2026.08.09

愛知を歩き、手でふれる:多文化協働フィールドワーク(2)

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外国語学部

中国、台湾、韓国、イタリアなどから集まった留学生と日本人学生が、今度は自分たちで行き先を決め、切符を買い、愛知の各地へ出かけました。絞り染め、ろくろ、あんまき----手を動かしながら見つけたのは、地域文化の奥にある人と歴史の厚みでした。

2026年5月28日から6月7日にかけて、名城大学外国語学部・国際化推進センターによる「学びのコミュニティ創出支援事業」、「日本語学習支援を通した多文化協働フィールドワーク・プログラム」(担当:神谷、ヘバ、藤原、鈴村)の一環として、フィールドワーク(2)を実施しました。留学生27名と日本人学生9名の計36名が、4人一組(留学生3名+日本人学生1名)の9グループに分かれ、それぞれが選んだ愛知県内の調査地を訪れました。

今回は、学生が計画するフィールドワーク

5月9日に実施したフィールドワーク(1)では、参加者全員が貸切バスで半田市を訪れ、愛知の発酵文化を学びました(記事は以下リンク参照)。2回目は、そこから大きく形を変えています。

行き先を決めるのも、「問い」を立てるのも、経路を調べるのも、現地に予約の電話を入れるのも、すべて学生自身。各グループは事前に調査計画書を作成し、テーマと調査方法、移動経路、経費の見積もりまでを自分たちで組み立てました。移動手段は公共交通機関のみ。名鉄、地下鉄、あおなみ線、愛知環状鉄道、リニモを乗り継いで、9つのグループが県内各地に散っていきました。

手でふれる伝統工芸——有松絞り、瀬戸焼、七宝焼

3つのグループが、愛知に受け継がれてきた工芸の制作体験に挑みました。

有松を訪れたグループは、絞会館で絞り染めを体験し、そのあと職人の方に直接お話をうかがいました。報告書には、「実際に作業を体験し、模様を作る難しさや手仕事ならではの魅力を実感した」と記されています。同時に、現代の有松絞りが文化を広めるためにどのような取り組みをしているかも学び、「この伝統を守るために私たちにできることは何か」を次の課題として持ち帰りました。

瀬戸のグループは、瀬戸蔵ミュージアムと愛知県陶磁美術館をめぐり、粘土から器を作りました。「瀬戸の土地は焼き物に適した特有の土が豊富で、焼き物文化が栄えた」「かつては住宅が並ぶように焼き物を焼く建物があり、町中が煙だらけだった」「職人たちも泊まり込みで働き、建物の2階部分が寝床だった」——展示から読み取った暮らしの細部が、報告書にていねいに書き留められていました。実際にろくろを回してみると、「土の厚さを均等にするのがかなり難しかった」。日常的に見ていた「せともの」が、いくつもの手数の上に成り立っていることを、指先で確かめた時間でした。

あま市の七宝焼ふれあい伝承館を訪れたグループは、金属の下地に釉薬をのせて焼き上げる尾張七宝の制作を体験しました。金属工芸や琺瑯(ほうろう)に似た技法は世界各地にありますが、色を線で区切って生み出す七宝の緻密さは、多くの留学生にとって初めて出会う表現だったようです。

食文化をたどる——八丁味噌、ういろう、鬼まんじゅう、あんまき

4つのグループが、愛知の食文化をテーマに選びました。

岡崎を訪れたグループは、八丁味噌の工場を見学し、試食をしました。フィールドワーク(1)で学んだ半田の酢や酒とも重なる「発酵」のテーマが、ここでもう一度、別の土地の物語として立ち上がってきます。

名古屋市内をめぐったグループの一つは、ういろうを追いかけました。老舗の店舗を大須と名古屋駅の2か所で訪ね、「和・洋さまざまなフレーバーが売られている」「アニメとコラボした商品を展開している」「カフェメニューもある」といった、伝統菓子の現在進行形の姿を記録しています。和菓子と洋菓子を組み合わせた商品が人気を集めていることに注目し、「自分たちで新しい商品を考えるとしたら」という次の問いへ進もうとしています。

もう一つのグループは、鬼まんじゅうをテーマに市内の複数の店を食べ歩きました。「店ごとにそれぞれ特徴があり、使われている芋や素材によって味や食感が変わる」「戦時中・戦後の食糧難のなかで作られた家庭料理が商品化されて、今の形になった」「名前の由来は、芋の角の部分が鬼の角のように見えるから」。さらに、和菓子は保存が難しく、その日のうちに作るしかないという事情から、「他の地域では同じものは作れない」ことに気づきます。そこから生まれた振り返りが印象的でした。

鬼まんじゅうを他国で売ったらどのような評価になるのか、というのも今後の展望です。和菓子は保存が難しく輸送ができないため、かえって「その国らしさの鬼まんじゅう」ができる可能性があると考えています。

地域の菓子を「持ち出せないもの」として捉え直したうえで、それぞれの土地で作り直される姿を構想する——多文化のメンバーで歩いたからこそ出てきた発想だと言えるでしょう。

知立のグループは、老舗和菓子店であんまき作りを体験しました。あんまきの作り方や味・形の違い、知立におけるあんまきの歴史、他の和菓子との違い、そして知名度まで、体験後の質問タイムでていねいに聞き取っています。

ものづくりの現場へ——リニア・鉄道館、トヨタ博物館

産業をテーマに選んだグループもありました。

金城ふ頭のリニア・鉄道館を訪れたグループは、新幹線からリニアに至る鉄道技術の歩みをたどりました。高速鉄道は多くの国で人々の移動を支えており、留学生にとっても自国の鉄道と比べながら見られる展示です。

長久手市のトヨタ博物館を訪れたグループは、クルマ館と文化館の二館を見学しました。「日本をはじめとした世界の自動車産業の歴史や軌跡の数々が展示されていた」「自動車だけでなく人力車も展示されていた」と、移動手段そのものの歴史へと視野を広げています。振り返りには、「実地調査だけでは把握できない情報もあると思うので、今後インターネットや著書で情報集めを積極的にしたい」との一文があり、現地で見ることと文献で確かめることを往復させようとする姿勢がうかがえました。

うまくいったことも、いかなかったことも

学生の報告書には、成果だけでなく、当日の手ざわりがそのまま残されています。あんまき体験をしたグループは、こう書いていました。

調査や体験自体はスムーズに進み、みな満足する結果を得られました。しかし、そこに至るまでに時間がかかりすぎたことや、足並みがなかなか揃わなかったことから、みんなを上手くまとめることが今後の課題だと感じました。

言語も文化的背景も異なる4人で、日程を合わせ、役割を決め、当日の行程を組む。その過程には当然、うまく進まない時間もあります。それを「課題」として言葉にできたこと自体が、このプログラムの大きな成果の一つです。教員が引率した1回目とは違い、2回目は段取りの難しさごと学生に委ねられていました。

地域を歩いて、世界を考える

9グループが訪れた先を並べてみると、愛知という土地の幅の広さが見えてきます。染めもの、焼きもの、金属工芸。味噌、和菓子、郷土菓子。鉄道、自動車。どれも愛知に根ざした地域資源でありながら、その先には必ず世界とのつながりがあります。

そして今回のフィールドワークで学生が持ち帰ったのは、展示の知識だけではありませんでした。模様を作る手の難しさ、土の厚みを揃えられなかったもどかしさ、その日のうちにしか食べられない菓子のはかなさ、そして予定どおりに進まなかった一日の段取り。手を動かし、迷いながら歩いたからこそ残る学びです。

これらの成果は、この後のポスター発表会で各グループが発表します。留学生と日本人学生が、それぞれの言葉で愛知の地域資源を語り直す時間になるはずです。地域を歩き、仲間と語り合いながら、日本と世界をつなぐ学びがさらに広がっていくことを期待しています。