2026.08.10

自分たちの言葉で愛知を語る:多文化協働フィールドワーク成果発表会

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外国語学部

半田を歩き、県内各地へ出かけた学生たちの学びは、最後に9枚のポスターになりました。鉄道、味噌、絞り染め、和菓子----それぞれのグループが立てた「問い」をもとに、留学生と日本人学生が調査の成果と自分たちなりの考察を伝え合いました。

2026年7月16日(木)5限に名城大学外国語学部・国際化推進センターによる「学びのコミュニティ創出支援事業」の一環として「日本語学習支援を通した多文化協働フィールドワーク・プログラム」(担当:神谷、ヘバ、西田、藤原、鈴村)の最終発表会を実施しました。上級日本語クラスの留学生と藤原ゼミの日本人学生からなる9グループが、A0サイズのポスターを使って調査の成果を発表しました。

いざ、発表!

発表はポスター形式です。教室内に3つのブースを設け、3グループが同時にスタート。発表15分、質疑応答5分の計20分を3セッション繰り返しました。聞き手は他のグループの学生で、相互評価表に記入しながらまわります。

前週の7月9日には、合同練習の回を設けました。ポスターのアウトラインから発表原稿を起こし、誰がどこを話すかを確認し、グループ内で読み合わせをして時間を測る。声の大きさや視線、表情、原稿に頼りすぎず聞き手を見ながら話すことなども、互いに確認しました。留学生にとっては、調べた内容を日本語で整理し、聞き手の反応を見ながら15分間伝えるという、難度の高い課題です。それでも本番では、どのグループも自分たちの調査成果を最後までしっかりと伝えていました。

産業と技術の歩みをたどる——鉄道と自動車

リニア・鉄道館を訪れたグループは、「愛知県の鉄道の歴史と発展を理解する」ことを目的に、名古屋駅の年表を1886年の開業から現在まで一枚にまとめました。東海道本線の全通、新幹線の開通、国鉄の分割民営化、そしてリニア中央新幹線の準備へ。鉄道の安全を支える技術にも触れ、「鉄道が変えた日本社会」という視点から調査をまとめました。

トヨタ博物館のグループは、1939年のパッカード・トゥエルブと1955年の初代トヨペットクラウンを対比させ、豪華なデザインの車と、日本人向けに実用性と安全性を突き詰めた車の違いを読み解きました。さらに、オイルショック期の省燃費化から、ハイブリッド車、水素関連技術、EVなど現在の多様な選択肢へと視野を広げ、トヨタが掲げる「マルチパスウェイ」の考え方についても考察しました。ナンバープレートの図柄制度にも注目し、「自動車が地域の人々の生活に深く溶け込んでいる実態が伝わってきた」とまとめていました。

伝統工芸を、次の世代へ

有松絞りのグループは、ポスターに「有松絞り、次の百年へ」と大きく掲げました。約400年の歴史と「縛る・縫う・折る」という技法を紹介したうえで、有松絞りが今どうPRされているか——ファッションブランドとのコラボレーション、絞りまつりの開催、大学との産学連携、体験教室——を調べ上げます。そのうえで、自分たちならどうするか。ライブ配信、ゲームとのコラボ、デジタルアーカイブ、街の中心地への専門店、建築や空間デザインへの展開。伝統を「守る」だけでなく「広げる」提案が並びました。

瀬戸焼のグループが立てた問いは、「瀬戸焼の将来は?」。採土から製土、装飾、製成までの工程を図解し、現地でお会いした作り手へのインタビューを紹介しました。茶道を通じて陶器に興味を持ったこと、教育機関の先生や学生から学んだこと、そして「若者に興味を持ってほしい」という言葉。自分たちが粘土に手を入れた体験と重ねながら、瀬戸焼のこれからを考えました。

尾張七宝のグループは、「なぜ花鳥風月の意匠が多く見られるのか」という問いに絞って調査しました。明治期の輸出や万国博覧会、有線七宝の繊細な技法などを調べ、海外に向けて示されてきた「日本らしさ」とデザインとの関係を考察しました。制作体験については、「意外と取り組みやすかった」「難しいけれど面白い」と感想が分かれました。同じ体験をしても受け止め方は違う——その違いも、そのままポスターに残されていました。

食文化を、データと比較で

食をテーマにした4グループは、そろって独自の調査データを用意してきました。

八丁味噌のグループは、日本人学生と留学生それぞれ10人に、「味噌」から連想する言葉をマインドマップで書いてもらいました。今回の調査では、愛知県出身の回答者の90%が八丁味噌を知り、80%が「好き」と答えた一方、「よく食べる」と答えた人は30%でした。「知っていること」と「日常的に食べること」は必ずしも同じではない——現地見学だけでは見えてこなかった側面に注目しました。

ういろうのグループは、67名へのアンケートと検索動向のデータを組み合わせ、「ういろうを、若い世代にとってもっと身近なスイーツにするには?」という問いを立てました。アンケートでは、回答者の92.5%が「ういろうをモチーフにしたスイーツを見たことがない」と回答。そこで、パフェのトッピングにする、タピオカの代わりに使う、どら焼きのあんこと組み合わせるなど、新しい食べ方を提案しました。「伝統を大切にしながら、新しい食べ方を取り入れる」というのが、このグループの結論です。

鬼まんじゅうのグループは、愛知の郷土菓子を世界の中に置き直しました。台湾の地瓜籤糕、韓国のコグマポムボク、イタリアのカスターニャッチョを取り上げ、さつまいもや栗を使う点、素朴な甘さという共通点と、米粉を使う・焼き菓子であるといった相違点を色分けして整理。戦中戦後の食糧難から生まれた家庭の菓子が名物になった道筋をたどり、「海外でも人気になる可能性がある」と結びました。

あんまきのグループは、知立が稲作に適さず小麦と小豆の産地だったこと、名鉄の開通で知名度が上がったことなど、地形と交通から名物の成立を説明しました。「どら焼きとの一番の違いは?」という問いに、卵入りのふわふわ生地と卵なしのもっちり生地、と老舗での聞き取りをもとに答えます。ポスターの隅には、制作体験に参加した留学生の感想も並びます。「思ったよりおいしい」「上手く形を整えにくかった」「自分で作ってみて良かった」。調べた情報だけでなく、自分たちで作り、食べた経験も発表の一部になりました。

春学期の学びが、一枚になる

4月にグループを組み、5月に半田を歩き、6月に自分たちで愛知の各地へ出かけ、7月にポスターにまとめる。9枚のポスターには、春学期に積み重ねてきた学びが、それぞれの形で凝縮されています。

並べてみると、どのグループも現地で見聞きしたことで終わらせていないことがわかります。アンケートを取り、他国の似た文化と比べ、作り手に将来を尋ね、そして「自分たちなら何ができるか」まで書いている。留学生3名と日本人学生1名という編成だからこそ、「これは日本だけのものではないかもしれない」という視点が自然に入ってきたのだと思います。

そして何より、留学生は日本人学生とともに、15分間の発表を日本語で行い、聞き手からの質問にも答えました。教室で学んだ日本語が、地域を歩く道具になり、最後は自分の考えを伝える言葉になる。このプログラムが目指してきた多文化協働の学びが、9枚のポスターと学生たち自身の言葉として形になった一日でした。参加した学生のみなさん、おつかれさまでした。