名城大学女子駅伝部は今年も恒例の夏合宿を実施し、トレーニングを積んだ。例年と同様、8月前半は長野・富士見高原で走行距離を増やして土台づくりを行い、後半の合宿は岐阜・飛騨御嶽高原でより実践的な練習へ移行して走り込み駅伝シーズンへ向けた鍛錬期だ。夏までの軌跡を振り返り、秋の駅伝シーズンへ向けた各選手の意気込みを紹介する。
夏合宿前のトラックシーズンでは、日本一を争う日本選手権が愛知県名古屋市のパロマ瑞穂スタジアムで6月12日〜14日に開催された。
女子駅伝部からは近藤希美選手(3年)が3000m障害に、真柴愛里選手(1年)が5000mに出場。近藤選手は序盤から先頭集団でレースを進める積極的な走りを見せて9分59秒59の自己新で、メダルまであと一歩の4位に入った。真柴選手は15分35秒82で16位と、大学生ではただ1人の出場ながら実業団選手たちの胸を借りて健闘した。
近藤希美選手
真柴愛里選手
山本有真選手(2023年人間学部卒、積水化学)
また、卒業生の山本有真選手(2023年人間学部卒、積水化学)が5000mで自己ベストの14分59秒89をマークして初優勝を果たし、9月23日~29日に同じスタジアムで開催されるアジア大会の日本代表に内定。現地でその走りを見た在学生たちは、大きな刺激を受けた。
7月中は例年と同様、北海道の各地で行われたシリーズ競技会「ホクレンディスタンスチャレンジ」に参戦。自己新やシーズンベストも生まれる一方、課題を見つけた選手たちも。それぞれ自分と向き合って夏の強化期間ではさらなる飛躍を目指して汗を流している。
今年度の主将、瀬木彩花選手は「この夏合宿が秋の駅伝シーズンにつながる大切な練習時間になるので、常に目標の(二大駅伝)優勝を目指しながら頑張っています」と、チームの中心となって厳しい練習に励んでいる。
瀬木選手自身は6月上旬に母校・美濃加茂高校(岐阜)での教育実習に参加し、部活動でも高校生のトレーニングパートナーも務めた経験のなかで、指導やサポートの立場の方へ感謝が深まったという。
「これまで本当に支えられてきたんだと実感しました。今自分ができることは、(駅伝で)優勝して結果で示すことだと思いました」と話す。「自分はこれまで大事なところで結果を出せない部分があったので、そこを克服して、強くなったところをレースで出せるようにこの夏合宿は特に意識を高く持って頑張っていきたいと思っています」と、チームを牽引しながら奮闘している。
副将の村岡美玖選手は昨年の全日本大学女子駅伝のアンカーで力走したが、富士山女子駅伝前に大腿骨を痛め、春先にも足底の痛みが発生。ランニングのトレーニング再開は5月からとなっていた。
4年間を通じて「ケガをしている期間が走れている期間より長かったのではと思うのですが、その期間も自分の中では無駄になっていない。その期間があったからこそ自分は走ることが好きで、走って恩返しがしたいという気持ちが強くなりました」と語り、最後の夏合宿では練習への姿勢で上級生らしさを示したいと思っている。
今後の目標は「5000mで15分20秒台」。「まだ自信のある状態ではないですが、これから練習の質なども上げて狙っていきたい」と意欲的だ。
山田未唯選手は「春の合宿で結構順調に練習ができていたので、トラックで記録を狙っていきたいと思ったのですが、結果を出すことができないシーズンになりました」と今季前半を振り返る。
6月頃に一時、足が抜ける感覚があったと話しており、思うように走りの状態を上げ切れなかったことに悔しさをにじませた。今後は「5000mの自己ベストを更新するのが最低限の目標」と位置づけ、マイペースで練習に励んでいる。
力丸楓選手は大学限りでの競技引退の意向を固め、最後の夏合宿に精を出している。卒業後は大学院進学希望で、これから試験を控える多忙の時期ではあるが、夏合宿にもしっかり参加してトレーニングに励む。
今年3月の日本学生女子ハーフマラソン選手権ではこの距離初挑戦ながら1時間13分04秒で8位に入り、6月28日の日体大長距離競技会の3000mでは9分15秒72の自己ベストと、一定の成果が出せたことを前向きに評価している。一方で、5000mについては今季15分台に届いておらず「4年生としてふがいない」とも。「15分台は安定して出せるようになりたい」と、秋以降に競技人生のラストスパートをかけるつもりだ。
1年生にとっては初めての夏合宿だが、それぞれが高い意識で取り組んでいる。
真柴選手は今季前半を振り返り、「自分の中ではあまり納得はしていないです」と口にする。前述の日本選手権5000mでは自己記録に迫るシーズンベストをマークし、8月中旬時点では今季の学生ランキングトップに立つなど高い力を示しているが、本人の中ではなお課題が残っているようだ。
「自分の状態を上げるような練習をする」ことを課題としてトレーニングに邁進。高校時代にも名城大学女子駅伝部の夏合宿を体験していたことから、鍛錬期も練習量に圧倒されるようなこともなく、日々の練習を順調に重ねている。
木村真桜選手は高校時代まで夏合宿を行っていなかったこともあり、新鮮な気持ちで研鑽中。走り込みは苦にせず、人一倍の向上心をのぞかせている。入学後、早速日本インカレの10000mで32分31秒56の2位と好走し、5000mは5月30日の日体大長距離競技会で15分36秒05とこの種目でも自己ベストを短縮している。
そんな木村選手だが、大学入学後に最も印象に残った出来事は自身のレースではなく、「日本選手権の現地観戦」を挙げる。「(真柴)愛里や(近藤)希美先輩が走っているのを見て、いつも一緒に練習してる仲間がそういう大会に出ていることにすごく刺激をもらった。自分も同じ舞台で次は絶対走りたいという悔しい気持ちもあったので、もっと上を目指そうと思えるきっかけになった大会です」。
そういった思いもありながら臨んだホクレンディスタンスチャレンジ網走大会では10000mで32分06秒62と自己記録を塗り替えて日本選手権10000m(12月5日に東京・世田谷で実施)への参加標準記録(32分11秒)も突破して着実にステップアップしている。日本学連派遣の11月15日のオランダ・ナイメーヘンでのセブンヒルズ15kmへの遠征も決まっており、「しっかり体と心の準備をして、一つひとつの大会に臨んでいきたい」と、好調な流れを後半シーズンにつなげていく構えだ。
岡本彩希選手はホクレンディスタンスチャレンジ千歳大会の1500mで4分23秒65、網走大会の3000mで9分17秒18と、7月に自己ベストを連発した急成長株。「日々の練習の積み重ねで自己新記録が出て、素直にうれしい」と成果を喜んだ。
「まだまだチーム内に速い先輩方や同級生がいるので、その選手に負けないくらい練習して、自分も駅伝に出場して2冠達成に貢献したい」と意気込み、夏合宿にも懸命に取り組んでいる。
大谷芽以選手は「前半シーズンは悔いの残る結果になった」と振り返る。4月から膝裏の痛みがあったと言い、合宿前の期間に一時ジョグ中心の練習に切り替えて調整し、夏本番は全快で練習を行っている。「長い距離は得意ではないので心配していた部分はありましたが、しっかり距離を踏めて結構順調に練習をすることができています」と充実の表情だ。
3年生の近藤選手は今季3000m障害で学生トップクラスの成績を収め躍進。高校時代からこの種目に興味はあったと話しており、今年から満を持してこの種目に参戦している。
日本選手権で4位に入ったことについては「メダルを目指していたので悔しい部分がやっぱり大きいですが、これまで集団で自分がついていくレースをしていなかったので、経験不足を感じ、まだ力不足だというのも感じたので、すごくいい経験」と今後への糧を得た。
5000mでもホクレン網走大会で15分59秒56の自己新をマーク。「やっと15分台が出せたので、(駅伝でも)短い距離ということにこだわらず、どこでも任せてもらえるようなイメージが持てている」と話す。良いムードを秋シーズンにつなげながら、9月5日~7日に神奈川・日産スタジアムで開催される日本インカレでの3000m障害優勝も見据えている。
橋本和叶選手(2年)は2月頃からシンスプリント(すねの周辺)の痛みに悩まされ、3月の世界大学クロスカントリー選手権大会(イタリア)では日本代表選手に選ばれていたものの、出場できる状態ではないと判断して欠場している。
5月頃からは通常通りの練習を行っているものの、「完璧な走りには戻せていない」と感じているそう。7月中に複数回レースには出場し、「最低限(大会に)出られるところまで状態を戻すことができた」と考え、前向きに練習を積んでいる。
夏合宿前半では特に土台作りを意識しながら走り込みを行い、「状態を戻して、去年よりもさらに良くしていきたい」と邁進している。
「9月には生まれ変わりたい」と話して積極的に練習に励んでいるのは金森詩絵菜選手(2年)。春以降は比較的順調に練習を重ねてきたが、自己ベスト更新には至らず「このままじゃダメだな、と感じたので、駅伝に向けてしっかり頑張ろうって気持ちでやっています」と夏合宿で特に気合を入れている。
昨年1年生ながら駅伝で重要区間を任された細見芽生選手(2年)は今季自身のペースで調整中。1月に世界クロスカントリー選手権(米国・タラハシー)U20の部(6km)で日本代表選手として26位となっていたが、その頃から両膝の痛みを抱えていたという。
そのため3月の世界大学クロスカントリー選手権でも日本代表に選ばれていたが出場を断念し、治療に専念して、マイペース調整を進めてリハビリに励んだ。
春のその時期は「先が見えず、とても落ち込んだ」と明かしたが、「今は切り替えることができています」と笑顔を見せた。「日本一のチームでは、やっぱり走れていない人も日本一の取り組みをしていかないといけないと思います。その取り組みが大会の当日に実ったら一番いいなと思っています」。焦ることなく完治を目指し、まずはコンディションの回復を最優先で過ごしているそうだ。
女子駅伝部にとって最大の目標の一つ、全日本大学女子駅伝は10月25日に例年通り仙台で行われる。
米田勝朗監督は前半合宿の時点で「今のところは順調かな」と一定の手応えを感じている。練習量を増やしたトレーニング段階では選手間の差は表れにくいため、スピードを上げた実践的な練習に入ってから本番でいかに走れるかを見極めて今後の構想を練っていくそうだ。
すでに5000mで15分30秒台で走っている真柴選手や木村選手、そして7月に連続自己新で急成長した姿を見せた岡本選手などの1年生には「当然、駅伝メンバーとして有力な候補になってくる」と秋の活躍にも期待を寄せる。
6区間で実施される全日本大学女子駅伝では必然的に出走できる選手の数も限られるため、最上級生へは出走メンバー入りへ向けた覚悟が求められるとも話している。9月上旬の日本インカレの5000mでは出場枠3つはすべて最上級生が占めたが、ここが彼女らにとっての試金石にもなりそうだ。「日本インカレでどういう走りをするかによって、駅伝に向けて(最上級生の)勢いが増していくのか、下級生中心のオーダー編成にしなくてはいけないのかがある程度は見極められると思います」と監督は見ている。
キャプテンの瀬木選手は「前半シーズンは1年生が結果を出してくれて、チームに刺激を与えてくれてよかったです。だけどやっぱり4年生が走れるチームの方が安心だし、強い。そういうところを見せるためにも、結果を残したいです」と力を込めた。
駅伝前には多数選手が9月下旬に行われる5000mの記録会に出場を予定しており、そこでの結果もメンバー決定のために重要な要素になる。
全日本大学女子駅伝では2023年以来3年ぶりの栄冠を目指す女子駅伝部。優勝が叶えば現4年生が1年時以来のこととなるが、瀬木選手は「今年のチームで絶対優勝したい」と強調する。「これまでと比べても、本当に勝ちたいと思っている選手が増えたと思います」と今年の主将は胸を張る。
チーム全体で貪欲に結果を求めながら秋の勝負へ向かっている。
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