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成果報告

事業概要

本事業では“カーボンナノチューブ発祥の地”である名城大学のナノ材料研究の伝統をベースに、飯島澄男終身教授の研究グループを中心に新規ナノ材料の開拓と創製に関する世界レベルの基礎研究を全学体制のもとで進める。成果をホームページ、模擬講義等、様々な媒体で広報し、本学の将来ビジョン「『学びのコミュニティ』を創り広げる」を実現するために掲げる研究ミッションを推進することで「世界の名城大」ブランドを構築する。

事業目的

本事業では、新規ナノ材料の開拓と創製を通じた戦略的なブランディングにより、本学のブランド力を高め、広い視野をもった質の高い意欲的な入学者を獲得し、本学伝統のナノ材料研究を世界最高水準に発展させ、世界的な研究拠点を構築する。同時に本学の将来ビジョン「『学びのコミュニティ』を創り広げる」にならい、学問の探求と理論の応用による成果を教育と社会に還元する。さらに平成28年度選定事業「青色LEDを起点とする新規光デバイス開発による名城大ブランド構築プログラム」との協奏的ブランディングを推進し、「世界の名城大」のブランド構築を行うことを目的とする。

事業成果

平成29年度事業成果

平成29年度事業に選定され次第、直ちに研究拠点となるナノマテリアル研究センターを立ち上げ、研究装置として、AFMラマン装置とアークプラズマ成膜装置を購入し、高度なナノ解析を進めるための研究基盤形成の環境整備を進めた。このことは平成29年12月31日 中日新聞朝刊第一面にて「名城大にナノ材料拠点」と大きく報じられ、その注目度の高さが示された。併せて、ホームページを開設し、情報発信を進めた。平成28年度選定事業である「青色LEDを起点とした新規光デバイス開発による名城大ブランド構築プログラム」と合同で一般向け公開シンポジウム「世界を変えるナノ材料・光デバイス」を開催し、ナノマテリアル研究センターの飯島澄男名誉センター長による講演の他、事業概要や今後の活動等の報告を行っている。当該年度の補助金使用状況は、研究費(AFMラマン装置、アークプラズマ成膜装置他設備関係、備品、国内学会旅費、特補アルバイト等)に90,968千円、広報費(ホームページ開設費、シンポジウム開催経費、CNT展示備品等)に4,448千円の計 95,416千円となった。   

平成30年度事業成果

前年度に創設したナノマテリアル研究センターへ平成30年度の学内公募にて選定したデリベーション研究を加え、学内のナノ材料研究者を集結し、またAFMラマン装置とアークプラズマ成膜装置の活用により、効率的かつ集中的にそして強力にナノ材料研究を推進することができた。具体的な成果として、放射線を用いてSWCNT成長中の触媒の化学結合状態を分析し、世界初のSWCNT成長中の触媒粒子のXAFS測定を行った他、新規貴金属酸化物ナノシートの合成やD15C5と酸化物ナノシートの複合化に成功する等が挙げられる。これらの成果は国内外の学会等において、基調講演・招待講演20件、学術論文12件での報告に加え、特許を2件申請する等、確実に実績を積み上げている。ブランディング面では、公開シンポジウム「世界を変える新材料」開催の他、学内の認知度を高めるためにPRブースの設置や近隣自治体における市民連携講座や高校での模擬授業、イノベーション・ジャパンへの出展等を積極的に行った。またナノ材料研究に携わる研究者や学生、大学院生らによるナノマテリアルセミナーを年度中9回も開催した。高校生を対象とした調査に基づく「関心を持った大学2019」では本学が3年連続中部圏1位となり、東海圏の枠を越え、北信越地域でも存在感を示している。当該年度の補助金使用状況は、研究費(赤外分光度計他備品、窒素ガス等、学会旅費、PD給与等)に22,546千円、広報費(PRブース設置費、シンポジウム開催経費他)に2,174千円の計 24,720千円となった。アメリカ、ロシア、インドへ赴き、海外の大学や研究機関での研究機会も多く、当該事業の国際化が加速されている。

令和元年度事業成果

ナノカーボンに関する研究では、カーボンナノチューブの成長過程解明のため、X線吸収分光(XAFS)法による、高速“その場”測定手法の開発を進めた。また、細径単層カーボンナノチューブ膜の直径制御や大面積化の研究にも一定の成果が得られた。酸化物ナノチューブに関する研究では、酸化鉄や酸化チタンナノチューブの合成に成功し、酸化鉄ナノチューブへのLiイオンドーピングや酸化チタンナノチューブの混晶化に成功した。さらに2次元材料の一つである六方晶窒化ホウ素の合成を行い、数十マイクロメートルスケールの大ドメインサイズの試料作製に成功した。これらの成果は学会発表件数60件、基調講演・招待講演8件、学術論文13件、特許申請2件に表されるとおり、事業の加速度が増している。ブランディング面では、大学主催の公開シンポジウムは新型コロナウイルス感染症拡大のため中止としたが、ナノマテリアル研究センターでは「先端ナノカーボン材料国際シンポジウム」他、ナノマテリアルセミナー等を継続的に行った。高校生向けには、全国の理系希望の生徒に当該事業に関するDMを発送し、認知度向上のための活動も行った。さらに名城大学では、大学の有する研究シーズを広く発信することを目的に「名城大学テクノフェア2019」を開催(令和元年8月27日)し、800人が来場している。特にこの年度では、上海大学(中国)他、海外の大学との共同研究やデンプ人文科学大学(インド)との学部間協定を締結する等、昨年度以上に国際化を推進した。当該年度の補助金使用状況は、研究費(SJT1000度加熱チャンバー他備品、塩酸等、学会旅費、PD給与等)に35,830千円、広報費(DM制作・発送、シンポジウム開催経費他)に2,774千円の計 38,604千円となった。

今後の事業成果の活用・展開

本事業は令和3年度末までが文部科学省からの補助事業とされていたが、平成30年度の政策の見直しにより、令和元年度末を以って補助事業は終了となった。これを踏まえ、補助事業終了後の本事業の継続について大学内で検討を進めた結果、申請時予算を縮小して、当初計画の最終年度である令和3年度までの事業を継続することとした。これにより、当初の事業計画をこれまでの成果や実績等も含め、見直しを図った上でこの後、2年間の事業を展開していく。
令和2年度については、引き続き、ナノマテリアル研究センターを中核に効率的・集中的そして強力に新規ナノ材料の開拓と創製を進める。基礎物性に関しては、前年度から継続する研究として、カーボンナノチューブの成長メカニズム解明と構造制御や酸化物ナノチューブと酸化物ナノシートの新規開拓に取り組む。この他、グラフェンの低温成長やナノ材料研究への機械学習の応用等にも取り組みたい。応用に関する研究としては、電極応用に向けた酸化物ナノチューブと酸化物ナノシートへのドーピングによる電子構造制御と触媒能評価を前年度に引き続き、取り組む。研究にあたっては、国内外の研究機関と連携し、国際連携拠点としての役割をより強化したい。研究成果発表は学術論文発表件数、学会発表件数、受託研究・共同研究受入れ数を前年度より上回る達成目標を掲げたい。また、一般向けにはホームページ等で情報発信し、小・中・高校生向けには、よりわかりやすい手法でナノ材料の特異性、重要性を伝えたい。さらに国際的な知名度向上のためのブランディング活動として、新型コロナウイルス感染症の状況を慎重に見極めつつ、可能であれば国際交流シンポジウムも引き続き、開催したい。
令和3年度については、本プログラムの最終年度にあたることから、研究活動の集大成として、異なる次元構造を持つナノ材料から成るナノ構造複合体の作製を実現したい。また、画像処理技術を発展させ、「研究成果の見える化」も実現したい。研究成果発表は学術論文発表件数、学会発表件数、受託研究・共同研究受入れ数を前年度より上回る達成目標を掲げる。また、これまでの取り組みに加え、最終年度につき、一般に広く公開されたナノ材料に関するシンポジウムを開催し、この事業の成果を広くアピールしたい。小・中・高校生向けの模擬授業等は、この事業が日本の将来を支える人材育成においても重要であることから、継続したい。さらに5年間取り組んできた成果を基に、名城大学の在学生・卒業生を通じての本学のブランド力向上を図り、同時に本学卒業生が高い研究能力を活かして、国際的に活躍することで「研究の名城大」「世界の名城大」というブランドイメージの構築を目指す。そのために平成28年度選定事業「青色LEDを起点とした新規光デバイス開発による名城大ブランド構築プログラム」と協力し、ホームページやショールームの大学の恒久的な施設・制度として活用できる仕組みを構築する必要がある。