中国、台湾、韓国、イタリアなどから集まった留学生と日本人学生が、半田のまちを歩きながら見つけたのは、「地域」と「世界」がつながる発酵文化の奥深さでした。
2026年5月9日、名城大学外国語学部・国際化推進センターによる「学びのコミュティ創出支援事業」、「日本語学習支援を通した多文化協働フィールドワーク・プログラム」(担当:神谷、へバ、藤原、鈴村)の一環として、愛知県半田市を訪問しました。当日は、外国語学部の学生11名、多様な国・地域からの留学生26名、教員3名の計40名が参加し、半田赤レンガ建物、酒の文化館、半田運河、MIZKAN MUSEUMを巡りました。
多文化の視点で地域を歩く
本プログラムは、名城大で学ぶ留学生と日本人学生が協働しながら、多文化理解と探究的な学びを深める取り組みです。教室での日本語学習に加え、実際に地域へ出かけ、異なる文化的背景をもつ学生同士が同じ場所を見て、語り合い、発見を共有することを大切にしています。
今回のテーマは「愛知の発酵文化」。半田市は、古くから醸造業が発展してきた地域です。学生たちは、午前に半田赤レンガ建物、酒の文化館、半田運河周辺を見学し、午後にはMIZKAN MUSEUMを訪問しました。
見学先では、日本人学生が展示の内容を留学生に補足したり、留学生が自国・地域の食文化と比べながら質問したりする姿が見られました。ビール、日本酒、酢という身近な食文化を入り口に、それぞれの国や地域にある発酵食品、飲料、調味料の話題へと自然に会話が広がっていきました。
半田赤レンガ建物で知る、近代産業と世界のつながり
最初に訪れた半田赤レンガ建物では、明治時代に建てられたカブトビール工場の歴史に触れました。1898年に誕生したこの建物は、半田を代表する近代化産業遺産であり、かつてこの地でビール醸造が行われていたことを今に伝えています。
ビールは、日本の近代化の中で広がった飲み物であり、その背景にはドイツをはじめとする海外の醸造文化との関わりがあります。赤レンガの建物を前に、学生たちは、日本の地域産業が海外の技術や文化を取り入れながら発展してきたことを学びました。
半田のまちに残る建築物を見学することで、歴史は教科書の中だけにあるものではなく、現在の地域景観の中にも息づいていることが感じられます。留学生にとっては、日本の近代化を地域の具体的な場所から知る機会となり、日本人学生にとっても、身近な愛知の産業史を世界との関係から捉え直す時間となりました。
酒の文化館で触れる、日本酒文化の広がり
続いて訪れた酒の文化館では、日本酒造りの歴史と職人の技に触れました。館内には、伝統的な酒造りの道具や資料が展示されており、知多地域に受け継がれてきた酒造文化を具体的に知ることができます。
日本酒は、米、水、麹、酵母が生み出す日本独自の発酵文化です。一方で、近年は海外でも日本食とともに関心が高まり、国境を越えて楽しまれる存在になっています。酒の文化館での見学は、地域の酒造りが、国内だけで完結するものではなく、世界に広がる日本文化の一部でもあることを考えるきっかけとなりました。
ここでは、展示を見ながら「自分の国にも似た発酵飲料がある」「米からお酒をつくる工程が興味深い」といった比較の視点が生まれました。日本酒を一つの文化として説明することは、日本人学生にとっても簡単ではありません。だからこそ、留学生からの質問を通して、当たり前だと思っていた日本文化を言葉にして伝える学びが生まれていました。
MIZKAN MUSEUMで考える、酢づくりと世界の食卓
午後に訪れたMIZKAN MUSEUMでは、酢づくりの歴史や、ものづくりへのこだわり、食文化の魅力を体験的に学びました。半田の運河沿いに発展した酢づくりは、地域の歴史と深く結びついています。
酢は、日本の食文化を支える調味料であると同時に、世界各地の料理にも欠かせない存在です。ミツカンは米酢など日本の食文化に根ざした商品に加え、イタリア発祥のバルサミコ酢など世界の食文化に関わる製品も展開しています。半田で育まれた酢づくりを学ぶことは、日本の発酵文化が世界の食卓とどのようにつながっているのかを考えることでもありました。
館内では、酢がどのように作られ、どのように食文化と結びついてきたのかを、展示や体験を通して知ることができます。留学生と日本人学生が同じ展示を見ながら、それぞれの国・地域の料理や調味料について話す場面もありました。酢という一つの素材を通して、食文化の多様性と共通性の両方が見えてきます。
発酵文化がつなぐ、地域と世界
今回のフィールドワークの魅力は、発酵文化を知識として受け取るだけでなく、多文化の視点から見つめ直した点にあります。半田赤レンガ建物ではドイツをはじめとする海外の醸造文化との関わりを、酒の文化館では日本酒ブランドの広がりを、MIZKAN MUSEUMでは酢づくりと世界の食文化とのつながりを考えました。
ビール、日本酒、酢。いずれも半田や愛知の歴史と結びついた文化でありながら、その先には世界があります。留学生と日本人学生がともに歩き、同じ展示を見て、互いの言葉で感想を交わすことで、地域文化はより立体的に見えてきました。
発酵とは、時間をかけて素材のよさを引き出し、新たな価値を生み出す営みです。今回のフィールドワークもまた、異なる言語や文化をもつ学生たちが出会い、対話を重ねることで、学びを少しずつ豊かにしていく時間となりました。この経験を出発点に、参加学生が今後も地域を歩き、多様な背景をもつ仲間と語り合いながら、日本と世界をつなぐ新たな学びを広げていくことが期待されます。
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