2020/01/14

さらに強くなったチームで、『2年連続2冠』を達成 Vol.4

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富士山女子駅伝2連覇!

12月30日、富士山の麓で開催される2019全日本大学女子選抜駅伝競走(通称:富士山女子駅伝)に名城大学は今年も出場。昨年度、この大会で念願の初優勝を果たし、今年度は全日本大学女子駅伝(通称:杜の都駅伝)で大学史上初の3連覇を達成した。富士山女子駅伝は「2年連続2冠」という、こちらも大学史上初めての偉業をかけて臨む大会となった。ただ、チームを率いる米田勝朗監督は、目標は「連覇」ではなく、あくまで「今年度の大学駅伝での2冠獲得」と、1戦1戦の勝負へのこだわりを強調している。

名城大学女子駅伝部では、11月末から12月初旬にかけてトラックで自己ベストを更新する選手が続出しており、目標としていた「メンバー全員が5000m15分台」にあと一歩と迫る6人が15分台に突入していた。杜の都駅伝を終えてチームの底上げがさらに進んだと言える。
一方で、杜の都駅伝に引き続き最大のライバルと目される大東文化大学は、鈴木優花選手が12月7日に10000mで日本学生歴代2位の31分37秒88という驚異的な記録を出している。それだけでなく、大エースの関谷夏希選手、3000m障害でドーハ世界選手権代表の吉村玲美選手を擁し、名城大学の優勝への道は平坦ではないと見られていた。

大会当日は朝から冬の雨が降りしきる悪天候となった。前回より2チーム多い24チームが出場し、令和元年を締め括るレースに選手たちの表情は引き締まった。名城大学女子駅伝部からは、大学チームのほかに静岡県学生選抜のメンバーとして鴨志田海来選手(2年)、黒川ももか選手(4年)がそれぞれ1区、6区に出場した。

チームの底上げを武器に、ライバルたちに挑む

富士山本宮浅間大社をスタートする1区は4.1km。距離は短いものの、高低差20mのアップダウンのあるコースである。ここに抜擢されたのは1年生の荒井優奈選手。最初の1kmは上り坂にもかかわらず3分20秒を切るハイペースでの幕開けとなった。荒井選手は序盤、積極的に先頭集団を引っ張る場面も見せたが、3km手前で飛び出した全日本大学選抜の金光由樹選手(東海大学)がそのまま逃げ切り区間賞を獲得。荒井選手はトップから10秒差の4位でたすきをつなぐ。大東文化大学には27秒先行して最初の区間を終えた。

2区(6.8km)は2年生の髙松智美ムセンビ選手。前回大会はきつい上り坂が待ち受ける最終7区(8.3km)で当時の区間記録を上回るタイムでの区間2位だったが、今回は前半の流れを作るこの区間に。「今年の自分の調子では7区を走ることに不安があったので、2区で自分が今できる走りをしようと考えました」と話した。夏から調子が上がりきらず、杜の都駅伝でも短い区間を任された。それだけでなく、エントリー後の大会2週間前に右股関節に故障を起こし、万全とは言えない状態での出走。そんななか、区間記録を更新した全日本大学選抜の五島莉乃選手(中央大学)や立命館大学の佐藤成葉選手といった学生女子長距離界屈指のスピードランナーの力走には及ばなかったものの、区間5位の個人成績。前を走っていた日本体育大学をかわして一つ順位を上げた。2区終了時点でトップの全日本大学選抜から58秒遅れの3位でたすきをつないだ。

3.3kmの最短区間・3区を任されたのは井上葉南選手(2年)。7人のメンバーのうちで唯一、杜の都駅伝を走っていない選手だ。本人にとっては大学駅伝初参戦。上り調子で、11月には3000mで自己ベスト更新、5000mは初挑戦で16分07秒99をマークしている。中尾真理子コーチも「彼女は同級生の和田や髙松のようなエース格に成長できる選手だと思っています」と太鼓判を押す選手である。この区間では2位を走る立命館大学の御﨑舞選手が区間新記録の快走を見せ、前に追いつくことはできなかったが、御﨑選手に次ぐ区間2位。先頭の全日本大学選抜を48秒差で追う3位でたすきをつないだ。「苦しくなったときチームのために絶対逃げるな、と監督に言われていたので、その言葉を思い出して走れました。この気持ちは駅伝でないと味わえないので、自分にとって大きな経験になったと思います」と大学駅伝デビューの喜びを堪能した。

4区は4.4kmで、3区に続き平坦なスピード区間。名城大学からは1年生の山本有真選手が送り出された。この区間では先頭に変化が。2位を走っていた立命館大学が全日本大学選抜をとらえて首位が交代した。トップを奪った立命館大学の松本美咲選手は従来の区間記録を上回るタイムでの躍進だった。しかし、その記録を上回ったのが山本選手。松本選手よりも10秒速い13分55秒の区間新記録で見事に区間賞を獲得した。「走り始めてからは前に追いついている感じがなくて焦りもありましたが、記録が出たのは前半(区間の)がんばりに勇気をもらったからだと思います。気持ちを切らさず走れました」とこの記録を喜んだ。チームの順位は変わらず3位ではあるが、先頭まで22秒差の位置につけ、次の走者に逆転の望みをつないだ。

チームを信じて走りきり、ついに首位へ。

最長10.5kmの5区は3年連続で加世田梨花選手(3年)が担った。メンバーのなかで最高学年であり、名実ともにチームを引っ張る存在だ。5000m、10000mで自己ベストを更新し、好調を維持して今大会に臨んだ。「これまで周りの選手を気にしていましたが、今シーズンは自分のやるべきことに集中できました。確実に自分の目標を達成することで、自信をつけられたと思います」と話す通り、自信に満ちた走りで4km手前で先頭を捉えると、その後は独走体制に。抜き去った全日本大学選抜、立命館大学との差を広げた。その後方では大東文化大学の関谷選手、城西大学の1年生・福嶋摩耶選手が区間上位の走りを見せたものの、加世田選手はそれを上回るペースで走り抜いて区間賞を獲得。後続に51秒もの大差をつけ、レースの流れを完全に名城大学のものとした。

6区は長い直線が続く6.0kmのコース。米田監督が「アンカー前のこの区間が勝負」と考えていた重要なポイントである。1年生ながらここに抜擢されたのが小林成美選手だ。杜の都駅伝では1区を担当し、自身が思い描いていたように上位でたすきを渡すことができず、悔しさを味わった。今大会は堂々と先頭を走って区間賞を獲得。悔しさを晴らすレースになった。後続との差をさらに引き離し、2位を走る全日本大学選抜に1分32秒差で中継点に飛び込んだ。ここまでにじわじわと順位を上げていたライバルの大東文化大学は3位だったが、この時点で名城大学が1分52秒先行してアンカーにたすきが渡る。

最終7区は8.3kmの最長区間で、高低差169mの難コースだ。3km過ぎからの厳しい上り坂がランナーたちを苦しめる。名城大学はここを和田有菜選手(2年)が務めた。大東文化大学の鈴木選手がこの区間を走ると見越し、猛烈な追い上げを想定したオーダーであった。予想は的中して鈴木選手はこの区間にエントリーされ、杜の都駅伝に続き鈴木・和田のライバル対決に。
ただし、和田選手は大会2週間ほど前から左足底を痛めており、試合前の数日間はほとんど練習ができない状態だった。先頭でたすきを受けると過酷なコースに顔をゆがませ、「後ろの状況はわからなかったので、とにかく前へ前へと思って走りました」と話すように厳しい上りのこのコースをひた走った。
ひときわ強い雨の降るなか、チームメイトの待つ富士総合運動公園陸上競技場へ最初に姿を現わす。大きな声援に迎えられると、最後の力を振り絞って競技場を1周。そして、右手で大きなVサインを作ってフィニッシュテープを切った。和田選手は区間4位の結果だった。
目標の2冠を見事に達成。前回大会に引き続き3人が区間賞。さらに山本選手は区間記録更新という成績を収めた。

杜の都駅伝での3連覇、トラックでの記録更新ラッシュといった明るい材料に、優勝への見通しは良好かと思われた。しかし、大会直前になって2年生の主力2人、髙松選手、和田選手が故障。不安を抱える状態で試合当日を迎えていた。米田監督も、ギリギリまでオーダーの変更の可能性を考えていたという。
特に最終区間を任された和田選手は過酷なコース、他大学の強いランナーとの対戦に心理的重圧が大きいとチームメイトたちにもわかっていた。そのため、「有菜(和田選手)にたすきを渡すまでに大きい貯金を作って余裕を持ってつなごう」と加世田選手が中心となって声をかけた。加世田選手は「2人(和田選手、髙松選手)はいつもチームを引っ張る存在です。今回は2人のために他のメンバーがしっかり走ろうと話しました。前半の区間でがんばってくれて、いい位置でたすきをもってきてくれました。私自身も、強い気持ちで笑顔でたすきをつなげたと思います」と話し、実際にチームを先頭に押し上げる宣言通りの駅伝を展開した。

和田選手はレース終了後、「役割が果たせてほっとしています。(ケガをして)迷惑をかけ、プレッシャーや不安に押しつぶされそうになりましたが、部員みんなが励ましてくれて、『絶対に貯金を作る』と言ってくれた6人のメンバーのお陰で安心して走ることができました。先頭でフィニッシュテープが切れたので、結果によって4年生に恩返しできたと思います。今回は助けてもらった走りだったので、今後は故障しない選手に、そして、みんなを助けられる選手になりたいです」と気持ちを新たにした。
髙松選手も「万全の状態で試合を迎えられず、チームに不安を残したのが後悔です。チームのみんなや応援してくださる方々を思い出して思い切って走れたので感謝しています。今回はみんなの走りに助けられた試合だったと改めて思います」と話した。

チームの力を証明できた今大会。さらなるレベルアップを目指す

米田監督は今大会を振り返り「順調に迎えられたわけではなく、思うようにいかないこともありました。それでも、アクシデントがあるなかでも勝ちきれたということで、力を証明できたのではないでしょうか」と表情をゆるませた。
杜の都駅伝に続き4年生のメンバー入りは叶わなかったが、塩崎葵主将は「走ることはできませんでしたが、7人が心のこもったたすきをつないでくれました。支えてくださった周りの方に感謝しかありません。後輩はプレッシャーに負けないと思うので、今後も自信をもってやっていってほしいです」と、後輩たちにエールを送った。

必ずしも万全とは言えなかったチーム状況での優勝に、歓喜というより安堵の声が聞かれた。もはや名城大学にとって優勝は手を伸ばしてつかむものでなく、必ず果たさなければならないという意識でメンバー全員が臨んでいると言えるだろう。
米田監督は「大学女子長距離界をリードする存在として、全体のレベルアップのためにも、もっともっと研鑽を積んでほしい」と選手を激励。自負をもってさらなる躍進を誓う大会となった。

名前 コメント
1区 荒井優奈(法学部法学科1年) 緊張感のある中、沢山の支えでいいスタートを切ることが出来た。区間賞という個人目標を達成することは出来なかったが、チームで協力して優勝するという駅伝の楽しさを味わうことが出来た。
2区 髙松智美ムセンビ(外国語学部2年) 万全の体調で迎えることが出来ずチームに不安を残したことが一番の悔い。しかし、沿道の応援が力となり思い切って走り切ることが出来た。応援ありがとうございました。
3区 井上葉南(法学部法学科2年) 駅伝初出場だったが自信を持って挑むことが出来た。個人として納得いく内容ではなかったが、苦しい時にチームのことを想い走るという駅伝の醍醐味を肌で感じることが出来、大きな経験となった。
4区 山本有真(人間学部1年) 後半区間の選手の為に余裕を作るつもりだったが、レース中はその手応えを感じず焦りが生まれた。結果、区間新記録を樹立できたのは前半区間の選手の姿に後押しされた。この経験を来年に繋げたい。
5区 加世田梨花(法学部法学科3年) アンカーまでにみんなで貯金をつくるという目標の中、前半のメンバーの頑張りに後押しされ笑顔でタスキを渡すことが出来て良かった。来年に向けてしっかりと自分が中心となり頑張っていきたい。
6区 小林成美(外国語学部1年) 全日本大学駅伝での悔しさをバネに練習を積み重ねてきた。今回はチームを助ける側となってタスキを渡すことを考えた。苦しい場面もあったが1秒でも早くタスキをつなぐために前に進み続けた。応援ありがとうございました。
7区 和田有菜(理工学部数学科2年) 自己採点は60点。魔の坂に何度も苦しめられたが皆に支えられ走り切ることが出来た。応援ありがとうございました。引き続き精進するので今後とも女子駅伝部をよろしくお願いします。
主将 塩崎葵(法学部法学科4年) 2大駅伝優勝という目標を達成することが出来た。主将として走ることが出来なかったが、選手が心のこもったリレーでタスキをゴールへ持ってきてくれて嬉しかった。ともに戦った仲間と支えて下さった全ての方々に感謝申し上げます。
監督 米田勝朗 大会前にはコンディションに不安を抱える選手もいたが、狙い通り中盤で先頭に立つ心のこもったレースを展開することができた。選手全員が助け合って名城大学の強さを証明することが出来た。