年4回の定期公演を続ける伝統ある演劇サークル
創立51年目となる名城大学公認の演劇サークル、劇団「獅子」。年に4回行っている公演について、舞台に立つ役者や舞台道具担当など、各々が望む分野で活躍する4人に、仲間と舞台を作り上げる醍醐味などについて話を聞きました。
・新入生歓迎公演
・夏公演
・学祭公演
・卒業公演
※学祭公演以外は、名古屋市内の小劇場で開催
お話を聞いた皆さん
野田麻美子さん/農学部応用生物学科2年生
鈴木聡子さん/薬学部薬学科3年生
平野水桜さん/経営学部経営学科4年生
渡辺朝陽さん/理工学部機械工学科2年生
36名のメンバーが、脚本から演出、役者、照明、音響、衣装、舞台装置まですべて自分たちで役割分担し、それぞれの専門性を極めているのがこのサークルの特徴です。通常の稽古と秋の学祭は学内で行い、その他の3回は名古屋市内にある小劇場を借りて公演を行っています。
渡辺:公演内容の軸とか“ジャンル”が決まった劇団ではなく、毎回脚本を書く人が変わりますし、その脚本に応じて自分が何をやりたいか買って出るのが我々のやり方です。大まかな役割分担のベースはありますが、一人で何役も兼任することも珍しくありません。役者に関しては、小劇場という小さな舞台で公演を行う特性上、出演できるのは5、6人程度。オーディションで選びますが、脚本担当者がメインとなって配役を決めています。
劇団と聞けば、当然役者が花形。皆、舞台に立つ役者を目指して入部してくるのかと思いきや、そうではないようです。
平野:幼い頃から、紙粘土やダンボールでミニチュア模型など“もの”を作ることが大好きでした。せっかく大学生になったのでもっと大きなものを、一人ではなく皆で一緒に作る経験をしたいと思い、出合ったのが舞台装置でした。演劇部に入れば、ダイナミックなものづくりに携われると思いました。昨年の新入生歓迎公演では、床や壁など、ディテールにまでこだわって部屋を作り上げたのですが、あの時の達成感は忘れられません。
衣装・小道具担当の野田さんも、ものづくりが大好き。衣装の調達や小道具の製作、管理などを担当しています。
野田:衣装を作りたいと思って入部しましたが、衣装を作るよりも借りたり購入したりすることが多いですね。必要な小道具にあわせてリスト化するなど、少しやりたいこととは方向が違ったのですが、それ以上に全員で舞台を作りあげていく過程にたまらなくワクワクしますし、公演が終わった時の達成感は、今まで味わったことがないほど大きなものでした。
今回話を聞いた4人の中で、唯一高校から演劇部に所属していたのが渡辺さんです。劇団「獅子」でも、役者をメインに活躍しています。
渡辺:「演じることがとにかく好きでした。高校の時は舞台が大きかったため、舞台映えを考えた、大きな動きが求められていましたが、大学では小劇場でやるため、リアリティのある動きを求めるようになりました。その分、役のキャラクターに没入できるおもしろさを実感でき、大きな舞台よりも、今のような小さな劇場でやる方が性に合っていると思いました」。
もう一人、役者をメインにしているのが鈴木さんです。高校時代に演劇部の友人が舞台に立つ姿を見て、大学に入ったらやりたい!と思っていたそう。
鈴木:「自分とはまったく違うキャラクターを演じることも多々あります。その役について深く考えることで自分の価値観や感じ方をあらためて知る機会にもなりますし、新しい思考回路の発見にも繋がっています」。
実は小道具担当の野田さんも、入部以来、2度役者として舞台に立った経験があります。自分にスポットライトが当たる喜びは経験した者にしかわからないですし、2回目の時は表情の作り方や動き方、間の取り方など、感覚的なものが掴めるようになり、アドリブも入れられるまでに。ものづくりが一番好きだが、もう一度舞台に上がりたいという思いも強くなったと言います。
舞台外で、公演の運営やチケット販売のための広報活動、物販の作成などを担当するメンバーも必要です。鈴木さんは、自分が役者として初めて舞台に立ったとき、お客さんとの距離の近さと一体感に、舞台演劇のおもしろさを感じたと言います。
「お客様のリアクションを肌で感じながら演じる楽しさに感動しました。せっかく役者として舞台に立つんだから、うちの役者にはできるだけ多くのお客様の前で演らせてあげたいんです」と自ら手を挙げて、広報活動にも力を注いでいます。前回の新入生歓迎公演の際には、4ステージともほぼ満席にしたとのこと。SNSに上げられた完成した舞台装置の写真を見て興味を持ち見に来てくれたりなど、広報活動が功を奏したようです。
名古屋市内の他大学でも、同じように小劇場で公演をやる演劇部が多いことから、他大学の演劇部のメンバーが見に来ることも多いそうで、学外での公演から他大学の演劇仲間と繋がることができるのも、楽しさの一つだそうです。
毎回、脚本担当者は全員一本は脚本を出さなければならないのがルール。通常、5、6本出てくるなかで、どの脚本にするかを全員投票で決めます。チケット料金をお客様からいただいているから、プロとして恥ずかしくない作品を作らなければならないのは当たり前。そのためにも、まずはより質の良い脚本を練り上げていきたいと渡辺さん。
今年は新入生の脚本志望者が多いとのことで、期待したいと4人とも口を揃えます。1時間の公演で、2万字ほどの脚本になるのですが、それを既に2本も書いた1年生もいるそうです。より良い作品が仕上がったら、対外的に評価が得られるコンテストに出ることで、さらにモチベーションも上がるのでは?との質問に、評価されるために自分たちが本当にやりたいことができなくなるのは本末転倒。やりたいことをやり続けていきたいと語りました。
「学部も個性も違う仲間と一つの公演を作り上げることは、とにかく楽しい。もちろん準備は大変ですが、むしろ忙しすぎるくらいが“生きている”という実感が得られるのがたまらないんですよね(笑)」演劇部に入ってくるきっかけは人それぞれですが、少しでも興味があったら、きっと何か自分が没頭できる役割があるはずと4人とも語ります。
1、2年生は、現在、次の公演に向けて準備の真っ最中。舞台装置担当の四年生の平野さんは、商業施設の内装を製作する会社に内定が決まり、やりたいことを貫いていくとのこと。最後の卒業公演に向けて気合を入れているそうです。
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