育て達人第006回 酒井 博世

名城育ちの教員   今年は73人が採用試験合格 小学校にも11人

酒井 博世 教職センター長

 本学を卒業して全国で教壇に立つ教員は約2000人と言われています。今年度も判明しているだけで73人が全国の採用試験に合格しました。教職センターの酒井博世センター長に、教員養成の現状を語っていただきました。

――本学で教員を目指している学生はどれくらいいるのですか。

 教職センターの集計によると、今年度は1年生3746人中246人(6.6%)が、教職課程に登録しました。学部別では理工学部が111人、農学部が50人、法、人間学部24人などです。一方、今春の8学部卒業生3243人中、教員免許状取得者の実数は231人(7.1%)でした。このうち、全国の教員採用試験合格者として把握されている人数は73人です。昨年度は55人でしたが、愛知、岐阜県を中心に合格者が増えました。小学校合格者も前年の9人から11人に増えたのが特徴です。

――酒井先生が担当する理工学部数学科1年生を対象とした教職科目「教育原理」の講義を聴かせていただきました。約70人の受講者のうち、半分近くが女子学生で、話を聞くと、小学校教員を目指している学生も多いのに気づきました。

 数学科は、教師になるという目的がはっきりしている学生が最も多い学科です。ご指摘のように、最近の傾向で目立つのは、小学校教員を目指す学生が増えている点です。本学のカリキュラムでは小学校免許の取得はできませんが、通信教育や資格認定試験で小学校免許を取得し、卒業後に採用試験にチャレンジするケースが多いようです。在学中に資格認定試験を受けて採用試験に挑戦する学生もいます。

――「教育原理」の授業では、前半は、どちらかと言うと一方通行の講義で静まり返っていた学生たちですが、後半になって、「教育をどう定義すべきか、グループ単位で意見をまとめなさい」と指示されたとたん、活気づきました。

 最近の学生たちは、高校までの総合学習の成果もあるのでしょうか、自分で調べて発表する形での授業に慣れているようです。「教育原論」など基本科目の授業は、どうしても昔ながらの講義になりがちですが、グループ単位で話し合う場面になると確かに積極的になる学生が多く、まとめ役を買って出る学生がうまく出てきてくれます。回収した意見集約では、教師と生徒、生徒と生徒の関係性をどう作るかなど「関係」という言葉で幾つかの言葉を分類したグループもありました。

――学生への指導で最も熱が入るのはいつごろですか。

 3年生後期の教育実習前の指導と、採用試験対策指導です。事前指導では1人ずつ模擬授業を実演させ、採用試験突破のため、センター教員6人が密度の濃い指導をしています。各学部の先生方も教科指導に一生懸命ですが、我々センター教員も機動力を生かして指導に当たっています。1年生相手に、大教室での講義では覚え切れなかった顔と名前もこのころにはもちろん一致しています。

――学校現場で活躍する本学OBの教員で最も多いのはやはり高校の先生ですか。

 そうです。愛知県の県立高校では本学出身の教員は400人近くおり、工業高校では20校中4校の校長が本学OBです。名古屋市立の中学校で校長として頑張っている卒業生もいます。

――本学OBの教員が増えるということは、うれしいことですか。

 中学、高校に本学卒業生の教員が増えるということは、大学にとって心強い応援団が増えるということです。中学生や高校生たちに信頼の厚い先生なら、「名城大学で学んでみたい」という生徒も増えるでしょう。「数学の教師を目指すなら名城に行け」などと指導して下さる先生もいるはずです。

――本学学生と接していて、どんな教員として育っていくと思ますか。

 奇をてらうとかではない、堅実な学生が多い。ものごとに対して実直に取り組むタイプの学生が多いと思います。いい教員になれると思います。

――2009年度から教員の免許更新制が始まります。本学ではどのように対応するのでしょう。

 更新制では、対象教員は計30時間の講習受講が義務づけられます。本学としても、特色を生かして、教師力の向上に役立つ講習が提供できればと思っています。大学のPRにもつながるので、教職センターの他の先生方と一緒に検討を進めているところです。

酒井 博世(さかい・ひろよ)

静岡県浜松市出身。名古屋大学経済学部卒。同大大学院教育学研究科博士課程修了。 岐阜経済大学教授、同大経営学部長などを歴任し2003年度から名城大学教職センター教授。07年度からセンター長。専門は教育原論、教師教育論。62歳。

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