育て達人第001回 池田 晋

市民に人気の総合講座

  土曜日午前の宝物  学生もぜひ活用を

理工学部 池田 晋 教授(前総合講座運営委員長)

市民開放講座として人気の高い理工学部総合講座が、今年度も定員(200人) を大幅に上回る受講希望の市民らを迎えスタートしました。リピーターも多い同 講座運営委員長である池田晋教授に、開講以来、四半世紀余に及ぶ講座への思い を語っていただきました。

――名城大理工学部の総合講座は1982年度からスタートしています。  開設の 狙いは何だったのでしょうか。

当時の理工学部は6学科。学生たちに専門授業以外にも目を向けさせ、自ら進んで受けてみようという雰囲気をつくろうと、知恵を出し合いました。学内教員による最先端のトピックスを盛り込んだ授業だけでなく、学外の第一線で活躍する企業人から芸術家までを講師に迎え、深い経験と広い視野に基づいた講義をしてもらいました。1986年の理工学部創立60周年事業を機に、一般市民にも開放され、市民向け公開講座としては草分けとなりました。

――学生たちの反響はどうでしたか。

土曜日の開講ということもあり、残念ながら学生の参加が少ない状況は今とあまり変わりません。一時期、単位が取りやすいということで履修登録者が500人を超えた時期もありますが、2004年度のカリキュラム変更で、取得単位が卒業要件には算入されない自由科目となったことで、学生の参加は減り、今は20~30人程度です。しかし、学生たちにとっては、社会人と机を並べることで、普段の授業では得られない収穫もあるようです。昨年、受講した1年生は年輩の方々の積極的な質問や、心を動かすプレゼンテーションが最も印象的だった。このような宝物が用意されている土曜日の朝をぐずぐず過ごすのはもったいない話です」と感想を寄せてくれました。

――運営での苦労は。

毎年度、斬新で話題性のあるテーマの発掘、分かりやすく、面白く、しかも説得力のある話ができる講師の発掘に気を配っています。社会人の方々からの質問も相次ぐし、個人的に話を聞きたいという人たちも待ち構えている。司会をすると、時間配分をどうするか大変です。最も頭が痛いのは講師料の捻出。運営予算はついていませんので、外部講師への謝礼も気持ち程度ですし、学内の先生方にはボランティアに近い状態でお願いしています。

――苦労を重ねながらの運営だけに、学生たちにはもっと活用してほしいのでは。

その通りです。理工学部は、1年生たちに、余裕を持って進むべき専門を決めてもらおうと、系別入試を実施しています。総合講座は、自分の将来を考えるにはぴったりの講座です。昨年の受講学生の感想にもあったように、土曜日の午前をぜひ有効に過ごしてほしいと思います。

――理工学部OBとして最近の名城大生をどう見ていますか。

私が入学したのは1962年。真空管の時代から、トランジスターの講義が走りだしていました。技術革新という時代の速度について行こうと懸命でした。最近の学生たちを見ていると、目的を見出せないでいる学生が多い。授業には欠席せず、日々の課題レポートはしっかり提出していても、形だけで満足していて、学ぶことの本当の楽しさをまだ知らないのではという気がします。そうした状況だけに、学生たちには、四半世紀の伝統に裏づけられた総合講座の意義と存在の輝きを、改めて訴える努力をしていく必要があると思います。

池田 晋(いけだ・すすむ)

石川県出身。名城大理工学部電気工学科卒。工学博士 (名古屋大学)。
専門は電子工学、電子機器工学。理工学部総務委員長などを歴 任。陸上競技部長。64歳。

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