2021/1/8

富士山女子駅伝で3連覇 3年連続2冠を達成 Vol.5

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さまざまな困難に直面した2020年。この年も年末に2020全日本大学女子選抜駅伝競走(通称:富士山女子駅伝)が無事開催され、名城大学女子駅伝部は3連覇を目指して出場した。2018年に初優勝を果たし、前回大会では2連覇を達成。10月の全日本大学女子駅伝対校選手権大会(通称:杜の都駅伝)と合わせての2冠を2年続けている。今年度も杜の都駅伝を制している名城大学にとって、3度目の2冠を懸けた大会となった。

今大会に出場したのは21チーム。静岡県富士宮市の富士山本宮浅間大社前から同富士市の富士総合運動公園陸上競技場までの7区間43.4kmの富士山麓コースが舞台となる。当日の朝には雨がぱらつき、濃霧が立ち込めていたが、時間が経つにつれ天気は回復し、曇空の下、気温10.5度と比較的寒さの穏やかな気象条件で午前10時のスタートを迎えた。コロナ禍での大会開催に向けてご尽力いただいた関係者、地元市民のご理解に深く感謝し、それぞれのチームが「走れる喜び」を抱きながらレースに臨んだ。

2区後半から独走
区間賞4つでライバル圧倒

4.1kmの1区は、スピード自慢の髙松智美ムセンビ選手(3年)が任された。この区間は最初の1kmを3分31秒とスローペースでの滑り出しになったが、髙松選手が1.5km付近で果敢に飛び出してレースを揺さぶった。ラスト600mあたりで日本体育大学の赤堀かりん選手(2年)らにかわされ区間賞は逃したものの、トップと6秒という僅差の区間4位で中継した。

会心の走りで一気にトップ独走へ

2区(6.8km)を走ったのは和田有菜選手(3年)。1km過ぎで先頭を抜き去り、単独トップに立った。下りのコースとはいえ、途中1km3分を切るハイペースで実力をいかんなく発揮。区間タイ記録で区間賞の快走を見せた。
和田選手は今シーズン、なかなか自身の納得できる成績を出せていなかった。好調で臨んだ10月上旬の日本選手権1500mでは序盤で転倒し、10月下旬の杜の都駅伝では1区で惜しくも区間賞を逃すなど、気持ちの晴れない結果が続いた。その結果を引きずって練習する姿を見て、米田勝朗監督は「気持ちが散漫になっている」と一喝。それをきっかけに和田選手は本来の自分を取り戻したと監督は話す。今回は会心のレースで、「最初から最後まで自分らしく走れて、区間タイのタイムにつながったことがうれしいです」と和田選手。爽やかな笑顔で次のランナーにたすきを渡した。

地元静岡で成長した姿を披露

最短3.3kmの3区を走ったのは鴨志田海来選手(3年)。静岡・島田高校出身の鴨志田選手は昨年度のこの大会で静岡県学生選抜チームの1区を務めたが、名城大学の一員としての出場はこれが初めてだ。今回のメンバー7人の中でただ1人、杜の都駅伝を走っていない選手だが、「今年度のチーム内で随一の成長株」(米田監督)と評されるほどに調子を上げ、富士山女子駅伝の〝最後の1枠〟を勝ち取った。地元・静岡の大会で堂々と先頭を走り抜き、次の区間へたすきリレー。区間5位の結果には「名城大というチームで走るからには区間賞は必須、という気持ちで臨んでいたので、まだまだ自分は未熟だと感じました」と省みたが、「思い切り走れたことは良かったです」と持ち前の明るさでこの駅伝を楽しんだ。

目標は去年たてた自身の区間新記録

4区(4.4km)の山本有真選手(2年)は前回大会に引き続きこの区間を担当。区間記録を作った〝1年前の自分を超える〟という目標を胸にこの大会に挑んでいた。比較的平坦なコースで、最初の1kmを3分03秒と好調に走り出し、後続との差を広げる。最終的に前回とまったく同じタイム(区間タイ記録)で区間賞を獲得した。今年度はけがの影響が長引き、チームメイトと同じ練習メニューができないことも多かった山本選手は、「悔しい思いばかりの1年だったので、ここで区間賞が取れてうれしいです。去年より楽しく走れたと思います」と充実の表情だった。この時点で2位に1分27秒という大量リードで次の走者にたすきが渡る。

名城の大エース・加世田選手最後の走り

最長10.5kmの5区は各大学が有力選手を配置するエース区間。名城大学からは加世田梨花選手(4年)を4年連続でこの区間に送り込んだ。12月4日の日本選手権(長距離種目大会/大阪)10000mではレース途中で実業団勢を引っ張る役目を負いながら日本学生記録にあと9秒と迫る学生歴代3位の31分39秒86をマークして絶好調。これまでチームの柱として活躍してきた加世田選手にとって、今回は名城大学のユニフォームを着て走る最後のレースだ。区間記録の更新も視野に入れ、気合の入った足取りで走り出した。
だが、中盤以降思うようにペースが上がらず、距離を重ねるごとに表情は険しくなっていく。前回、前々回と区間賞を獲得しているが、今回は区間3位。区間タイムは2017年に初めてこの区間を走った際の自身の記録を下回り、本来の力が出しきれない走りに。後続とのリードは十分に保って順位は維持したものの、加世田選手にとってはまさかの苦戦で、次の走者に「ごめん」と声をかけてのたすき渡しとなった。

1年生が見せた衝撃の6区区間新記録

6区で待っていたのは1年生の増渕祐香選手。杜の都駅伝で4区区間賞の学生駅伝デビューを果たすと、11月以降トラックレースで何度も5000m15分台を出している。1年目での成長ぶりは米田監督からの評価も高く、距離への不安もなくなったとして、ルーキーながら6.0kmのこの区間へ抜てきされた。
大東文化大学大学院生で実力者の関谷夏希選手に44秒差で追われる展開となり、緊張を感じやすい増渕選手は、今回も同じ区間に強い選手がいると知って緊張が高まったと話した。しかし、そんな様子を感じさせない堂々とした走りで区間賞も手にして後続を突き放した。
区間2位の関谷選手も従来の区間記録より速いタイムだったが、増渕選手はこれを4秒上回る区間新記録を樹立。「これまでは先輩がチームを率いてくれていましたが、今後は自分が名城大を引っ張る存在として責任感を持ち、より良い成績を出したいです」と、ますますの飛躍を誓ってルーキーイヤーの駅伝を終えた。

過酷なコースをモノともせず驚異の区間新

最終7区を担ったのは小林成美選手(2年)。8.3kmのこの区間は苦しい上り坂が3km過ぎから待ち受ける、高低差169mの誰もが嫌がる過酷なコース。この区間の出走へ自ら手を挙げたのが小林選手だ。快調なペースで走り、上り坂をものともせず軽やかな足取りで駆け抜けた。寒さを苦手とする小林選手の味方をするかのように、レース終盤は徐々に気温が上昇。天候も回復し、晴れ渡る空のなか、朝は霧で隠れていた富士山が富士総合運動公園陸上競技場の背後に顔を覗かせた。その競技場に最初に姿を現したのが小林選手。あっという間にトラックを1周し、笑顔でフィニッシュテープを切った。
小林選手は杜の都駅伝の後の走り込み期間中に足の甲を痛め、その後3度ほどけがを繰り返していた。そのため標準記録を切っていた12月4日の日本選手権10000mの出場も見送ってこの大会に照準を合わせてきたこともあって、結果を出せたことを大いに喜んだ。「大会前の時期にけがや体調不良を起こしてしまったのが反省点ですが、結果として区間新記録が出せ、とてもうれしいです」。これまでの区間記録を13秒塗り替え、区間2位の選手より1分50秒も速い区間賞。これには米田監督も驚き、顔をほころばせた。

「全区区間賞」の目標は果たせずとも
後続に2分38秒もの大差

結果的に、2位大東文化大学に2分38秒もの大差をつけて今年度も2冠を達成。大学女子駅伝6連勝と勝利を重ねた。4区間で区間賞を獲得しており、タイムも区間新が2つ、区間タイが2つと、他を寄せ付けない強さだった。
今回は故障中の選手もおらず、ほぼ万全の態勢で大会当日を迎えられた。それでも「全区間区間賞」には届かず、この目標は来年度以降に持ち越しに。「やってきたことは間違いではなかったと思いますし、油断があったわけでもありません。ただ、全員が調子をここに合わせるというのはやはり難しいのだと感じました」と米田監督は話す。調整の難しさの原因の一つには、メンバー争いの激しさがあった。メンバー入りを目指して取り組んできた選手たちは、日頃の練習の段階で必死になるあまり、大会本番までに疲労が抜けきらない部分があったと監督は反省点を挙げている。今回メンバーに入れなかった荒井優奈選手(2年)は、12月6日の日体大長距離競技会で5000m15分44秒13(2020日本学生ランキング7位)という好タイムの自己新を出していたが、最終的に7人の枠に入れず補欠にまわった。「これだけのタイムの選手を走らせてあげられないのか」と米田監督も頭を抱えるほどの選手層の厚さのなかで、メンバーを決めるための練習は必然的に高いレベルとなる。選手は精神的にも身体的にも余裕を持つのが難しい日々だっただろう。チーム力の底上げは目覚ましく、学生の枠を飛び越え、実業団勢と競り合えるほど強いチームになったからこその新たな課題が見つかったようだ。

〝全員駅伝〟での勝利
伝統を引き継ぎ、挑戦は続く

大会終了後の優勝会見では各選手がレースを振り返るなか、ひとり涙が止まらなかったのが主将・加世田選手だ。今大会を大学4年間の集大成と位置づけていたものの、「これまでで一番いい走りをしたいと思っていたのに、実際には一番情けない走りになってしまった」と悔しさがこみ上げた。主将らしく走らないと、という気持ちがプレッシャーや焦りに変わり、体の動きを固くしてしまったとレースを振り返る。今まで何度も優勝の立役者となり、チームを勝利に導く存在だったが、最後の駅伝では仲間の力を身に染みて感じることになった。「頼もしい後輩たちが、私の走りをカバーしてくれました。この最高のチームで競技ができたことをうれしく思います」。

加世田選手からたすきを引き継いだ増渕選手は「自分がいい走りをして、最高の優勝を実現したい。4年生を笑顔で送り出したい」と走り出し、その想いを体現するかのような区間新記録。次の区間の小林選手も区間新で続き、「誰かがうまくいないときに誰かがカバーする。今回はまさしく〝全員駅伝〟だった」と米田監督は選手全員の健闘を称えた。そして、チームを率いてきた加世田選手の姿は、チームへ大きな影響を与え続けてきたと惜しみない賛辞を贈った。「加世田はこれまで4年間、試合でしっかり力を発揮してきました。その取り組みの姿勢、普段の行動から後輩は学ぶところが多かったと思います。監督としてぶつかったことも、厳しいことを言ったこともありますが、彼女自身の成長とともに、チーム全体が変わっていったと思います」。加世田選手は恩師の言葉に感極まり、今度はうれし涙があふれた。卒業後は「世界で活躍するアスリートになりたい」と目標を語り、監督も大きな舞台へ羽ばたいていく選手にエールを送った。

加世田選手をはじめ、今年度の4年生は、駅伝連覇の最初の年に1年生だった学年だ。その姿に憧れてチームに加わった選手も少なくない。そういった後輩たちが、今後のチームを作っていく。「4年生の後を受け継ぎ、来年以降につながる駅伝になったと思います」と米田監督。駅伝での連勝をさらに伸ばしていくことはもちろんのこと、トラックでも学生記録更新など、大きな目標に向かって明るい展望を抱いている。
勝ち続けることの難しさとその価値を改めて感じた今シーズン。名城大学女子駅伝部の伝統は引き継がれ、挑戦は続いてゆく。

2020全日本大学女子選抜駅伝 総合成績(8位まで入賞)

順位 大学名 記録
優勝 名城大学 2時間21分38秒=大会新
2位 大東文化大学 2時間24分16秒
3位 立命館大学 2時間27分00秒
4位 松山大学 2時間27分42秒
5位 大阪学院大学 2時間27分53秒
6位 城西大学 2時間27分59秒
7位 日本体育大学 2時間28分21秒
8位 関西大学 2時間29分19秒

名城大学の成績

区間(距離)選手名通算順位 記録区間順位 記録
1区(4.1m) 髙松 智美ムセンビ 4位 13分10秒 4位 13分10秒
2区(6.8km) 和田 有菜 1位 33分50秒 1位 20分40秒☆タイ
3区(3.3km) 鴨志田 海来 1位 44分20秒 4位 10分30秒
4区(4.4km) 山本 有真 1位 58分15秒 1位 13分55秒☆タイ
5区(10.5km) 加世田 梨花 1位 1時間33分41秒 3位 35分26秒
6区(6.0km) 増渕 祐香 1位 1時間53分12秒 1位 19分31秒☆
7区(8.3km) 小林 成美 1位 2時間21分38秒★ 1位 28分26秒☆

★=大会新記録(前年度樹立した大会記録を1分12秒短縮)
☆=区間新記録

優勝メンバーのコメント

名前 コメント
1区 髙松 智美ムセンビ
(外国語学部 国際英語学科・3年)
1区で区間賞をとり、チームに勢いをつけるというのが目標でした。結果的に流れをつくることができず残念でしたが、みんなが勢いを戻してくれて優勝できました。
2区 和田 有菜
(理工学部 数学科・3年)
最近の駅伝ではチームのみんなに助けられてばかりだったので、借りを返すという気持ちで臨みました。自分らしく走れて、タイムにつながったことがうれしいです。
3区 鴨志田 海来
(理工学部 環境創造学科・3年)
まだまだ自分は未熟だと感じた駅伝でしたが、思い切り走れたことはよかったです。来年は最上級生としての走りができるように、また1年間がんばります。
4区 山本 有真
(人間学部 人間学科・2年)
この1年間、満足いく結果が出せず、悔しい思いすることばかりだったので、ここで区間賞がとれてうれしいです。けがのサポートをしてくれたトレーナーさん、支えてくれたチームメイト、大会関係者の方に感謝の気持ちでいっぱいです。
5区 加世田 梨花
(法学部 法学科・4年)
情けない走りになってしまいましたが、この最高のチームで競技ができたことをうれしく思います。この優勝は頼もしい後輩が私のミスをカバーしてくれた結果だと思うので、みんなに感謝しています。
6区 増渕 祐香
(法学部 法学科・1年)
今年のチームとして最後の駅伝なので、笑顔で4年生を送り出そうと思って走り出しました。区間新、区間賞がとれて、これからの自信につながる駅伝になりました。
7区 小林 成美
(外国語学部 国際英語学科・2年)
他のメンバーがこの区間までに貯金をつくると言ってくれて、安心して臨むことができました。結果として区間新記録が出せ、とてもうれしいです。これからもう一段階レベルアップして走れるようにしたいです。