭で考えて課題を見つけ、それに取り組む人材を豊かに輩出すること。それが大学の役割であり、日本の発展につながると考えています。また、日本の税金は私学で学ぶ学生にも使われています。なぜ国が税金を使うのか。それは大学生にこれからの日本を支えてほしいと期待しているからです。皆さんは、期待の星です。ぜひ頑張ってください。「人生は両側から燃え尽きるロウソクでありたい」ドイツで活動した革命家ローザ・ルクセンブルクの言葉。ロウソクは両端から火をつければ、あっという間に終わってしまう。しかし、短くとも充実した人生でありたい。それが池上先生の座右の銘。「大学時代にもっともっと挑戦し、いろいろな失敗もして経験を積んでいきたい」 西部 優生さん「社会に役立つ生き方をもっと探して、母国の貧困率を下げるために活動したい」 モハマド ファルックさん特別企画◎ 池上彰先生とトークセッション