2022/1/6

Vol.5 4年連続〝駅伝2冠〟の金字塔
富士山女子駅伝でも他を圧倒

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年末の風物詩、全日本大学女子選抜駅伝競走(富士山女子駅伝2021)は今回も12月30日に開催された。名城大学は2018年に初優勝を果たしてから3連勝中で、4連覇を目指して臨んだ。すでに5連覇を達成している10月の全日本大学女子駅伝と合わせて4年連続での大学女子駅伝2冠がかかっていた。

今大会には22大学と全日本大学選抜チーム、静岡県学生選抜チームを合わせた24チームが出場。静岡県富士宮市の富士山本宮浅間大社前をスタート、同富士市の富士総合運動公園陸上競技場をフィニッシュ地点とする富士山麓コースの7区間43.4kmで実施された。
この冬は例年より厳しい寒さの日が続いていたが、この日は比較的寒気がやわらぎ朝から快晴。スタート時の気温は8度。朝10時の号砲で24名のランナーが走り出した。

1区から早くもトップに 期待の1年生が攻めの走り

名城大学の1区(4.1m)を務めたのは1年生の谷本七星選手。12月4日の日体大長距離記録会5000mで15分52秒87の自己ベストを出して15分台ランナーの仲間入りを果たし、ルーキーながらプレッシャーのかかるこの区間を任された。「緊張していましたが、笑顔でタスキを渡すということを思い出して、実際に笑顔になると気持ちが軽くなりました。監督からこの区間を打診され、力を認めてもらったように感じてうれしく、自信が持てました」と充実した気持ちで力走。レース中盤から集団を抜け出して単独トップに立つと、そのまま先頭で中継所へ駆け込んだ。区間賞の走りで2位の松山大学に7秒差でタスキを渡し、チームを勢いづけるスタートを切った。

4年生同士が笑顔のタスキリレー 後続を寄せ付けず

6.8kmの2区は前半の重要区間。ここを任されたのは最上級生の松智美ムセンビ選手(4年)。惜しまれつつも今年度限りで競技引退を決めている松選手にとってはここが集大成の舞台となる。最初の1kmを3分09秒で入り、他を寄せ付けず先頭を守りきった。区間順位は6位で「富士山女子駅伝では区間賞を取る走りが4年間で一度もできなかったのがすごく悔しいです。でも、今回トップを死守できたのが収穫だったと思います」と4度出場したこの大会について悲喜こもごもの感想を語った。名城大学のユニフォームで走る最後の駅伝は先頭でタスキを渡し、笑顔で締めくくった。

最短3.3kmの3区に起用されたのは井上葉南選手(4年)。2年前に同じ区間を走っているが、その後なかなか駅伝の出走メンバーに入れず、10月の全日本大学女子駅伝では補欠にも入れなかった。悔しさを味わっていただけに、この舞台に立てる喜びもひとしおだった。「チームのために力を出し切ろうと考えていました。誰にも負けない気持ちで走れたと思います」と区間賞を獲得する快走で、晴れやかな表情で次のランナーにタスキを渡した。

山本が3区で3年連続区間賞 リードを51秒に拡大

4区(4.4km)は山本有真選手(3年)。1年時に区間記録を樹立、前回大会でも区間タイをマークした実績のあるこの区間を3年連続で務めた。「走り始めると、思ったより向かい風が強くてきつかったのですが、この1年はチームのみんなに迷惑をかけていたので恩返ししないといけないという気持ちで走れました」。一時チームを離れる時期があったことに触れ、チームに報いたい気持ちを力に変えた。自身の持つ区間記録の更新は風に阻まれたものの、区間2位の選手より41秒も速い区間賞。中継所で2位の日本体育大学に51秒先行してタスキを渡し、大きなリードをここで作った。

最長5区でキャプテンが奮起 〝貯金〟を1分13秒に増やす

最長10.5kmの5区は今年度のチームを率いてきた主将の和田有菜選手(4年)が担った。この区間には各大学からエースが集結。なかでも拓殖大学の不破聖衣来選手(1年)は12月に10000mで日本歴代2位、日本学生新の30分45秒21という驚異的な記録を出したばかりで、さまざまな注目が集まった。これまで駅伝で何度も和田選手としのぎを削ってきた大東文化大学の鈴木優花選手(4年)もこの区間に登場。大学の枠にとどまらない有力選手たちの戦いとなった。
「どれだけ強い選手がいようと、総合力で戦うのが駅伝。和田は(11月14日の)東日本女子駅伝でも不破さんと同じ区間に出ましたが、簡単には引き離されない意地の走りを見せたので、今回もキャプテンとしてそういう走りをすると思います」と米田勝朗監督は前日会見で話していた。

この区間までに大きな差はつかないだろうという監督の予想もあったが、それを裏切る前半区間での健闘で和田選手はのびのびと先頭を疾走した。不破選手、鈴木選手に次ぐ区間3位ながら、従来の区間記録を上回る33分32秒という好記録で走りきった。「強い選手が集まりましたが、ライバルどうこうというより、自分といかに向き合うかを大切にして走りました。チームのため、自分のために走った10.5kmでした」と、和田選手は走り終わってから胸に去来する気持ちを噛みしめた。
この区間で後続の順位は大きく入れ替わり、不破選手が10人抜きを演じた拓殖大学が2位に躍進。大東文化大学の鈴木選手も10人抜きで3位に上がり、日本体育大学が4位と有力校が続いた。名城大学は2位の拓殖大学に1分13秒差をつけ、後続をさらに引き離して首位で中継した。

終盤も盤石リレー アンカー小林はダメ押しの区間賞

6区(6.0km)は前回大会に引き続き増渕祐香選手(2年)が任された。長い直線の続くコースを先頭で駆け抜け、中継点では2位の拓殖大学に1分59秒差とリードを拡大した。個人成績は区間2位。前回大会で1年生ながらこの区間で区間記録を樹立していただけに、その記録に届かず「個人の走りとしては少しふがいないと思います。自分がもっと差をつけたいと思っていましたが、それができず悔しい気持ちでいっぱいです」と反省を口にした。「これからにつなげて、来年以降は自分がチームの核になれるよう切り替えてやっていきたいです」と今後の成長を誓うレースとなった。

最終7区は8.3kmの難コース。3km過ぎから上りが続き、高低差は169mという厳しい区間だ。前回大会での経験がある小林成美選手(3年)が担当した。「私の前に走った6名が、気持ちよく走れるよう貯金をたくさん作ってくれて、アンカーといういい役を任せてもらえて感謝しています。支えてくれたチームのメンバー、スタッフの方々をはじめ多くの方のおかげでスタートラインに立てたと思います」。万全の状態とは言えないなか、区間賞の走りで後続を突き放した。チームメイトたちが待つ富士総合運動公園陸上競技場にどのチームよりも先に姿を現し、仲間からの拍手を浴びてトラックを1周すると両手を大きく広げてフィニッシュテープを切った。その直後には和田選手と松選手がすぐさま駆け寄って、過酷なコースを走りきった小林選手をねぎらった。

和田・松を軸とした4年生は〝駅伝無敗〟で卒業

総合タイムは2時間22分24秒。レース終盤は強風が選手たちを苦しめたこともあり、前回のメンバーが作った大会記録(2時間21分38秒)には届かなかったものの、見事4連覇、そして今年度の2大駅伝制覇を達成。2位の大東文化大学には2分58秒差と前回大会(2分38秒差)以上の大差をつける圧巻のレースとなった。全日本大学女子駅伝に引き続き1区から先頭を一度も譲らない完封リレー。この富士山女子駅伝での勝利により、4年生は入学後の2大駅伝すべてに優勝して「駅伝無敗」で卒業を迎える。大きな目標が現実のものとなった。

「勝ち続けるプレッシャーがなかったわけではありませんが、今年度の新たなチームとして、挑戦の気持ちのほうが大きかったです」と最上級生になって気持ち新たにチームをまとめてきた和田選手。「練習についてはみんな頑張るので、生活面でいかに日本一のチームになるかを大切にやってきました。いろいろなことを共に乗り越えてきたメンバーに感謝しています」とチームメイトへの謝意を表した。副主将の松選手も「普段からみんながリラックスできるように笑顔を意識してきました。4年生同士で話し合いを重ね、後輩に同じ方向を向いてもらえるように努力しました。大変な1年でしたが、キャプテンとして引っ張ってくれた(和田)有菜に感謝しています」とチームづくりに尽力してきたことを振り返るとともに、常に先頭に立ってきた和田選手を称えた。

中学・高校の頃から全国トップクラスの競技力で活躍してきた和田・松両選手を名城大学に迎え入れたのが4年前。米田勝朗監督は「2人を預かることが決まってから私なりにプレッシャーがありました」との胸中もレース後に明かし、「彼女たちが4年間しっかり走らないと、名城大学に行ってもダメだと全国の先生方から言われてしまう。結果的に8回(2大駅伝を4年間)全部優勝させることができたので、役割を果たせたかなと思います」と、2人の大学での充実ぶりと、彼女たちを中心に奮闘してきたこの学年が達成した快挙を喜んだ。和田選手、松選手は8大会すべてに出場してチームの優勝に大きく貢献。最後の学年では競技だけでなく、日常生活でも準備を徹底していくようチーム全体に対して促す役割を果たして、この成果に結びつけていった。

後輩たちが伝統受け継ぎさらなる高みに挑む

3年生の山本選手はレース後に「4年間無敗で卒業するのがかっこいいと思います。4年生が伝統のスタートを切ってくれたので、私も来年度はその伝統を受け継げるよう、まだまだ未熟ですがこれからしっかりしていきたいと思います」と語り、最上級生となる来年度も強い名城大学をつないでいく意気込みを見せた。今大会を走った小林選手、山本選手と補欠の荒井優奈選手、そして主務の市川千聖さんの4人が来年度には4年生となり、これまでの歴史を継承していくことだろう。「私たちのチームは一人ひとりが強い思いを持っているのでここまでこれたと思いますが、おごってはいけないと思います。後輩たちにも新チームを作っていってほしいと思います」と和田選手は後輩たちへエールを送った。

新たな金字塔を打ち立てた名城大学女子駅伝部。ここで立ち止まることなく、さらなる高みを目指して進んでいく。

2021全日本大学女子選抜駅伝 総合成績(8位まで入賞)

順位 大学名 記録
優勝 名城大学 2時間22分24秒
2位 大東文化大学 2時間25分22秒
3位 日本体育大学 2時間25分59秒
4位 立命館大学 2時間26分19秒
5位 松山大学 2時間26分24秒
6位 拓殖大学 2時間27分53秒
7位 城西大学 2時間28分09秒
8位 全日本大学選抜 2時間28分15秒

名城大学の成績

区間(距離)選手名通算順位 記録区間順位 記録
1区(4.1m) 谷本 七星 1位 12分49秒 1位 12分49秒
2区(6.8km) 松 智美ムセンビ 1位 34分21秒 6位 21分32秒
3区(3.3km) 井上 葉南 1位 44分41秒 1位 10分20秒
4区(4.4km) 山本 有真 1位 59分07秒 1位 14分26秒
5区(10.5km) 和田 有菜 1位 1時間32分39秒 3位 33分32秒☆
6区(6.0km) 増渕 祐香 1位 1時間52分29秒 2位 19分50秒
7区(8.3km) 小林 成美 1位 2時間22分24秒 1位 29分55秒

☆=区間新記録

部員メッセージ

名前 コメント
主将 和田 有菜
(理工学部 数学科)
みんな! 1年間私たちについてきてくれてありがとう。みんなと真剣に向き合って考えて取り組んできた時間はとても濃かったです。次はみんなの番!! 大学4年間やり切る姿を楽しみに応援しています。頑張れ!
4年生 松 智美ムセンビ
(外国語学部 国際英語学科)
ドジな私をいつもそばで支えてくれてありがとう。ともみ先輩!!っていつも笑顔で呼びかけてくれてありがとう。練習でも試合でもいつも怖がりで不安になって緊張で固まってしまう私を「大丈夫ですよ!」と励ましてくれてありがとう。つまらないギャグを笑ってくれてありがとう。私のいいとこも嫌なとこも全部受け止めてくれてありがとう。みんなと離れるのがとても寂しいです。みんなの優しさにどっぷり浸っていたんだなと気付きました。これからもずっと応援しています!
鴨志田 海来
(理工学部 環境創造学科)
4年間やり切る! 覚悟を持って入学したのに、うまく走れず、辞めようとしたことがありました。そんな時に支えてくれたのは親や仲間たちで、諦めたら後悔することを本当は自分が一番よくわかっていました。自分は自分! 笑顔を忘れず4年間やり切ってほしいです!
井上 葉南
(法学部 法学科)
私は4年生としても選手としてもみんなに何も残せなかったと思うけど、私はほんとに後輩に恵まれたなと思います。出会ってくれてありがとう。みんなと駅伝ができてすごく楽しかったです。大学4年間はすごく一瞬です。今を大事に頑張れ! ずっと応援しています。
松澤 綾音
(法学部 法学科)
1年間、私たち4年生についてきてくれてありがとう。また、私にとって陸上競技最後の1年を20人のみんなと過ごせてとても幸せでした。来年以降、新チームになっても切磋琢磨して、より強いチームになることを期待しています。
水澤 唯菜
(法学部 法学科)
私は全然走れず、迷惑かけた時もたくさんあったと思います。こんな私でも最後まで続けてこれたのは、明るくかっこよく走る仲間の姿があったからです。これからもチーム一丸となって優勝に向けて頑張ってください。今まで本当にありがとうございました!
藤ヶ森 美晴
(法学部 法学科)
今年1年間、私たち4年生を信じて、ここまでついてきてくれて本当にありがとう。信じられない夢の数々を一緒に見れて本当に幸せでした! 後輩のみんな! ずっとずっと名城を応援してます!
3年生 荒井 優奈
(法学部 法学科)
4年生の先輩方とは私たちが一番長く今日まで一緒に練習や生活を共にしてきました。その中で学ぶことが多く、たくさんお世話にもなりました。そんな先輩方が作ってきてくださった伝統と想いを受け継ぎ、次は私たちが新しい歴史を作っていきます。
小林 成美
(外国語学部 国際英語学科)
大学4年間の陸上競技生活お疲れ様でした。私が先輩方と過ごした3年間の中で、学生として、競技者としての感謝の気持ちや心構えを学ぶことができました。今年度テーマのごとく、練習だけでなく生活においても考動している姿が印象的です。卒業後のご活躍をお祈り申し上げます。
山本 有真
(人間学部 人間学科)
あっという間の1年間、笑顔で明るくチームを引っ張ってくれた4年生! 今思えば、いろいろなことがありましたが、常にチームのことを考えてくれて、本当に感謝しかありません。3年間ありがとうございました!
市川 千聖
(法学部 法学科)
一番お世話になった先輩の方々で、今までを振り返るとさまざまな思い出が蘇ります。これから私たちが名城を引っ張る番ですが、4年生がこの1年間作ってくださったチームをさらに強く、いいチームになるよう頑張っていきます。4年間お疲れ様でした。これからはさまざまな場所でのご活躍をお祈りしています。
2年生 黒川 光
(法学部 法学科)
一番人数が多く、個性豊かで、一人ひとりの先輩方との思い出が印象深く残っています。明るくパワフルに私たちをリードしてくださったおかげで、どんなことも乗り越えることができました。私たちは先輩方が大好きです! 今まで本当にありがとうございました。
野呂 くれあ
(法学部 法学科)
たくさん悩んで辛いことも乗り越えられたのは本当に4年生の励ましや声をかけてもらったおかげでした! 最後の最後までかっこいい先輩たちでした。4年間お疲れ様でした。そして、ありがとうございました。これからは成長する私を見ていただけるよう精一杯頑張ります!
増渕 祐香
(法学部 法学科)
2年間ありがとうございました! また、この1年間私たちを引っ張ってくださりありがとうございました。先輩方は、走りでも、生活面でも尊敬する点が多く、そんな先輩方と一緒のチームでいられて本当に幸せでした。これからもずっと大好きです。
1年生 川野 朱莉
(法学部 法学科)
4年間お疲れ様でした。そして、1年間ありがとうございました。いつも明るく元気で、良い時も悪い時も優しく声をかけてくださる姿は私の憧れです。1年間という短い間でしたが、先輩方と過ごした時間は私の宝物です。これからはそれぞれの道で頑張ってください!
五味 叶花
(人間学部 人間学科)
この1年、チームを引っ張ってくださりありがとうございました。憧れであった先輩方と一緒に練習、生活できたことが嬉しく、楽しい毎日でした。この1年間の何もかもが思い出です。先輩方のようになれるよう努力していきます。
谷本 七星
(人間学部 人間学科)
明るく元気にチームを牽引してくださった和田有菜先輩、近くで寄り添ってくれた智美先輩、イケメンで器用な海来先輩、笑顔が素敵で面白い葉南先輩、プーさんみたいに優しいみずな先輩、綺麗好きでセンスが良い綾音先輩、チームのためにいつも働いてくれた美晴先輩、4年生の皆さんが大好きでした!
戸村 文音
(法学部 法学科)
4年間、お疲れ様でした! 先輩方の駅伝に対する想いの強さや常に上を目指して努力する姿はすごくかっこよかったです! これから進む道は別々になると思いますが、名城での経験を糧に頑張ってください! 私たちも先輩方がつなげてくださった伝統をこれからも先につなげていけるように頑張ります!
畑本 夏萌
(法学部 法学科)
今までありがとうございました! 4年生と一緒にいられた時間は短かったけど、たくさん思い出を作ることができて良かったです。私の憧れの選手と一緒に走ったり、生活したりすることができて幸せでした! これから4年生がいないと思うとすごく寂しいけど、これからもずっと先輩方のことを応援しています! 本当に4年間お疲れ様でした! ありがとうございました!
前川 凪波
(外国語学部 国際英語学科)
4年生の先輩方の背中を見てこの1年走ってきました。全日本、富士山駅伝で、先輩方が無敗でつないでこられた連覇を私たちもつなげるように頑張ります。先輩方のさらなるご活躍をお祈りしています。