2022/10/21

大学随一の異端児

マルチな視点の文武両道の数学者!?

理工学部 電気・電子工学科 3年生 北川大慈(きたがわだいじ)さん

高校の数学Ⅲの授業で2次曲線にハマって以来、まだこの世に存在していない数学の定理を考えることに没頭している北川大慈さん。しかし、興味の守備範囲は数学一辺倒ではなく、野鳥観察や歴史探訪、さらには医療系などにも広がっているとのこと。そんな北川さんの摩訶不思議な脳内を少しだけのぞかせてもらいましょう。

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Q数学の公式を証明するのが趣味だと聞きましたが、その楽しさとは?

A

正確には、数学の定理を考えることをライフワークにしています。公式は数式で構成されていますが、定理は数学的な事実が文章で記述されています。ひとつの証明にいたるまでの背景や予想から考える定理の世界が好きなんです。

Q定理に興味を持つようになったきっかけは?

A

高校2年の数学Ⅲの授業で2次曲線と出会い、魅了されてしまいました。x軸とy軸上に焦点を決めて、そこから等距離の場所を結ぶと放物線になると知った時、その考え方を拡張してみたらどうなるんだろう、と好奇心が湧いてきたんです。



実際にいろいろな前提に基づいて証明を試みることに没頭していったのですが、その答え合わせを先生にお願いしたところ、「わからないなぁ」と言われ、正しいかどうかわからない世界があること自体が、僕にとってはうれしい発見でした。

Q印象に残っている証明や定理はありますか?

A

高校3年のはじめの頃ですが、僕が最初に見つけた!と思った定理があったのですが、よく調べてみたら19世紀に「シルベスター標準形」として確立されたものでした。かなり悔しかったのですが、方向転換のきっかけになりました。それからは、一から「軸解析」という新たな分野を切り開こうと考えるようになり、軸の回転に着目して球体の方程式を導き出して遊んでいます。

それ以上に今、のめり込んでいるのは、2次元、3次元の先にあるn次元のいわゆる「超平面」の世界です。想像ができない世界なのでシミュレーションが難しいのですが、とてもワクワクします。

Qそうした定理や証明は、世の中の役に立つのでしょうか?

A

悲しいことに、あまり役立たないかも…(笑)。でも、だからこそ、純粋に数学を楽しめているのだと思います。医学でいえば基礎研究のようなものですが、いまは使えないと思われているものでも、後から有用性が見つかるということはよくあります。いずれ、何かに役立つと信じてやっていますが、何に使われるかわからないところもおもしろさの要素です。

私は高校時代に超平面世界におけるある予想を考え付き、これに「超平面予想」という名前をつけました。記述としては簡単で誰にでも理解できる定理ではあるのですが、これを証明するには最低でも200近い別の定理(補題)を示さなければならないことを証明しましたが、何度証明しようと試みても手も足も出ずに苦戦していました。そして、高校時代の自分には証明できないと思い、未来の自分にこの証明を託すことにしたのです。先ほど、私の研究している証明が役に立たないかもしれないと話しましたが、この「超平面予想」が証明されれば必ず役に立つという直感のようなものは感じています。この予想を定理にすることこそが人生最大の夢です。

Q大学ではどのようなことを学んでいますか?

A

電子回路の設計を勉強中です。制御工学の講義も好きです。もともと名城大学を選んだのは、プラズマの研究をしている内田教授の論文に興味をもったからなんです。その学びを土台に、将来はプラズマを使って医学と工学をクロスさせた「医工学」を研究していきたいと思っています。高校生のころ、祖母が腰痛に悩まされていたのがきっかけで、医工学の存在を知りました。いまは、野鳥の観察や保護を行うサークルにも所属しているので、獣医学にも興味を持ち、動物の保護活動に医工学が応用できるのではないかと模索しながら学んでいます。

Qほかにはどんな活動をしていますか?

A

大学のボランティア協議会にも参加し、災害ボランティアチームの代表、大学生消防団もやっています。今年9月下旬に東海地方を襲った台風15号の時には、災害の発生直後から静岡県内の被害状況の調査を始め、10月1日から被害の大きかった静岡市清水区と磐田市の被災現場に入り、土砂の搬出などボランティア活動を行いました。

プライベートでは、歴史的遺構や美術館巡りが好きです。今年の夏は木曽駒ケ岳や北海道で野鳥観察をしてきました。鳥の撮影も趣味のひとつです。

Q数学的思考によって物事の見方は変わりましたか?

A

複数の角度から物事を見て、複数のプロセスで結果を導き出す方法を考えるようになりました。主観と客観、それぞれの視点で現状をとらえたり、自分自身も他の人もいろいろな角度から見つめ直してみたり…。災害復興ボランティアの活動でも、事前にシミュレーションをして計画を立てると、“やるべきこと”がずっと楽しくなります。数学に限らず、“考えること”が僕のエンタメなんでしょうね。名城大学の自由に考え、行動できる雰囲気はとても気に入っています。ずっと続けている数学の考察が、いつの日か僕の経験した様々なこととリンクして、何かの形となって花開く…そんな予感も含めて、日々を楽しんでいます。

理工学部 電気・電子工学科 3年生 北川大慈(きたがわだいじ)さん

神奈川県横須賀市で生まれ、5歳のころから愛知県で暮らしている。もともとは海が好きだったが、後に森や野鳥にも関心を持つようになった。お気に入りの野鳥はシマエナガやヒヨドリ。自身の性格については、集中すると周りが見えなくなり、一度決めたことを後から変えるのが苦手なちょっと融通のきかないタイプ、と自己分析している。

>ボランティア協議会活動「静岡県磐田市災害復興支援ボランティア」