2023/05/22

Vol.1 期待の新人が8名加入、チームがさらに活気付く

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昨年度の全日本大学女子駅伝で大会史上初の6連覇を達成した名城大学女子駅伝部。富士山女子駅伝と合わせて大学女子駅伝2冠を5年連続で果たしている。学生女子駅伝界では押しも押されもせぬ存在だが、年度が改まればチームは一新。増渕祐香選手(4年)をキャプテンとした新体制が始動し、日々の練習に励んでいる。今年度は8名の新入生を迎え、米田勝朗監督は「今年の1年生も力があり、楽しみな選手たちばかり」と意気揚々。ここでフレッシュな顔ぶれを紹介しよう。

切磋琢磨するニューフェイス

石黒 碧海(いしぐろ あおみ/外国語学部・国際英語学科/大阪・大阪薫英女学院高校卒)

スウェーデン人の父、日本人の母を持つ石黒選手は沖縄生まれ米国育ち。12歳のときに大阪へ移り、公立の中学校へ入学してから陸上部で競技に取り組み始めたそうだ。中3の頃からは脊柱側彎症という、背骨がS字に曲がってしまう症状に悩まされているという。高校2年時には、全国高校駅伝で2位となった大阪薫英女学院高校で3区区間3位の成績だったが、高3時は状態が悪く、左右の脚にも2度ずつ疲労骨折を起こして競技会には出場できていない。それでも「身体の使い方や栄養のことを探求するうちに、走りにとても興味を持てるようになってきた」と前向きに過ごしている。大学では日本語、英語、スウェーデン語が話せるという強みを生かして国際関係の勉強に注力するとともに、第二外国語でフランス語またはスペイン語の習得を考えているそうだ。「まずは身体をリセットして、駅伝を走ってずっと応援してくれた方々にがんばった姿を見せたいです」と自らを奮い立たせている。

瀬木 彩花(せぎ あやか/法学部・法学科/岐阜・美濃加茂高校卒)

餅屋を営む瀬木選手の実家では、家族全員が剣道の経験者で、瀬木選手も小学生のころは剣道に打ち込んでいた。体力づくりのために長距離走を始めたが、中学以降は陸上部に入って本格的に取り組むようになったそうだ。高校時代には全国高校駅伝では3年連続でエース区間の1区を走っている。昨年は秋に肺気胸を患った影響で満足できる結果ではなかった(1区45位)が、2年時には1区9位の好成績を収めている。美濃加茂高校の荻野知彦監督はかつて名城大学ランニングコーチを務めていたこともあり、この大学での練習にもチームで参加していたことから名城大学への進学を決めたそうだ。上りが得意だと話し、「みんながきついと感じるような局面でがんばれる」というのが持ち味。大学では教職課程も履修しており、「将来的には教員になって高校駅伝の指導者になるのが夢」と話す。

田中 咲蘭(たなか さくら/人間学部・人間学科/長崎・諫早高校卒)

長崎県の壱岐島出身の田中選手は、小学生のころから長距離ランナー。中学では陸上部がなかったためバスケットボール部に所属しながら、陸上未経験の両親とともにメニューを考えて練習を積み、中3時には陸上のジュニアオリンピックにも出場している。高校は諫早高校へ進み、3年時に全国高校駅伝で1区13位の成績を収めたが、「全然だめだった」と自身に厳しい田中選手。この1年ほどはなかなか思うように走れず練習中に涙を流すこともしょっちゅうだと明かしたが、「大学で一度は日の丸をつけて走りたいです。その姿を今まで支えてくれた人たちに恩返しとして見せたいです」と意気込む。「これまで駅伝ではあまり実力を出せたことがないと感じているので、自分の実力をしっかり出して貢献したいです」と、駅伝でも自身が納得できる走りを求めている。

平田 優月(ひらた ゆづき/人間学部・人間学科/熊本・ルーテル学院高校卒)

高校3年時にインターハイで3000mに出場、全国高校駅伝では2区(16位)を走っている平田選手。「日本一の大学でがんばってみたい」と考えて進路を選択したという。寮生活は初めてで、当初はホームシックもあったが、先輩や同級生の存在があって心強さを感じるようになってきている。練習についても「みんな速いから、(ハードなメニューを)こなすことができたら達成感がすごいです」と充実しているようだ。3000mの自己ベスト更新を目下の目標に掲げている。日本インカレへの出場も目指しており、まずは標準記録の突破を狙っていくという。そして何より、駅伝を走るのが一番の目標。「3、4年目で走りたいと思っていましたが、練習を始めてみて、やっぱり1年目から(駅伝メンバーに)入る気持ちでがんばろうと思うようになりました」。「ちゃんと大学生として勉強も陸上も両立できる選手になりたいです」と、教職課程も履修しながら勉学にも力を注ぐそうだ。

村岡 美玖(むらおか みく/法学部・法学科/長野・長野東高校卒)

昨年末の全国高校駅伝でアンカーとして長野県勢女子初の優勝のゴールテープを切った村岡選手。今年2月に豪州・バサーストで開催された世界クロスカントリー選手権U20の部では、自身初めての日本代表としてのレースを経験した。「完走が目標になってしまうくらいきつかった。それが世界のレースなのかなと感じました」と振り返り、「またJAPANのユニフォームを着たいと思うようになりました」と、大学でも世界大会の出場を目指す。長い距離が得意で、4月下旬の日本学生個人選手権では10000mに初挑戦して34分47秒81(10位)でフィニッシュ。「走りのコツがつかめれば、もっとタイムは出ると思います。これから先夏合宿もあるので、そこでまた自信をつけたいです」とさらなる成長を目指し、駅伝については「先輩方は1年目から駅伝で区間賞を取っているので、それを途切れさせたくないと思っています」と強い自覚を持っている。

薮谷 奈瑠(やぶたに なる/法学部・法学科/大阪・大阪薫英女学院高校卒)

高校時代は2年連続で全国高校駅伝に出場している薮谷選手。高2時には大学でもチームメイトとなった石黒選手とタスキをつなぎ、3年では5区区間10位で走っている。大学入学直後、4月8日の金栗記念選抜陸上中長距離熊本大会では3000mで4位(9分24秒85)と、先輩たちに先着する順調な滑り出しを迎えている。「まだ自己ベストは出ていないのですが、スピード感が出せるようになってきていい感じだと思います」と、新入生の中でも特に充実感をみなぎらせている。「大学生の間にハーフマラソンも走れる選手になりたいです。日本代表として走るのも目標です」と話し、3年時に行われるワールドユニバーシティゲームズをターゲットとしているそうだ。今年中に5000mで15分50秒を切るという目標とともに、駅伝のために安定感もつけていくことを具体的な課題として設定している。「速い先輩たちがいっぱいいるので、いいところを盗んでがんばっていきます」と笑顔で話した。

山田 未唯(やまだ みゆ/人間学部・人間学科/栃木・宇都宮文星女子高校卒)

小学生のころからクラブチームで陸上に取り組んできた山田選手。中学で陸上を辞めるつもりだったそうだが、誘いを受けて高校でも陸上部に入部。全国高校駅伝に3年連続で出場し、高3時にはインターハイ3000mに出場している。大学進学に際しても、「陸上を辞めたら何の取り柄もなくなってしまう」と考えて競技を続行する覚悟を決めたそうだ。現在は右足底の痛みで練習量を減らしながら徐々に身体を慣らしている段階。「夏合宿前にはレースに出たい」と先を見据えている。「まだ5000mを走れる感じはしていないので、1年目は1500mと3000mを中心に取り組もうと思っています」と、4年間での成長を目指している。

力丸 楓(りきまる かえで/農学部・応用生物化学科/宮城・仙台第一高校卒)

高校は県内有数の進学校で、文武両道の生活を送ってきた力丸選手。大学で陸上を続けることは考えていなかったのだが、高3時のインターハイ東北地区予選で1500m7位と惜しくも全国大会出場を逃したことで、競技を続ける決意に至ったそうだ。そこから進学先を探しはじめ、興味のある分野が学べる名城大学を選んだ。もともと獣医学の道へ進むことを考えていたほど生物に関する領域に関心があり、大学でもそういった分野の勉学を究めていく。1500mで全日本中学選手権の出場経験はあるものの、「全国の舞台で走ることに慣れていないので、まずはU20日本選手権のような全国の大会で結果を残したい」と、6月上旬開催される大会へ向けて励んでいる。駅伝についても「経験が少ないぶん、今後の可能性があるのだと捉えたいです」と話し、地元・仙台で開催される全日本大学女子駅伝に特に熱意をもっているそうだ。

8名のうち、7名が全国高校駅伝に出場している経験豊富な選手が集まった。昨年のインターハイ3000m決勝では瀬木選手、村岡選手、田中選手、薮谷選手がそれぞれ14、15、17、18位と競り合ったこの学年。今後も切磋琢磨していくことになりそうだ。

開学100周年での〝10連覇〟へ向けて

新入生はほとんどの選手が春の合宿での練習に合流し、4月、5月には競技会にも出場している。「新入生はかなり疲労が蓄積した状態で試合に出ていたと思うのでベストなパフォーマンスは出せていませんが、少しずつ慣れてきたところです」と米田監督。6月1日〜4日に大阪・ヤンマースタジアム長居で開催されるU20日本選手権にも複数の選手が出場を予定しており、「そこである程度本来の走りをしてほしい」と話した。7月のホクレン・ディスタンスチャレンジ(北海道の各地で開催される中長距離大会シリーズ)でも、自己記録を更新する選手が現れるよう期待を寄せている。

名城大学女子駅伝部は全日本大学女子駅伝では6年連続、富士山女子駅伝では5年連続で優勝しているが、いずれの大会でも最低1人は1年生が出走しており、今年の新入生も駅伝で大きな力になりそうだ。米田監督は上級生がしっかり走ることを求めつつ、「加世田(梨花選手、2020年度卒業生、現ダイハツ)のように、1年目から4年間最長区間を走ったという実績の例もあります。チームの将来のことを考えた1年生の長距離区間への抜てきも考えるかもしれません」と可能性を示唆した。その加世田選手はマラソンで今夏のブダペスト世界選手権の日本代表に内定。こうした先輩が駅伝連覇の礎を築き、今に引き継がれている。

連覇をつなぎ続けることができれば、今年の新入生が最上級生となる2026年に全日本大学女子駅伝での10連覇という大きな業績が打ち立てられることになる。この年は名城大学開学100周年の節目でもあり、特別な年になるかもしれない。遠大な構想の実現に向けての一歩はもう踏み出されている。