2024/05/17

Vol.1 ニューフェイス迎えて新シーズンスタート

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大学女子長距離界のフロントランナーとして存在感を発揮している名城大学女子駅伝部。昨年度は全日本大学女子駅伝で7連覇、全日本大学女子選抜駅伝(富士山女子駅伝)で6連覇を果たした。単独チームとして7年連続の全国大会制覇は大学女子駅伝のカテゴリーに限らず他に類を見ないほどの輝かしい実績だが、その連勝記録をさらに伸ばすことを目指して選手たちは日々トレーニングに励んでいる。
今年度は谷本七星選手(4年)が主将、米澤奈々香選手(3年)が副将に就任。4月に2名の新入生を迎えて新たなチームは始動している。米田勝朗監督は「今年の新入生は人数こそ少ないですが、2人とも明るくてとてもいい選手ですよ」と目を細める。早くも新生活に馴染んでのびのびと各自の持ち味を伸ばしているが、そんな頼もしい新人コンビと、今年度のチーム状況を紹介しよう。

名門に加わった2人の精鋭、「また日本代表として走りたい」

近藤 希美(こんどう のぞみ/法学部・法学科/神奈川・東海大相模高校卒)

昨年のインターハイでは1500m4位(日本人2位)、3000m5位(日本人1位)の成績を上げるなど世代をリードする活躍を見せてきた近藤選手。高3の関東高校駅伝で1区3位と力走し、母校・東海大相模高校は南関東地区最上位(5位)でフィニッシュ。同校初の全国高校駅伝出場を実現させる原動力となった。全国高校駅伝でも1区11位と奮戦した。

大学入学直後の4月下旬、アラブ首長国連邦・ドバイで開催されたU20アジア選手権には、自身初めて日本代表として3000mに出場。9分38秒91で銅メダル獲得という好成績を収めたが、「優勝を目指していたので少し悔しい部分もあります」と高い志を持っている。初の海外遠征では他種目の選手とも交流し、得ることが多かったという。

神奈川県出身で、進路選択の際には関東の大学や実業団へ進むことも検討したそうだが、名城大学を選んだのは「強くなりたいというのが一番(の理由)です」と力強く話す。「高校までは(学内で)追いかけられる存在という感じだったのですが、強い先輩方の背中を追いかけて取り組んでみたいと思い、名城大学を選びました」。

駅伝では1区を走りたいという希望を持っており、「一斉にスタートして、ラストで先頭に出るような走りが自分の理想です。注目度も高いと思うのでこの区間に憧れます」と秋へ向けた希望もすでに口にしている。競技のみならず、教職課程も履修して充実した学生生活をスタートさせている。

山田 桃子(やまだ ももこ/人間学部・人間学科/福島・学法石川高校卒)

山田選手は栃木県の若松原中学から県外の駅伝強豪高校へ進学し、全国高校駅伝では3年連続でアンカーを務めた実力者。昨年8月にモンゴル・ウランバートルで行われた東アジアユース競技大会のクロスカントリー3kmでは11分10秒05で金メダルを獲得している。

高校では寮に入っており、大学での新生活でもストレスを感じることなくすっかり馴染んでいるようで、「入学前からみんな仲が良くて楽しく過ごしているという印象でしたが、実際に入寮してみて、やっぱり学年を超えて仲がいいんだな、と感じました」と、思い描いていた通りの寮生活を送っている。

名城大学女子駅伝部員たちと以前より関係のあるランナーで、大河原萌花選手(3年)は同じ高校出身の2学年先輩。同じ栃木県出身である山田未唯選手(2年)とも宇都宮市内で交流があった。また、憧れの人物にはブダペスト世界選手権マラソン代表の加世田梨花選手(2021年3月法学部卒、現・ダイハツ)の名前を挙げ、かねてよりこのチームに魅力を感じて大学女子駅伝を観戦していたそうだ。

「まずは練習を積みながらベースづくりをして、秋には自己ベストを出せるようにしたいです」と今後の成長を目指しトレーニングに励んでいる。長い距離を得意としており、「10000mにも挑戦したい」と、持ち味をいかし長い距離の種目への熱意も持っている。

近藤選手は「4年間で、全日本大学女子駅伝と富士山女子駅伝の2大駅伝を皆勤で8回走るのが目標です」と、1年目から駅伝メンバーの座を目指して気勢を上げる。他大学の同級生にもライバル意識を持っており、特に高校時代に同じ県内で競い、現在は立命館大学に進学した古田島彩選手(白鵬女子高校卒)が気になる存在だという。立命館大学は5000m15分台をすでにマークしている選手が3名(古田島選手、山本釉未選手、池田悠音選手)加入し、チームとしても駅伝シーズンには強力なライバルとなることだろう。
山田選手も「駅伝で優勝に貢献したい」と、もちろん駅伝メンバー入りを意識してトレーニングを積んでいる。
また、駅伝ばかりでなく、世界大会出場を目標に置いているのも2人の共通点。この学年にとっては2年時と4年時に〝学生のオリンピック〟と称されるワールドユニバーシティゲームズが開催されることとなり、近藤選手・山田選手ともこの大会を目標として見据えている。「また日本代表として走りたい」とそろって高い志を口にする。

「2人とも真剣に競技に向かっていて、その姿が私にとっても刺激になっているし、チームにとっても良い材料になっています」と評するのは谷本キャプテン。「先輩を頼りながら、しっかりやっていってほしいと思いますし、一緒にがんばっていきたいです」と温かく新人を迎え入れている。

駅伝だけではない高いレベルのアスリート集団へ

今年のトラックシーズンはすでに始まっており、各選手が競技会や記録会に出場しているが、米田監督はトラックの結果に対しては「まだまだ甘い部分がある」と評価。特に3、4年生に対しては厳しい視線を向け、「昨年度の悪かったところは絶対に繰り返さないでほしい」と伝えているそうだ。
昨年度はトラックレースで思わしい成績を上げられず、苦しい流れで駅伝シーズンへ向かうこととなった反省がある。指揮官は自己管理を特に重視し、レースでパフォーマンスが十分に発揮できるような状態を自ら作っていくことを各選手に求めており、「駅伝の時期に帳尻を合わせて勝つというようなやり方ではなく、トラックでもしっかりと結果を出してほしい」と願っている。

かつて競技力の高い女子選手は高校卒業後に実業団へ進むのが主流だとみなされがちな風潮もあった中、大学生アスリートの指導育成に力を注ぎこんできた米田監督。近年では大学卒業後にシニアの日本代表選手として活躍する姿も目立ち、大学女子駅伝の存在感も増している。
「だからこそ、駅伝でトップを走っているこのチームがリーダーシップを取るような存在であってほしい。〝駅伝だけ勝てればいい〟というチームではなく、レベルの高いアスリート集団になっていってほしい」と個々の競技力向上の必要性を今年は改めて強調。「一人ひとりがどう成長していくかが重要であり、卒業してからも世界で戦えるようなランナーへ育っていける成長曲線を描いてほしい。あくまでも大学4年間の取り組みを通じて、その先を見据えてほしいと思っています」と、競技を長い射程で捉えられるトップアスリートの輩出を目指して日々の指導に当たっている。

トラックシーズン前半の主要大会としては6月27~30日に新潟・デンカビッグスワンスタジアムで開催される日本選手権(兼U20日本選手権)に数名の選手が出場予定。日本一を争う舞台での力走が期待される。その後も年間のスケジュールは例年と大きく変わらず、ホクレン・ディスタンスチャレンジ(北海道の各地で開催される中長距離大会シリーズ)などの各種レースへ参加予定。トラックでの成績がチーム目標につながる重要な要素となりそうだ。

谷本主将、米澤副将がチーム牽引

新チームでは最上級生の谷本選手がキャプテン、3年生の米澤選手が副キャプテンを担っている。3年生に副将を託したのは「学年を超えてみんなの意見を取り入れたい」という谷本選手ら最上級生の考えを反映させた体制づくり。学年間での垣根のない風通しの良さを目指している。

谷本選手は1年時から3年時まで2大駅伝すべてに出走して活躍。最上級生となり、満を持してキャプテンに就任した。「年々責任感が重くなるのを感じ、楽しいだけではなくなっていく部分もありますが、自分自身でチームを動かしているのを感じ、達成感は上がってきているのかなと思います」と、部の中枢を任される実感を持って日々行動しているそうだ。
また、新チーム発足のタイミングで新たな主務も誕生し、戸村文音さん(4年)がこれを担う。「私ができることとして、選手が走れる環境を作ることがやっぱり大事だと思うので、それに向けて自分なりに試行錯誤しながらやっていきたいです」と日夜尽力している。

副将となった米澤選手は「もともと縦のつながりがすごくあるので、副キャプテンになったからといってやらなければいけないことが増えたという感じではありませんが、やっぱりキャプテンの支えになっていけたらいいな、という意識はすごくあります」と協調して中心的役割を担っていく。部の全体を見渡して「オン・オフのメリハリが必要」という課題も見つけ、「ダラダラ話してしまうなどチームの雰囲気が引き締まらないという部分があったので、練習ではピシッと切り替えられるチームに」という改善意識を持っている。

スローガンは「感謝を胸に、ジョウショウ・メイジョウ」

今年度のチームスローガンは「感謝を胸に、ジョウショウ・メイジョウ」。グループでの話し合いで挙がった意見を集約し、この言葉へまとめあげたそうだ。〝ジョウショウ〟には常勝・常笑・上昇の3つの意味を込めたという。常勝は駅伝だけでなくトラックでも常に結果を求めること、常笑は笑顔で明るくポジティブであること、上昇は互いに切磋琢磨して向上していくこと。これらを日頃から忘れないため、標語として掲げている。
スローガンの前半部分「感謝を胸に」については、「食事を提供してくれている名古屋学芸大学の福岡ゼミの皆さんや、応援してくださる方々がたくさんいる恵まれた環境であることを忘れないため、言葉にしました」と谷本主将は説明する。
今シーズンのチーム目標としては、部員全員の5000mの自己記録更新を掲げ、2大駅伝では出走メンバー全員が15分台のシーズンベストを持って大会に臨むことを目指している。また、駅伝では歴代のOGがチャレンジしながら成し遂げられていない「区間賞独占の完全優勝」というターゲットも谷本主将は口にしており、高い目標へ向かって前に進んでいる。
「しっかりチームを作り、みんなの力で、〝このチームで優勝したんだ〟って胸を張って言えるように、この1年間頑張っていきたいです」と主将は爽やかに意気込みを語った。大学女子駅伝界を牽引する存在として、より高いレベルを求めて今年度も邁進していく。