2019/11/6

杜の都駅伝3連覇 Vol.2

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杜の都駅伝での3連覇を達成!

第37回全日本大学女子駅伝対校選手権大会(通称・杜の都駅伝)が10月27日、宮城県仙台市の弘進ゴムアスリートパーク(仙台市陸上競技場)を午後0時10分にスタート、仙台市役所前市民広場にフィニッシュする6区間38.1kmのコースで開催された。
 今回から前半区間のコースが変わり、フィニッシュ地点も仙台市役所と同市民広場を分ける道路に変更。総距離が従来(38km)から100m延びた〝新コース〟で実施された。

今年は例年になく雨の多い10月で、大会当日も天候が危ぶまれたが、本降りになることもなく最高気温19度程度の好コンディションでレース本番を迎えた。
 名城大学にとっては初の3連覇を目指して臨む今大会。前日の記者会見で米田勝朗監督は、「去年は連覇したとはいえレース内容に不満が残ったので、今回は自分たちにとっての最高の駅伝をしたい」と話していた。

負けられないライバルとの闘い

流れをつくる重要な区間の1区(6.6km)。名城大学は1年生の小林成美選手が抜擢された。他校からもスピードランナーが多く名を連ねたが、米田監督は「小林は大崩れするような選手ではない」と信頼して送り込んでいた。
 レースは7月にイタリア・ナポリで開かれた〝学生の五輪〟ユニバーシアードの10000mで銀メダルを獲得した中央大学の五島莉乃選手が、ハイペースで飛び出す展開。小林選手は大東文化大学、立命館大学の選手とともに五島選手を追走したが、すぐに自重。中盤以降に後続集団に吸収されたものの、その中でしっかりと順位キープに徹した。
 小林選手はトップの中央大学と1分00秒差の9位。最大のライバルと目された大東文化大学とは9秒差でたすきを渡し、大役を見事に果たした。

3.9kmの最短区間・2区は髙松智美ムセンビ選手。昨年は日本選手権(1500m)、日本インカレ(1500m・5000m)で優勝するなど華々しい成績を残してきた選手だが、今季はなかなか調子が上がらなかったが、「3.9kmと比較的短いこの区間を自信を持って、思い切って走る」(髙松)という戦略でこの区間へ出走。これがピタリとはまり、前を走る選手を次々に捕らえて8人のごぼう抜き。圧巻の区間賞で、名城大学をトップに押し上げた。

6.9kmの3区を走るのは2年生の和田有菜選手。ユニバーシアード5000mで4位入賞しているチームの柱の1人で、前回は1区で区間賞に輝いている。7秒差の3位から追い上げてきた大東文化大学の鈴木優花選手に1km手前で追いつかれたものの、そこから堂々たる力走を見せた。
 鈴木選手はユニバーシアードのハーフマラソン金メダリストで、前回は2区で12人抜きを演じている。この同学年のライバルに対し、和田選手は「過去の成績は関係ない。負ける気は全くなかった」と一歩も譲らない。鈴木選手が何度も仕掛けたが、そのすべてに対応し、勝機を探った。
 そして残り1km付近から、和田選手が反撃。逆に1回、2回と揺さぶり、3度目のスパートとなった6.5kmで鈴木選手を振り切り、3秒差をつけてトップでリレー。区間賞こそ鈴木選手に4秒差で譲ったものの、ここで首位の座を明け渡さなかったことは、後半区間の選手たちを大いに勇気付けた。

最後まで攻めの駅伝を

先輩が作り出した勢いを、4区(4.8km)山本有真選手がさらに加速させた。「最長区間の加世田先輩が楽できるように、1秒でも速く」と前へ前へと突き進み、1年生ながら区間賞の快走。この区間で2位に上がった松山大学に2分05秒の大差をつけ、3連覇の決定打となる見事な〝杜の都〟デビューを飾った。

最長9.2kmの5区は加世田梨花選手。1年生から3年連続でこの区間を任されたチームの〝エース〟は、大量リードにも気を緩めることなく、後続をさらに突き放す。区間成績では2年連続で大東文化大学の関谷夏希選手に敗れて区間2位に甘んじてきたが、4区で4位に下がったチームを再び2位に押し上げた関谷選手を4秒抑え、3度目の正直で悲願の区間賞を獲得。4年生が登録メンバー入りできなかった今回は最上級生となった加世田選手。文字通り、力強くチームを牽引した。

最終6区(6.7km)を務めたのは1年生の荒井優奈選手。2位の大東文化大学とは2分20秒の大差があったが、攻めの姿勢を貫いた。〝ビクトリー・ロード〟を区間2位にまとめ、そして歓喜のフィニッシュ――。これまで京都産業大学、立命館大学しか成し遂げていない3連覇の偉業、そしてチームの目標を成し遂げた瞬間だった。
総合タイムは2時間4分34秒。新コースとなり、従来より距離が延長されたにもかかわず、前々回(2時間5分15秒)、前回(2時間5分26秒)の優勝タイムを上回る、会心の継走だった。

大学陸上界の歴史に名を刻む

大学陸上界の歴史に新たな1ページを刻んだ名城大学女子駅伝部。ただ、目指していたのはあくまで「全日本大学女子駅伝での優勝」。昨年の連覇にうかれることなく、一つの優勝を確実につかみにいった。今回1、2年生主体の若いチームだっただけに、連覇の継続についても周囲から期待が寄せられるが、「1年1年を大切に、その年の結果をレースで出せるようなチームづくりをしたい」と米田監督は話している。

次なる目標は、12月30日に行われる全日本大学女子選抜駅伝(通称・富士山女子駅伝)での2連覇。達成できれば、2年連続の学生女子駅伝「2冠」となる。
 そのために欠かせないのは、やはり最上級生の存在になるだろう。今回も後輩たちを献身的にサポートし、チームをしっかりと支えたが、米田監督も「富士山では4年生も走れるよう励ましていく」と期待をかけたように、学生駅伝最後の舞台に1人でも多く立って、有終の美を飾りたいはずだ。
 その4年生の1人、向井智香選手は高校時代にインターハイ800m、1500m2冠の実績を持つもののこれまで故障に泣き、現在も右かかとのケガを抱えているが、「自分にとっては次が最後の学生駅伝になるので、それまでに治して絶対に出たい」と闘志を燃やしている。

令和最初の駅伝女王に輝いた名城大学女子駅伝部。それにおごることなく、一歩一歩着実に、勝利への道を歩んでいく。