2026.08.09

自分たちの言葉で愛知を語る:多文化協働フィールドワーク成果発表会

  • #イベント
  • #ゼミ
  • #一生の宝物!
  • #国際交流
  • #学んだ!
  • #留学生
  • #研究室だより

外国語学部

半田を歩き、県内各地へ出かけた学生たちが、最後にたどり着いたのはA0サイズのポスター9枚でした。鉄道、味噌、絞り染め、和菓子----それぞれが立てた「問い」に、留学生と日本人学生がともに答えを出した90分です。

2026年7月16日(木)5限、ナゴヤドーム前キャンパスDS102教室で、名城大学外国語学部・国際化推進センターによる「学びのコミュニティ創出支援事業」、「日本語学習支援を通した多文化協働フィールドワーク・プログラム」(担当:神谷、ヘバ、藤原、鈴村)の最終発表会を実施しました。上級日本語クラスの留学生と藤原ゼミの日本人学生からなる9グループが、ポスターを使って調査の成果を発表しました。

いざ、発表!

発表形式はポスター発表です。教室内に3つのブースを設け、3グループが同時にスタート。発表15分、質疑応答5分の計20分を3セッション繰り返しました。聞き手は他のグループの学生で、相互評価表に記入しながらまわります。

前週の7月9日には、合同練習の回を設けました。ポスターのアウトラインから発表原稿を起こし、誰がどこを話すか役割を確認し、グループ内で読み合わせをして時間を測る。練習では、声の大きさ、視線や表情、そして「原稿をできるだけ読んでいないように見せる」といった点を確認し合いました。留学生にとっては、専門的な内容を日本語で、聞き手の顔を見ながら話すという、かなり負荷の高い課題です。それでも本番では、どのグループも堂々と話しきりました。

ものづくりの現場から——鉄道と自動車

リニア・鉄道館を訪れたグループは、「愛知県の鉄道の歴史と発展を理解する」ことを目的に、名古屋駅の年表を1886年の開業から現在まで一枚にまとめました。東海道本線の全通、新幹線の開通、国鉄の分割民営化、そしてリニア中央新幹線の準備へ。鉄道の安全を支える技術にも触れ、「鉄道が変えた日本社会」という視点で結論を示しました。

トヨタ博物館のグループは、1939年のパッカード・トゥエルブと1955年の初代トヨペットクラウンを対比させ、豪華なデザインの車と、日本人向けに実用性と安全性を突き詰めた車の違いを読み解きました。オイルショック期の「低燃費」から現在のハイブリッド・水素・EVという「マルチパスウェイ戦略」へ、歴史の教訓を活かした慎重な選択がトヨタの底力だ、というのが彼らの結論です。ナンバープレートの図柄制度にも注目し、「自動車が地域の人々の生活に深く溶け込んでいる実態が伝わってきた」とまとめていました。

伝統工芸を、次の世代へ

有松絞りのグループは、ポスターに「有松絞り、次の百年へ」と大きく掲げました。約400年の歴史と「縛る・縫う・折る」という技法を紹介したうえで、有松絞りが今どうPRされているか——ファッションブランドとのコラボレーション、絞りまつりの開催、大学との産学連携、体験教室——を調べ上げます。そのうえで、自分たちならどうするか。ライブ配信、ゲームとのコラボ、デジタルアーカイブ、街の中心地への専門店、建築や空間デザインへの展開。伝統を「守る」だけでなく「広げる」提案が並びました。

瀬戸焼のグループの問いは、ずばり「瀬戸焼の将来は?」。採土から製土、装飾、製成までの工程を図解し、現地でお会いした作り手へのインタビューを紹介しました。茶道を通じて陶器に興味を持ったこと、教育機関の先生や学生から学んだこと、そして「若者に興味を持ってほしい」という言葉。自分たちが粘土に手を入れた体験と重ねながら、瀬戸焼のこれからを考えました。

尾張七宝のグループは、「なぜ花鳥風月のデザインが多いのか」という一点に絞って調べました。明治期に外貨獲得の手段として輸出され、万国博覧会で高く評価されたこと。有線七宝という繊細な技法が発達したこと。日本らしさを表すデザインが国内外で求められてきたこと。制作体験の感想は「意外と簡単」と「難しいけど面白い」で分かれ、その差もそのままポスターに載せていました。

食文化を、データと比較で

食をテーマにした4グループは、そろって独自の調査データを用意してきました。

八丁味噌のグループは、日本人学生と留学生それぞれ10人に「味噌」からの連想をマインドマップで書いてもらいました。結果、愛知県出身者の90%が八丁味噌を知り、80%が好きと答えたのに対し、「よく食べる」は30%。「知ってはいるが食べることは少ない」「『味噌』と聞いて八丁味噌を思い浮かべる人はまだ多くない」という、現地見学だけでは出てこない結論にたどり着きました。

ういろうのグループは、67名へのアンケートと検索データを組み合わせ、「若者にあまり食べられていないういろうを、もっと身近なスイーツにするには?」という問いを立てました。「ういろうをモチーフにしたスイーツを見たことがない」人が92.5%という数字を出発点に、パフェのトッピングにする、タピオカの代わりに使う、どら焼きのあんこと混ぜる、といった案を提示。「伝統を大切にしつつ、新しい食べ方を取り入れる」という提案でまとめました。

鬼まんじゅうのグループは、愛知の郷土菓子を世界の中に置き直しました。台湾の地瓜籤糕、韓国のコグマポムボク、イタリアのカスターニャッチョを取り上げ、さつまいもや栗を使う点、素朴な甘さという共通点と、米粉を使う・焼き菓子であるといった相違点を色分けして整理。戦中戦後の食糧難から生まれた家庭の菓子が名物になった道筋をたどり、「海外でも人気になる可能性がある」と結びました。

あんまきのグループは、知立が稲作に適さず小麦と小豆の産地だったこと、名鉄の開通で知名度が上がったことなど、地形と交通から名物の成立を説明しました。「どら焼きとの一番の違いは?」という問いに、卵入りのふわふわ生地と卵なしのもっちり生地、と老舗での聞き取りをもとに答えます。ポスターの隅には、体験した留学生の感想がそのまま並んでいました。「思ったよりおいしい」「上手く形を整えにくかった」「自分で作ってみて良かった」。

半年間の学びが、一枚になる

4月にグループを組み、5月に半田を歩き、6月に自分たちで愛知の各地へ出かけ、7月にポスターにまとめる。9枚のポスターは、その半年をそれぞれのやり方で一枚に畳んだものです。

並べてみると、どのグループも現地で見聞きしたことで終わらせていないことがわかります。アンケートを取り、他国の似た文化と比べ、作り手に将来を尋ね、そして「自分たちなら何ができるか」まで書いている。留学生3名と日本人学生1名という編成だからこそ、「これは日本だけのものではないかもしれない」という視点が自然に入ってきたのだと思います。

そして何より、留学生が日本語で15分間、自分の調べたことを聞き手に向かって語りきりました。教室で学んだ日本語が、地域を歩く道具になり、最後は自分の考えを伝える言葉になる。このプログラムが目指してきたことが、この日の教室に形になりました。参加した学生のみなさん、おつかれさまでした;)。