Challengers' Action

メンバー個々の得意分野を生かし、
ARを活用した理科の実験で学びにワクワクを!

林美初 大畑りお 本多紗彩 岡部百音

2022年06月10日

ブリッジ・プログラム(2年次以降プログラム)

AR技術を用いた「わくわくする科学実験」

リケジョ4人が集結し、「理科嫌いの子どもたちを減らしたい!」との想いで立ち上がった『NSE(New Science Education)』。ARを駆使することで、場所や時間の制約なく、しかも安全に実験ができることを提案し、新しいアクティブラーニングツールとして、教育機関からも高い評価を受けた。その立ち上げの経緯から、困難を極めたコロナ禍での活動、さらにメンバーがこのプログラムを通じて実感した自己成長など、当時を振り返りながらありのままの想いを語り合ってもらった。

NSE(New Science Education)の立ち上げ経緯について教えてください。

林(代表):私たち4人は、個々でチャレンジ支援プログラムに応募し、1年生の春休みのアメリカ研修時の同じグループ仲間です。学部もバラバラですが、一緒に何ができるか考えた時に、「教育」を柱に考えていきたいと意見が一致。岡部さんと私が教職を取っていたことと、4人とも理系科目(岡部さんも高校は理系)好きのリケジョということもあり、「教育」「理科」をキーワードに課題を話し合いました。

ちょうどコロナ禍において、中学生にタブレットが支給されていることから、ARを利用した理科の実験ができたらいいのでは、と考えました。紙を使ってできるARでの実験は、実験器具も不要でどこででもできますし、危険もありません。理科嫌いの子どもたちもいるようですが、ARの実験なら興味を持ってくれ、能動的な学習につながる新しいアクティブラーニングツールになると考えました。

どのようにプロジェクトを進めていきましたか?

林:全員でやるべきことを出し合い、そこから役割分担を考えました。基本的には私と本多さんがプログラミングを担当し、体験会の企画や画像検索などは大畑さんと岡部さんが担当しました。

本多:まず3年生になる前の春休みに簡単なデモを作り、その後半年かけて4つのコンテンツを考えました。紙に印刷したビーカーにタブレットをかざすと溶液が注がれる実験や、めだかの卵にかざすと孵化する様子が動画で流れるなど、いろいろなタイプのデモを作りました。

林:チャレンジ支援プログラムでは、活動を随時報告しなければなりません。そのためには、実際に中学生に使ってもらい使用感をヒアリングする必要もありますし、このプロジェクトの取り組みを第3者に評価してもらえるコンテストに応募する必要もあるのではと、みんなの意見が一致。まずは実際に中学生に体験してもらう体験会を考え、その成果をもってコンテストに応募することにしました。

大畑:当初は、夏休み中に学校や放課後学級のトワイライトスクール、塾などでの体験会を考えていたのですが、コロナ禍で実現不可能に。結局、中学3年生の妹とその友人5人に協力してもらい、自宅で行いました。プログラムの報告書を9月半ばに提出しなければならないのに、体験会ができたのが数日前という、ギリギリのスケジュールでした。

本多:特にこだわったのは、「リアル感」です。紙に印刷したビーカーにタブレットをかざすと溶液が注がれ、その水面が傾くと滴が垂れ、同時に音が出るような仕様にしました。体験会でも「音も出る!」と驚きと感動があり、いい手応えを得られました。

林:この体験会でのアンケートをまとめ、教育をメインにしたアプリ開発のコンテスト「ICT夢コンテスト2021」に応募。学生団体で唯一の優良賞をいただきました。さらにこの結果を受けて大学でも学長表彰もいただき、とても嬉しかったです。

特に苦労したことは?

林:とにかく時間が足りませんでした。本来ならこのプログラムは2年生が活動のメインですが、コロナ禍で、本格的に始動したのは2年生の終わり。3年生になって、就活やインターン、学部の研究と全てが重なってしまい、多忙を極めました。

大畑:しかも学部が違うので、忙しい時期が違ったり、コロナ禍のため大学内で集まることもままならなかったり、ちょっとした相談もできない状況だったのが大変でした。基本的には帰宅後、夜のZoomでの打ち合わせがメインでした。

林:やらなければならないことを全員で共有し、できる人ができることをやっていくという感じです。それぞれ得意分野が違ったことも、このプロジェクトが成功した要因の一つです。

岡部:1年間という限られた時間内で、スケジュール管理や計画書の提出、結果報告と、次々とやらなければならないことがあり、まだアプリも仕上がっていないのに、どのコンテストに応募するのかも決めなければならないと、いつも追われている感じで、本当にできるのか不安になったこともありました。

今回のプログラムを通じてどんな成長を実感しましたか?

林:時間がない中で、作業の効率を常に考えていました。Zoomで打ち合わせをしながら、スプレッドシートに情報を残し、一覧にして共有。着手・完了など、作業を見える化することで、効率よく進めることができました。短時間でいかに効率よくチームで動くか、ということを考える訓練になったと思います。こうしたマネジメント力は社会に出てからも活かすことができると思っています。

 また私は、元々関わったことは自分で全てやらないと気が済まないタイプなんです。それが今回は、任せられる仲間と出会え、全幅の信頼を寄せることができました。そしてこの仲間のためならどんなに忙しくても頑張ろうと思えました。そんな風に思えたことは人生で初めてでした。その上で、お互いに強みを活かしながら助け合うことで、想像以上に大きなことができるということを体感できたことは、大きな財産になると思っています。

大畑:確かに、最初の頃、林さんは一人で全部抱えていて大丈夫かな?と心配になったことがありました。ただ、途中から「これをお願いね!」と言ってくれるようになったんです。4人それぞれが違う能力を持っていて、それを活かし、補い合うことができたことが良かったと思います。

 私は、何の目的もなく大学に入学してしまい、何となくチャレンジ支援プログラムに応募したのですが、みんな何かにチャレンジしよう!という心意気のある人ばかりで、とても刺激になりました。今回のプログラムを通じて、一歩を踏み出すことの大切さを学びました。今までだったら、求められない限り自分の意見は言わず、自分からは動かないタイプだったのですが、周囲の状況を見て、自分が言うべきだと思った時は迷わず手を挙げることができるようになったことは、大きな成長だと思います。

岡部:確かに、みんなそれぞれ得意、不得意があって、お互いの良さを理解し合えたことで、自然と補い合えたことがいい結果につながったと思っています。私もこの仲間のためなら、頑張れる!と思えました。また、発表に関して「百ちゃんの得意分野だからよろしくね!」と言われ、自分では気づいていなかった自分を教えてもらえたことも大きかったですね。

本多:どちらかというと消極的なタイプだったのですが、この活動を通じて、大学生活がガラリと変わりました。注目されることも多くなりましたし、失敗も成長に繋がるので、どんどんチャレンジしよう!という気持ちが持てるようにもなりました。また、これまで私はプログラミングしかやっていなかったんです。毎日パソコンと向き合って、一人で黙々と…。ただ、今回みんながいたからできたことがたくさんあって、チームワークの大切さを痛感しました。仲間のために自分には何ができるかを考えたことがなかったので、貴重な経験になりましたし、視野が大きく広がりました。

今後の目標を教えてください。

本多:卒業後は自動車業界で、画像処理などを行う仕事に就く予定ですが、それまではARやVR、ICTの技術を使って、これらをどう教育に生かすことができるかを研究していこうと思っています。チームで動けば、可能性が大きく広がることを経験しましたので、前向きに研究にも取り組んでいきたいと思っています。

岡部:私は4年生の6月からオーストラリアに7カ月間、語学留学に行きます。日本との時差も小さいので就活も並行してやっていくつもりです。私も個性を生かすと、こんなに大きなことを成し遂げられるということを学んだことで、今後、出会う全ての人のいいところを見て、生かして、共に成長できるような関係を築き上げていけたら嬉しいですね。

大畑:私は卒業後、自動車業界で特許関連の仕事をする予定です。挑戦することの大切さと、仲間で目標に向かってやり遂げることの大切さを学んだことで、この先、「あなたのためなら頑張れる!あなたと一緒に何かやりたい!」と思ってもらえる人間を目指したいと思っています。

林:私も自動車業界で生産技術の仕事をします。そもそも今回のプロジェクトのテーマは「ワクワクする科学実験」を掲げていました。そこからARが実験で使えるということにワクワクし、プログラミングが出来上がるとまたワクワクし、体験では中学生がワクワクしてくれました。この“ワクワク”を、より多くの人に届けられるようなことにチャレンジしていきたいと思っています。