映画 チョコレートな人々 上映会&特別対談

多様な働き方を学び、人と人とのつながり方をともに考える

ゼミナール 多様な働き方デザインから考えるコミュニケーション教育プロジェクト

2026年2月28日、ナゴヤドーム前キャンパスで「映画 チョコレートな人々 上映会&特別対談〜QUONチョコレート×名城大学外国語学部生〜」が開催されました。
企画したのは、外国語学部 宮崎新ゼミの「多様な働き方デザインから考えるコミュニケーション教育プロジェクト」のメンバーのみなさん。日頃から“コミュニケーション”について探究する学生たちが、どのようにイベントをつくり上げ、なにを学んだのかレポートします。

お話を聞いた人たち
外国語学部宮崎ゼミの4年生(イベント開催時は3年生)
石黒碧海、稲宮翔那、浦尾心愛、岡来美、金林萌愛、川崎綾音、鬼頭尚子、松井帆奈美、矢野雄己 ※五十音順

PROJECT SUMMARY

どんなプロジェクト?

学びのコミュニティ創出支援事業のひとつとして実施されたこのプロジェクトは、さまざまな働き方のデザインを通して、社会参加のあり方や、人と人との関わり方についての知見を深めることを目的としたもの。上映会だけでなく、その前段の学習として、東京都の「分身ロボットカフェDAWN ver.β」と「スターバックスコーヒーnonowa国立店」の見学もしました。

WHAT WE LEARNED #01

ロボット、手話。東京で間近にした働き方のデザイン

事前学習で訪れた「分身ロボットカフェDAWN ver.β」と「スターバックスコーヒーnonowa国立店」は、いずれも特徴的な働き方のデザインを実現している店舗です。「分身ロボットカフェDAWN ver.β」では、それぞれの事情で外出できない人たちが、OriHimeというロボットを遠隔操作してお客様をもてなしています。新しいテクノロジーデザインの力によって、社会参加の可能性を広げている実践例です。他方で、「スターバックスコーヒーnonowa国立店」は、国内初の手話が共通言語となるサイニングストアとして2020年にオープン。聴覚に障がいのあるPTR(パートナー)さんが働き、手話を主なコミュニケーションの手段としています。

両店の見学に際し、メンバーは「どんな社会参加の形が生まれているのか」「人と人との物理的あるいは心理的な距離感はどのようなものか」といった視点で仮説を立てて臨みました。実際の働き方、コミュニケーションを目にして、なにを感じたのでしょうか。

<分身ロボットカフェDAWN ver.β を見学して>

・ ロボットを遠隔操作するパイロットの人たちのできることが、想像以上に多くて驚きました。コーヒーを淹れるバリスタの細かい作業、外国人のお客様向けの多言語対応、写真撮影によるロボットごしに見えている世界の共有。見学前は、外出できないマイナスをゼロに戻すのがロボットの役割だと考えていたけれど、このお店ならではのプラスのサービスができていると感じました。(矢野)

・ 最初は多少の違和感があったものの、パイロットの人が上手に会話を回してくれました。ロボットを介するやり取りには、いくつかのメリットがあると思います。外見などの情報がないので、先入観無しで気兼ねなく話しやすいと感じました。(岡)

・ 相手と自分の違いを意識しすぎず、フラットに話せるのが素敵でした。(川崎)

・ 外国人の利用が多く、日本人にはまだ身近ではない場所だと感じました。けれど実際に働く方々と会話をすると、その親しみやすさや挑戦する勇気に触れ、自分の先入観が一瞬で解けるような感覚を覚えました。多くの気づきが得られるため、ぜひ気軽に足を運んでみてほしいと思います。(稲宮)

<スターバックスコーヒーnonowa国立店 を見学して>

・ 手話でちゃんと伝わるか少し不安もありましたが、店内のボードやレジでの指さしなどを工夫しながら、障がいの有無に関係なくPTRさんとも楽しく会話することができました。(金林)

・スターバックスのようによく知られたお店がこのような活動をすることで、可能性を広げられる人がいると思います。(岡)

・ 初めて手話で「ありがとう」と伝えることができたのが嬉しかったです。(鬼頭)

・ 普段マジョリティとして生きることが多いですが、その場ではむしろマイノリティ側になっていました。自分がいかにマジョリティ側で生活しているかを痛感できた貴重な機会であったと思います。そんな中でもスムーズに注文ができたのは、聾者であっても健常者であっても等しくサービスを受けられる接客の構造が確立されていると感じられたからでした。(石黒)

ふたつの店舗へ足を運び、ロボットや手話の活用、仕組みと空間づくりの工夫による働き方の可能性の広がりを実感しました。テクノロジーによるデザインが、人それぞれにできること、できないことを補完する役割を果たしている。「こうした働き方のデザインが日常に溶け込めば、よりフラットにつながれる社会になるのでは」という声も聞かれました。

WHAT WE LEARNED #2

上映会とトークセッションで学びの輪を広げる

続けて、映画『チョコレートな人々』の上映会に向けた準備が進められます。この映画は、愛知県豊橋市の「久遠チョコレート」を取り巻く人たちの姿を切り取ったドキュメンタリー。障がいの有無にかかわらず、誰もが能力を発揮できる職場づくりに取り組む、創業者である夏目浩次(なつめ・ひろつぐ)さんの想いが映し出されています。プロジェクトのメンバーは、宮崎先生の紹介でこの映画と出会いました。

「福祉としての障がい者雇用ではなく、夏目さんの『どうすれば働く人それぞれが「プロ」として個性を活かせるか』という考え方は、このプロジェクトの趣旨と合致すると思いました」

「自分らしく誇りを持って働くにはどうしたらいいか。夏目さんが一人ひとりの方を見て、苦悩している様子が印象的でした」

そんな感想を抱きながら、夏目さんをゲストに招き、上映会とメンバーとの対談が企画されたのです。

イベントは「映画上映」「学生プレゼン」「トークセッション」の3部構成となりました。障がいのある人、お子様連れなど、さまざまな人が参加しやすいバリアフリーな環境を目指して、工夫をしたといいます。具体的には、サポート席の用意、日本語字幕付きの映像、音声ガイドアプリの利用など。当日は、学外の方を中心に89名が参加。来場者の方からは「すごく配慮がされていた」「細部までこだわりを感じた」との言葉をいただけました。

イベントの運営、自分たちの取り組みに関するプレゼン、夏目さんとのトークセッションなどの役割を担ったメンバーのみなさん。どんな学びがあったのか聞いてみると…

・ 夏目さんは、私たちが1聞けば100答えて、議論を深めてくださいました。「自分のやっていることを『すごいね』と言われるけれど、ただ人間関係をシンプルにしたい」「障がいの有無で感じる葛藤とシンプルに向き合ったら良い」という言葉が心に残っています。(岡)

・ 一緒に働く利用者さんの得意不得意や個性に合わせてお店をつくる。映画で見た夏目さんの考え方が、トークセッションでも垣間見えました。私たちや来場者の方々に対しても、思いを巡らせていた場面もありました。(稲宮)

・ 特定の人を特別視するのではなく、ひとりの人間として対等に接すること、相互に関係を築いていくことの大切さを教わり、凝り固まった考えをときほぐしてもらいました。(矢野)

・ 久遠チョコレートのお店は、古い木材を使った落ち着いた雰囲気で、手書きのメッセージがあちこちに添えられるなど温かみがあります。トークセッションでメッセージに込められた想いについてお伺いしましたが、それぞれに夏目さんの軸となる考え方が表れていました。メッセージについて語る姿からも、彼の人生観や人柄を感じることができました。(石黒)

・ トークセッションで、夏目さんのお話を聞くだけでなく、自分がどう感じたかをきちんと伝えたいと意識していました。その点を夏目さんに気づいて褒めていただけたのが嬉しかったです。(松井)

・ 夏目さんの「たくさん悩んでもがいた分だけ、人としての価値観や幅が広がり、豊かな人生になる」という言葉に共感できました。浮き沈みがあっても「自分の人生は良い人生だ」とおっしゃっていて、私もそういうマインドを見習いたいです。(浦尾)

夏目さんとの交流で、温かい人柄に触れつつ、生き方や人との向き合い方について多くの学びがありました。とりわけ「シンプル」という言葉にうなずくメンバーは多く、各々が自身の人との関わり方を省みる機会になったことがうかがえました。

WHAT WE LEARNED #03

“コミュニケーション”とはなにかを問い直す機会に

さらに、プロジェクトの概要やコミュニケーション学などについて紹介する「学生プレゼン」を担当したメンバーからはこんな話も。

・ プレゼン用のスライドの作成では、言葉の使い方を意識しました。例えば、「平等」という言葉に対して、受け手が持つ背景は人それぞれです。だからこそ、双方の捉え方が一致するとは限りません。これを見る人と同じ気持ちになれるように。他者との関係性を考えることがコミュニケーションだと私たちは考えています。言葉だけでなく、イラストや色合いなども何度も見直して、伝え方も何度も練習しました。今回の経験から、自分の言葉やツールの使い方の大切さを実感することができました。(岡)

・ 私たちが専攻するコミュニケーション学は幅広い学問です。一般的には“コミュニケーション”は「言葉のキャッチボール」という認識が強いですが、私たちはゼミで異なる捉え方をしています。短い時間でいかに私たちが研究している“コミュニケーション”について分かりやすくまとめ、認識を合わせるかが難しかったです。コミュニケーションを語る上で、欠かせない要素はなにかを改めて考える機会にもなりました。(松井)

今回のプロジェクトでの取り組みだけでなく、宮崎ゼミでの学習・研究がイベントで活かされ、さらに学びが深まったようです。「個性的で、時に嫉妬するほど魅力的なゼミのメンバーと日頃から刺激し合えていることが楽しい」と金林さんは言います。そんな仲間と一緒にチャレンジできるのは、とても素敵だと取材させていただき感じました。

NEXT STEP

一緒に考え続けることを大切に

多様な働き方のデザインについて、たくさんの人に伝える場づくりにも挑戦した宮崎ゼミのメンバー。今回の取り組みの成果と、この経験を今後どう活かせるかについても聞きました。

・ イベントが終わった後に、来場者の方同士でお話をしてくださっていました。今回の企画によって、参加者一人ひとりが考えるきっかけにできたのが一番良かったです。解決策をひとつ決めるよりも都度、考え続けることが大事だと伝えられたのを嬉しく思います。(岡)

・ プロジェクトの中でいかに自分の視点からしか物事を考えられていないか分かりました。異なる視点に触れて気づきを得ることで、当たり前と捉えていた日常が変わっていくのだと感じています。(松井)

・ 今回のプロジェクトを通して、ほんの少しの工夫や配慮でバリアを取り除くことができると学びました。今後は、自分の中の尺度や価値観だけで判断せず、相手の立場やさまざまな視点を意識しながら、誰も取り残さない関わり方を大切にしていきたいです。(川崎)

プロジェクトについて、メンバーそれぞれが自分の言葉で語ってくれました。自分たちが学んだことをイベントで発信した経験は、将来にも活きるものとなるでしょう。そして、イベントで生まれた、共に考える人の輪がこれからもつながっていくことを願っています。

学びのコミュニティ創出支援事業『多様な働き方デザインから考えるコミュニケーション教育プロジェクト』報告ページ

久遠チョコレート

 東海テレビドキュメンタリー『チョコレートな人々』 

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