育て達人第019回 宮嶋 秀光

フォークロアとの出合い求め日間賀島を歩く   社会学の基礎学んだ学生たち

人間学部 宮嶋 秀光 教授(教育学)

 人間学部では今年夏、「日間賀島フィールドワーク」を実施しました。社会・教育分野の教員による初めての試みで、参加した約60人の学生たちには収穫の多い体験となったようです。日間賀島に伝わる民話集めを指導した宮嶋秀光教授に、今回のフィールドワークの意義について語っていただきました。

――フィールドワークの狙いを教えて下さい。

「フィールドワークはこれからの自信につながったはず」と語る宮嶋教授

「フィールドワークはこれからの自信につながったはず」と語る宮嶋教授

 人間学部は今年度で開設6年目。学外での体験型授業を重視しようと、開設時から海外研修を実施してきました。今年度からは海外研修だけではなく、国際・コミュニケーション、社会・教育、心理学の3分野がそれぞれ、目的意識をもった学外学習に取り組もうということになりました。学生たちに、自分の力で学ばせる体験をさせるため、社会・教育分野で取り組んだのが日間賀島フィールドワークです。

――学生たちはどんなテーマで調査に臨んだのでしょう。

 日間賀島は豊かな漁場に恵まれた、周囲約6km、人口は約2100人の小さな島です。「島」という地理的条件は、海に隔てられた境界がはっきりしており、特定のテーマを調べるには格好のフィールドです。2年生約60人が、6人の教員の指導で、島の人口移動、社会融合のまちづくり、歴史と文化財、島に生きる女性たち、観光まちづくりと地域産業としての漁業の未来、島のフォークロア(民間伝承)の各テーマで島を歩き調査し、汗を流しました。私は島のフォークロアを指導しました。

――民話を取り上げた狙いは何でしょう。

 日間賀島に伝わる昔話や伝説を聞き取り調査によって収集し、それらを整理しながら、島の人たちの生活史を明らかにしていきたいと考えました。人間学部のような人文系学部ですと、学生が関心を持ち、接しやすいのは歴史のようです。古文書の解読となると、かなり専門的な勉強が必要ですが、民話も含めて、民俗学は庶民の歴史でもあり、学生たちにとっても身近な分野なのでしょう。男女半々の11人の学生が3、4人ずつ、事前に依頼していた島のお年寄りたちに話を聞きました。夕涼みしているお年寄りに話しかけて聞き込んだ学生たちもいます。

――どんな話が聞けたのですか。

 日間賀島には、タコが登場する民話や漁にまつわる伝説がたくさん残っています。タコが阿弥陀仏を抱いて網にかかったという話、大ダコに絡まれ、海に引きずり込まれそうになった少女が、絡みついたタコの足を刃物で切り取り取って売って大儲けしたものの、最後はタコによって海にのみこまれてしまったという悲話。伊勢湾の外で漁をしていると現れる船幽霊や、船の炊事を業とする正直で信心深い男が富を得る「炊き長者」話など、漁によって支えられている島ならではのストーリーです。

――学びの成果はどうだったのでしょうか。

 フィールドワークは、社会学を学ぶうえで大切な現地調査法です。日間賀島での体験は、そのイロハを身につけるという点でも大きな意義がありました。学生たちは最初、うまく聞き出すことができず悪戦苦闘していましたが、次第に自分たちのペースをつかんでいきました。講義室内での指導なら教員が、あれこれ指導してくれますが、学校の外での調査となると想定外の連続です。頑張って自分たちの力でコミュニケーションを成立させなければなりません。私も学生たちに付き合い、夕食近くまで島内を歩き周りました。事前の情報集めでは知らなかった島の人たちの生活ぶりも見えてきました。

――現地調査型の授業ではどんな点を期待されていますか。

 今回の調査でも学生たちは、まとめの段階で、最終的に文献を読むことが不可欠になります。調査によって、目的がはっきりしてくることで、これからさらに、どんな方向で調査を進め、どんな文献を読んだら、目指す課題を解決できるかが見えてくるはずです。方向性がはっきりし、自信を得た学生も多いはずです。

――人間学部で学ぶ学生たちには、どんな分野での活躍を期待していますか。

 人間学部は、いろいろな勉強できる学部です。心理学や社会学、教育学や歴史学、あるいは言語学や文学など多彩な分野がありますから、卒業までに、どれかの分野を選んで専門的に勉強することもできます。しかし、何よりの強みは、自分の専門を持ちながら、これらの多彩な分野に触れることで、広い視野を持てるようになることです。一人ですべての分野の専門家になることはできませんが、一つの専門だけに通じていれば、それで十分ということもありません。自分の専門のことばかりで、他の専門分野の価値やおもしろさを理解すらできない偏狭な人間は、社会では信頼も得られません。人間学部で育った人は、自分で選んだ専門を、ある程度まで深めながらも、同時に多彩な分野の知識や情報の大切さを、謙虚に認め、受容できる人間に育つはずです。多様な分野や、多彩な人々の知識や技術を創造的にコーディネイトしていくような仕事に取り組んでもらえたらと願っています。そうした人間こそが、人間学部が掲げる「実践的教養人」なのです。

お年寄りたちから島に伝わる民話を聞く学生たち

お年寄りたちから島に伝わる民話を聞く学生たち

島内を観察調査する宮嶋教授と学生たち

島内を観察調査する宮嶋教授と学生たち

宮嶋 秀光(みやじま・ひでみつ)

長野県出身。京都大学教育学部卒、同大大学院教育学研究科博士課程満期退学。教育哲学会、日本教育学会、日本道徳教育学会所属。専門は教育学。教職課程部教授などを経て現職。50歳。

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