育て達人第016回 葛谷 潔昭

ボランティアで社会との接点が見えてくる   現場での体験が出発点に

非常勤講師(「福祉・ボランティア入門」担当) 葛谷 潔昭 さん

 本学ボランティア協議会が7月で設立以来5年目を迎えました。本学では学生たちのボランティア活動が盛んです。今年度前期科目では新たに「ボランティア入門」の講義も登場しました。非常勤講師として講義を担当、本学ボランティア協議会との付き合いも深い葛谷潔昭さんにボランティア活動の意義などについて語ってもらいました。

――全学共通の教養演習科目「福祉・ボランティア入門」への反響はどうでしたか。

「ボランティアは自分を見つめ直すきっかけになる」と語る葛谷さん

「ボランティアは自分を見つめ直すきっかけになる」と語る葛谷さん

 私は、これからの社会では、「福祉マインド」を持った人間が必要とされる場面がどんどん出てくると思います。福祉の専門職を目指すわけではなくても、福祉そのものが持つ意味を理解し、自分の生き方に生かすことは、身近な生活の問題の解決手段になるからです。「福祉・ボランティア入門」も、ボランティア活動や、地域にかかわる活動をすることによって、自分と社会との接点が見えてくることの意義について学んでもらおうという狙いもあって開設されたと聞いています。1年生を中心に、経済、経営、農学部から各1人と人間学部から10人の計13人が受講しました。男女比はほぼ半々でした。

――本学ボランティア協議会との関わりはいつからですか。

 名城大の協議会発足は2004年7月。私がかかわる名古屋市天白区の防災ボランティア組織の立ち上げ時期と重なり、いろいろ情報交換をしていました。同年10月には新潟県中越地震が発生し、名城大ボランティア協議会の皆さんも現地入りしました。私も被災地に出向いていて名城大の皆さんと、避難所運営や仮設住宅への引越しの仕事を一緒に汗を流しながら、今後の課題などについて話し合いました。そうした縁もあり、翌年の名城大学デーでは、学生のボランティアィ活動の意義について話し合うパネル討論でのコーディネーターをさせてもらいました。

――パネル討論ではどんな意見が出たのですか。

 ボランティア活動に飛び込む「きっかけ」についての意見交換が中心でした。私も学生時代、阪神淡路大震災の際、ボランティアとして現地に出向き、いろんな体験をしました。多くの若者たちがそうでしたが、ボランティアで、行動のきっかけとなるのは正義感だけでなく、自己満足的な面も結構あります。しかし、現場に入ると、否応なしに、動かざるを得ないところに身を置くことになります。現場に着いてからが現実になるわけです。そこで走り回り、無事に帰ってこられたらそれなりに成長があります。パネル討論ではコーディネーターとして「問題は現場での体験をどう自分の成長に結びつけるかだ」と、意見をまとめました。

――最近の学生はコミュニケーションづくりが下手だと言われています。名城大の学生たちに講義をしてみての印象はどうでしたか。

 確かに、初めのうちは学生同士が様子見をする場面が目立ちましたが、回を重ねるうちに、学生たちは新たな自分を発見していきました。前期の講義終了までに、全員がボランティアを体験し、その感想を報告することを義務づけました。区の広報を見て地域のバザー(家事道具等のリユース活動)に参加した学生、近所の知的障害者の授産施設を見つけて、そこでの仕事を体験した学生、地域の清掃活動に参加した学生。活動内容はバリエーションに富んでいました。全員がそこにいた初対面の人々との何らかのつながりをつくり、今後も活動に参加していく意向であることを明言しました。学生たちは「人が人を支えていくことの意味を学んだ」「“障害”に対する見方や考え方が変わった」「福祉は特別なことではない」などと報告していました。

――講義の狙いはある程度達成できたわけですね。

 「半信半疑の中での体験活動であったにもかかわらず、活動することによって、社会との接点が見つかった」「やり切った自分を振り返ると、そこには自分が必要とされている場があった」などの報告もありました。私の講義の狙いもそこにありました。14回の講義では、名城大のボランティア協議会の学生の皆さんにもゲスト講師として、防犯、環境、災害ボランティアの体験を語ってもらいましたが、受講生の中から、新たに協議会に参加する学生も現われました。

――ボランティア協議会が中心となった名城大のボランティア活動に対し、どんな印象を持っていますか。

 福祉系の大学なら、サークル活動などを通じてボランティア活動に深く関わっている場合もめずらしくありませんが、名城大のような規模の大きい総合大学では、ボランティア協議会がいい効果をあげていると思います。ボランティア活動は、最初は「楽しい」といったお祭りのような単発形で出発し、組織にこだわらず、サークル型、個人型でやっていってもいいと思います。ただ、大学全体で、学生の主体的参加による公益性の高いボランティア活動を盛り上げて続けていくとなると、しっかりした組織が必要です。

――様々なスタイルで「ボランティアの達人」への道があるということでしょうか。

 そうです。ボランティアの世界は様々なボランティアの達人たちによって支えられています。達人を育てる達人もいますし、裏方の達人もいます。達人づくりの仕掛けが得意な達人もいます。学生時代は、将来、達人として成長していくため入り口です。きっかけを大事にして、楽しく関わり、時間をかけて、多くの達人たちの存在に気づいていけばいいと思います。

葛谷 潔昭(くずや・きよあき)

愛知県清須市出身。日本福祉大学社会福祉学部卒、同大大学院情報・経営開発研究科修了(福祉経営専攻)。 慈恵福祉保育専門学校専任教員。同県社会福祉士会研修委員。防災ボランティア団体「天白でぃぷり」(天白防災助け合いの会)幹事。32歳。

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