2021/10/05

2021 vol.2 杜の都駅伝5連覇を目指して

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名城大学女子駅伝部では今年も全日本大学女子駅伝対校選手権大会(通称・杜の都駅伝)、全日本大学女子選抜駅伝(通称・富士山女子駅伝)の「学生二大駅伝」での優勝を目指して日々研鑽を重ねている。杜の都駅伝で4年連続、富士山女子駅伝で3年連続の優勝を果たした昨年に引き続き、連勝記録の更新に期待がかかる。まずは10月31日に宮城県仙台市で開催される杜の都駅伝での「5連覇」に向けて残り1ヵ月を切り、仕上げにかかっている。トラックレースでの奮闘、そして合宿での走り込みに勤しんだ名城大の夏を振り返り、駅伝シーズンへの展望を紹介する。

2度の合宿でじっくり走り込み

今夏最大のトピックは7月10日のホクレン・ディスタンスチャレンジ網走大会10000mでの小林成美選手(3年)の快記録だ。11年ぶり日本学生新記録となる31分22秒34をマークし、来年、米国・オレゴン州ユージンで開催される世界選手権の参加標準記録(31分25秒00)も突破した。同レースでは荒井優奈選手(3年)も、学生歴代9位の32分11秒08という好タイム。チームは明るいニュースを得て、夏の走り込み期間に入っていった。

7月下旬から恒例の夏合宿を実施。7月下旬〜8月中旬に長野県・富士見高原で行った前半期間の合宿ではベースを作るため距離を踏み、8月下旬の岐阜県・飛騨御嶽高原での後半期間にはより実践的な練習を行った。米田勝朗監督は「練習メニューの指示は出していますが、各々が自主的にプラスアルファの練習をしています。自分を強くするためにどうしたらいいか考えて、それぞれで取り組んでいます。また、それだけの練習をしなければ駅伝メンバーに入れないという危機感を一人ひとりが持っているようです。全体の練習量は昨年より多くなっているかもしれません」と話す。

練習量が増えても、主力選手たちは大きな故障を起こさずに過ごせているという。練習を積むためにはケガをしてはいけない、そのためには身体のケアもしなければならないと各自が理解し、パフォーマンスを発揮するための考え方・取り組み方が根付いてきているそうだ。名城大での夏合宿を初めて経験した1年生の谷本七星選手は「高校生のころは、与えられたメニューをやればいいと思っていたので、それ以上の練習をしていることに驚きました」と先輩たちの意欲に触発され、自身もできる限り練習を追加して取り組んだと話す。それぞれの選手が各自の課題に向き合い、充実したトレーニングで夏を過ごした。

日本インカレでの結果に気を引き締めて

9月17日から19日には埼玉・熊谷スポーツ文化公園陸上競技場で日本学生陸上競技対校選手権大会(日本インカレ)が開催された。全国の大学生アスリートが集まるこの大会に、名城大からは8名が参戦。1500mに髙松智美ムセンビ選手(4年)、山本有真選手(3年)、谷本選手、5000mに髙松選手、小林選手、山本選手、10000mに主将の和田有菜選手(4年)、荒井選手、増渕祐香選手(2年)が出場。各選手がしっかりこの大会の参加標準記録を突破し、3種目にフルエントリーすることができた。さらに今年は3000m障害で井上葉南選手(4年)と谷本選手が出場権を手にし、大会に臨んだ。

初日の1500mは山本選手が4分24秒13の2位で表彰台に上がり、髙松選手(4分25秒34で4位)、谷本選手(4分26秒67で7位)とトリプル入賞を達成した。
同日の10000mでは和田選手が33分09秒61で4位。「状態が合わせられず、最低限の目標だと思っていた表彰台も逃し、キャプテンとして情けない結果になってしまいました。駅伝までに修正しなければならないところがわかったので、感覚を戻して走れるようにします」と反省を口にし、次につなげるレースとなった。この種目では増渕選手が33分23秒85の自己新で6位入賞。荒井選手は33分46秒53の9位と惜しくも入賞に届かなかった。

大会最終日の3000m障害では谷本選手が自己新の10分11秒80で6位に入り、1年生ながら初日の1500mと合わせて2種目入賞を果たした。今年からこの種目に取り組み始めた井上選手は10分43秒33で14位。大会前に「ずっとうまく走れていない感じがあったのですが、3000m障害を始めて走るのも楽しくなり、試合に向けて具体的な目標を立てるなどの基本的なことができるようになったと思います」と話したこの種目で、昨年(5000m)に続いて日本インカレを経験した。同じく最終日の5000mでは小林選手が15分54秒14で2位。優勝は逃したものの、積極的なレースを展開した。山本選手が16分11秒82の8位に食い込んで1500mとの2種目入賞達成、髙松選手は16分29秒25で13位だった。

今大会では「全種目で優勝、出場したすべての選手が入賞」の目標で臨んでいたがいずれも達成できず、満足とは言えない結果となった。「結果そのものは不本意ではありますが、これは駅伝で取り返そうと選手たちに伝えています。現状が確認できたという意味ではよかったと思います」と米田監督。「夏合宿でかなり走り込んだので、疲労は残ったかもしれません。その疲労を十分に抜いて、準備をしていけば調子は上がっていくと思います」と駅伝に向けて悲観はしていない。「日本インカレ後の1ヵ月が勝負」と語り、実際に大会後の練習では選手たちの目つきが変わってきたと感じているそうだ。駅伝でのライバルと目する日本体育大学ほか、他大学の選手たちの活躍を目の当たりにし、危機感を持つ機会となった。気を引き締め直し、駅伝での飛躍を誓う。

熾烈なメンバー選考を経て、本番で最高の継走を

今年の名城大には昨年の杜の都駅伝の出場選手6人中5人が残っているものの、エース区間・5区(9.2km)の経験者が不在となった。過去4年間は今年3月に卒業した加世田梨花選手(現・ダイハツ)が担当しており、今年は誰がこの区間を走っても初めてのこととなる。

10000mの学生記録保持者となった小林選手は「(個人のレースで)結果を残せるようになってきたので、駅伝でも重要な区間を自分が走りたい気持ちは強いです。最長区間で区間新記録を狙いたいという気持ちがあります。上級生になったので、自分も走りでチームをひっぱりたいです」と頼もしく成長した一面を見せ、この区間を走るだけでなく、昨年、加世田選手が出した区間記録(29分14秒)更新への意欲も示している。

米田監督は小林選手が名城大のエースに育っていることを認めながらも、「小林以外の選手にも『自分も5区を走れる』という状態にしてほしいと伝えています。主力の上級生は責任感を持ってそういう気持ちで練習できているので、チームにとってプラスになっていると思います」と話し、現段階で誰がどこを走るか決めるのではなく、各自がこの区間を担う気概を持つよう促しているという。和田選手も5区への希望を口にしており、「エース区間に挑戦したい気持ちはもちろんあります。その準備ができれば、本番でどの区間を走ることになっても自信を持てると思うので、しっかり向かっていければと思っています」と主将らしい姿勢を見せている。

2区(3.9km)や4区(4.8km)といった比較的短い距離の区間は下級生が担当するという昨年の流れが、今年も踏まえられそうだ。「来年以降も毎年勝ち続けるために、ポイント区間は上級生、つなぎの区間を下級生という配置ができる態勢を整えたい」と米田監督は考えている。最初の2区間で流れを作り、3区以降で差を広げるという展開の構想も昨年同様だ。そのためにも1区(6.6km)が一つのポイントとなり、力のある上級生がここを任される可能性が高い。前回は3区間で区間賞を獲得し、3つの区間で従来の区間記録を上回る記録を出したが、「昨年以上のレースができる感触はある」とチーム力向上の手応えは十分だ。

選手として登録する10人は10月初旬の学内練習でのタイムトライアルで決定し、本番を走る6人のメンバーの選考は10月17日の長崎・諫早ナイター記録会での結果を重要な判断材料とする予定。そこでの結果次第では「昨年走った選手が今回も走れるという保証はない」(米田監督)と、今年もメンバー争いは熾烈を極める。

熱い想いを持っているのは昨年出走できなかった選手たち。荒井選手は「1年生のときに杜の都駅伝のアンカーでゴールテープを切るといういい思いをさせていただきましたが、昨年は走れませんでした。その悔しさがあるので、今年は走って貢献できるようにしたい。私は長い距離が好きなので、長距離区間を走りたいです。ラスト勝負できるような強さも鍛えていければと思っています」と懸ける気持ちは強い。

2年前に富士山女子駅伝を走った井上選手も「昨年は補欠に入りましたが、補欠と選手ではまったく違うと感じました。今年は選手として、チームに勢いをつける走りをしたいです」と意気込んでいる。

「メンバー争いに絡んで、もしも選ばれたら区間賞を取りたい」と話す谷本選手をはじめ、ルーキーも着実に力をつけている。夏合宿の時点では五味叶花選手や畑本夏萌選手が良い走りをしている1年生として監督から名前が挙げられており、他にも前川凪波選手が9月20日の日体大長距離競技会3000mで9分38秒22と自己ベストを大幅に更新している。

もちろん昨年の駅伝経験者が現在もチームを牽引する存在であることは間違いない。これまでケガの多かった山本選手は今シーズン順調に練習を積んでおり、トラックのレースにも例年以上の本数を走って日本選手権や日本インカレといった主要大会で好成績を残している。「これまで二大駅伝にはすべて出場してきているので、譲りたくない気持ちはあります」とプライドをにじませる。

増渕選手は夏合宿では貧血に苦しんでいたが、日本インカレでは自己ベストを更新して入賞と、自身で掲げていた目標に到達。米田監督からも「レースでは集団から離れてしまったが、その後いい走りができていた」と高く評された。「昨年は1年生で短い距離の区間でしたが、今年は重要な区間を任せてもらえるようになりたい。自分がチームの追い風になるようないい走りをしたいです」と気合は十分だ。

今年が競技生活の集大成となる髙松選手は「どの区間でも任せてもらえるように、仕上げていきたい。チームのみんなから『智美がいると安心する』と言ってもらえるような、堂々とした走りがしたいです」と話している。有終の美を飾るべく、調子を上げていくはずだ。

「本番に出場する選手が最高の走りができる状態を作ろうと伝えています。力を出し切って、それでも戦う相手がそれ以上に強かったのならそれは仕方ないと思います。本来の力を出せずに負けるということだけはしないようにしてほしいです」と米田監督。昨年の自分たちを超えるという意味で、前回大会で樹立した2時間2分57秒の大会記録を上回る総合タイムを出すことが目標だ。前回は2位に2分51秒の大差をつけての勝利となったが、そういった記録にとらわれて周囲のことを気にするのではなく、自分たちのことに集中して持てる力を本番で発揮することを第一に掲げている。決戦の日は10月31日。それまでの日々を1日たりとも無駄にすることなく、全力を注いでいく。