2024/11/08

Vol.4 8連覇かかった全日本で無念の4位
「この悔しさが絶対に大きな力になる」

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10月27日、第42回全日本大学女子駅伝対校選手権大会が今年も宮城県仙台市で開催された。弘進ゴムアスリートパーク仙台(仙台市陸上競技場)をスタート、フィニッシュ地点とする6区間38.0kmで行われ、オープン参加の1チームを含む26チームが日本一の座を競い合った。



名城大学女子駅伝部は26年連続26回目の出場。前回大会では7年連続8回目の優勝を果たし、大会史上最多連勝を更新した。今大会ではその連勝を伸ばす8連覇を目指して臨む。前日に行われた記者会見で、チームの指揮を執る米田勝朗監督は大混戦となるレース展開を予想。最終区間まで勝負がもつれる可能性にも言及し、それに備えるオーダーを組んだ。

1区で出遅れる苦しい展開

気温23.5度と比較的暖かい晴天の下、12時10分の号砲で26チームの第1走者がスタート。名城大学は副主将の米澤奈々香選手(人間学部3年)が3年連続で1区(6.6km)を担った。流れを決める重要なこの区間にはライバル校も有力選手を起用し、レベルの高い争いが繰り広げられた。最初の1kmは3分13秒で通過。米澤選手は集団の好位置につけたものの4km過ぎに先頭から離れだし、そこから差を広げられる展開に。残り1kmは立命館大学の太田咲雪選手(2年)、大阪学院大学の永長里緒選手(4年)、大東文化大学の野田真理耶選手(2年)による三つ巴の先頭争いとなった。この区間を制したのは野田選手で、区間新記録の21分11秒で中継。2秒差で太田選手、さらに3秒差で永長選手が2位、3位に続き、3選手とも区間記録(21分21秒)を破った。米澤選手は先頭から遅れること44秒、21分55秒の9位でたすきを渡した。

名城大学女子駅伝部は今大会、4区間で前回大会の経験者が同じ区間を担当し、2区と4区に全国駅伝初出場の選手を起用するオーダーを編成。新顔2人への重圧を特に慮っていた米澤選手は、「後に初出場の選手が控えていたので私がしっかり走らなければいけなかったのに、全然走れませんでした」と涙を流した。スタート直後から口が乾き、脱水の症状を感じたという。不本意な結果となってしまったが、「悔しさを来年(のこの大会)につなげたい」と再起を誓った。

最短4.0kmの2区は、上野寧々選手(人間学部3年)が担当。チーム内でただ1人、スポーツ推薦以外の入試方式で入学してきた選手だ。高校時代には全国大会出場経験もなかったが、自ら強く志願して入部。この秋に大きく成長し、憧れの駅伝メンバーの座をつかみとった。「自分の最大限の力を出す。1秒でも早くたすきを渡そうと思ってスタートラインに立った」と後に振り返るほど意気込んで走り出した。この区間ではトップが入れ替わり、立命館大学が首位を奪取。区間賞も立命館大学の山本釉未選手(1年)が獲得した。上野選手は拓殖大学にかわされたものの、前を走っていた兵庫大学を追い抜いて9位の順位を維持。中継点ではトップと1分24秒差で次の走者へたすきを託した。個人成績は13分23秒で区間10位。「初めての全国大会で全然戦えなかったのですが、すごくいい経験をさせてもらえたので、この経験を2ヵ月後の富士山女子駅伝や来年につなげていきたい」と、今後への糧を得る初駅伝となった。

3区から追い上げ開始

3区(5.8km)は、前回この区間で区間賞を獲得している石松愛朱加選手(人間学部3年)が再び出走。今大会も区間3位(19分18秒)と力走したが、先頭の立命館大学のエース・村松灯選手(4年)がそれを上回る区間1位、区間新記録(18分45秒)の快走を見たため差はむしろ広がり、中継点で1分57秒差となった。「自分のところで流れを変えられませんでした。(米澤)奈々香の走りがきつそうで、『私がなんとかしよう』と思っていました。でも、その走りができなかったのが悔しい」と石松選手。流れを完全に掌握することはできなかったものの、先行していた中央大学と順天堂大学を抜いて順位を2つ上げ、7位でたすきを渡した。

4.8kmの4区は、瀬木彩花選手(法学部2年)が名城大学のユニフォーム姿で駅伝デビュー。たすきを受け取った時点で21秒差以内に3チームが前を走っており、その背中を追いかけた。大阪学院大学、東北福祉大学をかわして5位に順位を上げ、区間4位の15分57秒でリレー。「予想していた展開とは違ったのですが、落ち着いて自分の走りができるようにがんばれたのは良かった」と、初挑戦となった杜の都でのレースを振り返った瀬木選手。先頭争いの位置で走ることを思い描いていたが、予想外の状況下でも冷静に対応できたことを自身で評価した。「自分がもっと、主要区間でも任されるような力をつけていきたいと思いました。次は絶対負けないように、また練習をがんばります」と今後の成長を誓った。この区間終了時点で首位の立命館大学との差は2分01秒となった。

最長9.2kmの5区は原田紗希選手(法学部3年)が担当。この区間には前回大会区間賞のサラ・ワンジル選手(大東文化大学2年)や、10000m学生記録保持者の不破聖衣来選手(拓殖大学4年)、ワールドユニバーシティゲームス5000m銅メダリストの山﨑りさ選手(日本体育大学4年)など、実績を誇る各校のエースが集まった。だが、後続に1分近い差で走り出した立命館大学の中地こころ選手(4年)は区間2位の快走で先頭をキープ。3位から2位に上がった大東文化大学のワンジル選手が2年連続で区間賞を獲得し、首位・立命館大学から19秒差でつないだ。そんな中、原田選手は30分22秒の区間8位、1つ順位を落とし6位でたすきリレーし、「率直に悔しい。悔しいというか、申し訳ないという気持ちでいっぱいです。(想定以上の劣勢の展開に対する)動揺もあったり、思うように力が出せなかった」と言って涙がこぼれた。最後の中継所でのトップとの差は2分50秒に広がった。

首位から2分59秒差でフィニッシュ

最終6区は7.6kmと、2番目に長い区間。チームの主将・谷本七星選手(人間学部4年)が今年もこの区間を任された。過去3年間、駅伝で先頭をひた走ってきた谷本選手にとってこれまでにない展開に狼狽を覚えないわけではなかったが、「(全日本大学女子駅伝での)最後の走りということに変わりはないので、最後は笑って楽しんで終わろう、1つでも順位を上げて終わろう」という思いを胸に走り出した。その思いのとおり、前を走っていた拓殖大学、東北福祉大学をとらえてふたつ順位を上げる。競技場には4番目に姿を見せ、そのまま4位でフィニッシュテープを切った。

個人成績は25分07秒で区間2位。「やるせなさというか、自分自身が清々しい思いで走れなかった」とレースを終えた瞬間の気持ちを語った谷本主将。「先頭で走ると自分のペースでしっかり走れるのですが、今回はうまく自分のリズムに乗れなかった。キャプテンとして区間賞は必ず取りたいと思っていたのですが、それさえも達成できず、去年の自分も超えられませんでした。もっと自分自身の成長すべきところがあるかなと思う」と悔しさを隠しきれなかった。

名城大学女子駅伝部の成績は4位。総合タイムは2時間06分02秒だった。優勝は2時間03分03秒の大会新記録を樹立した立命館大学。2位の大東文化大学は2時間04分06秒で、こちらも大会記録(2時間04分29秒/2024年:名城大学)を上回った。3位は2時間05分41秒の城西大学だった。

「この悔しさ、負けを絶対無駄にしない」

名城大学女子駅伝部はこの大会で昨年まで7年間勝ち続けており、富士山女子駅伝を含めた二大駅伝で6年間負け知らず。そのため、在校生にとっては初めての敗北を喫する大会となった。
米田監督は「学生たちが悔し涙を流している姿を久しぶりに見ました。私も本当に悔しいです。でも、チームにとってはこの悔し涙が絶対に大きな力になると思う」と声を詰まらせながらも選手たちを励ました。かねてより「やるべきことができていないチームが勝つべきでない」と説いてきた指揮官だが、選手がそれを実感として捉えるのは簡単ではないこともわかっていた。「結果として出ないと、学生たちにはわからない。そういう意味で、実際にこういう結果が出て、学生たちがこれからどう変わるかを見ていきたい。この結果はある意味、チームにとってはすごく大事なものになっていく」と、今後につながることを確信。さらに、「大学駅伝で勝つことだけを目標にやっているのではなく、この中から将来、世界で戦うランナーが育ってほしい」と、学生の枠を超えて活躍する選手を今後も輩出できるよう、個々の成長に期待を寄せた。

「駅伝直前に調子がやっと上がってきましたが、夏合宿までの取り組みを見ると、全然うまくいかなかったチーム状況でした。最後に調子を合わせるというかたちになってしまったので、そこが結果に現れたと思う」と、大会後に振り返った主将の谷本選手。今の戦力的にはしっかり走れている選手が部員の半分程度だそうで、「取り組んできたことに甘さがあったり、敗れた学校よりも足りていないものが確実にあった」と現状の課題を整理した上で、「この結果をしっかり自分たちで考え、富士山女子駅伝に向けて必ず巻き返します」ときっぱり。年末にリベンジが果たせるように、残り2ヵ月間を大切に過ごしていく覚悟をのぞかせた。
富士山女子駅伝ではこれまでに6連覇を達成。前回大会で優勝のフィニッシュテープを切った原田選手は、「富士山での連覇は途切れていないので、しっかり気持ちを切り替えて7連覇できるようにがんばりたい」と言って前を向いた。石松選手も「この悔しさ、負けを絶対に無駄にしない」と強く話した。

「連覇はいつか途絶えるもの」と米田監督は常々話しており、いずれ訪れる一敗を覚悟してきた。今、その時が来たことを受け止め、チームは新たなフェーズに突入する。まずは2ヵ月後の富士山女子駅伝が雪辱のチャンス。その舞台に向けた新しい一歩が、すでに踏み出されている。