育て達人第020回 小池 聡

可児キャンパスで里山づくり   眠っていた山林を学生たちの汗で再生へ

都市情報学部 小池 聡 教授(地域計画論)

 都市情報学部のある可児キャンパスで、学生たちによる里山づくりが進んでいます。同キャンパスは、約14ヘクタールのうち10ヘクタールを超す面積が山林で占められていますが、開設以来13年間手つかずのままでした。子供たちの自然体験学習にも活用できる里山として、山林の再生計画を進めている小池聡教授にお話を聞きました。

――2010年に名古屋市でCOP10(生物多様性条約第10回締約国会議)が開かれます。生物多様性とは、地球上の様々な生命とそのつながりのことで、条約では、ありふれた生き物も含めた多様な生態系や、生態系を取り巻く人々の暮らしや文化の保全を目指しています。里山は生物の多様性を持続させるために大きな役割を果たしていますが、都市情報学部で取り組んでいる里山づくりの狙いを教えて下さい。

里山づくりのスタート地点でもあるクラブハウス裏の山林前に立つ小池教授

里山づくりのスタート地点でもあるクラブハウス裏の山林前に立つ小池教授

 昨年、1年生向けの「都市情報学概論」という科目で、「キャンパスの環境点検」をテーマに学生たちにキャンパス内を調査させたところ、「緑に囲まれて落ち着く」「空気がうまい」など、自然に恵まれたた環境の素晴らしさを指摘する学生が相次ぎました。一方で、広大な校有地でもある山林に対し、「ほとんど利用されておらずもったいない」とする声も目立ち、中には「散策路があったらいい」「年に何回か、学生たちがクリーン作戦を展開してはどうか」と提案する学生もいました。そうした流れもあり、緑に囲まれた可児キャンパスを、“里山の自然”として生かそうということになり、計画がスタートしました。

――里山づくりのプロジェクトは、どんな形で動きだしたのでしょう。

 私の担当する「農学概論」を受講する2年生や3年生のゼミ生らを中心に動き出しました。第1回が7月26日で、学生約170人が、クラブ棟のすぐ西側の山林前に集合。人が入り込めないほどうっそうと茂る雑木や竹藪を切り開く作業に兆戦しました。地元の市民グループ「里山クラブ可児」の松下義人代表らのアドバイスを受けながら、猛暑の中、蚊の攻撃に悩まされながらの作業でした。10月末現在、まだ本格的な作業は4回だけ、切り開いたスペースは山林全体の0.1%にも達していないはずです。作業機械も持ち込めず、全くの人海戦術ですので、人が散策できる里山を実感できるにはまだまだ時間がかかるとは思います。そうした雄大さを実感するだけでも教育的意義があることだと思います。

――都市情報学部が開設されたのは13年前。校地内の山林は、人の出入りがなかったということでしょうか。

 大学としての長期計画とも絡むのでしょうが、広大な山林は、里山として価値を発揮できないまま、眠り続けていました。この間、木々や竹藪は伸び放題で、日も光も差し込まない、荒れた山になってしまいました。これから人が歩ける道が延び、光が差し込んでくるよう整備が進めば、里山らしい風景にどんどん変わっていきますし、学生たちの意欲も変わって来るはずです。ツツジ、ツバキといった季節の花々を楽しんだり、柿、クリ、アケビ、ヤマイモ、キノコなどの収穫も楽しめると思います。クラブハウスすぐ裏に、「ビートルマンション」と呼ばれる、伐採した小枝を寄せ集めた昆虫の住みかも作りました。

――自然観察やキノコ狩りを楽しむ家族連れの姿が想像できそうですね。

 地域の子供たちがカブトムシやクワガタなど昆虫採集も楽しめる里山を目指しています。そうした子供たちの自然観察学習をサポートする学生たちの登場にも期待しています。ツユクサ系の絶滅危惧種の植物も見つかっていますし、アライグマなど里山での動物たちとの出会いもありそうです。大学の同じ敷地に貴重な学びの場ができることは素晴らしいことだと思います。

――里山は農家の裏山、人に利用されることで維持されるとも言われています。里山再生へ、さらに考えているプランはありますか。

 とりあえず山林の全体像をつかむため、作業ルートを作りながら、くまなく歩いてみようと思っています。ご指摘のように、里山の生物多様性には農業の存在が欠かせません。農作物を食べる害虫とそれを捕食する野鳥、受粉を助ける昆虫、さらには土中の微生物は、里山の生態系と密接に係わっています。学生たちと一緒に里山に隣接する校地内に畑を作り、農業体験ができればと考えています。とりあえず来年から、ブラジル野菜づくりを始める計画です。可児市は日系ブラジル人の方も多く、大学周辺でもブラジル野菜を栽培している農家の方もおり、ブラジル野菜の朝市も開かれています。里山と同時に農業の大切さを学ぶチャンスになると思います。

――学生たちにはどんな点を期待していますか。

 都市情報学部の学生たちは、都市問題を自分たちのフィールドワークを通じて解決したいという意識を持っていると思います。里山は、これからの都市問題を考えるうえで、欠かせないキーワードです。今回の里山づくりが動きだすきっかけになったのも、昨年の1年生たちからの「キャンパスの環境点検」に基づいての提案でした。意欲ある学生たちがリーダーシップをとり、授業外でもサークル活動的に、里山づくりを盛り上げていってくれればと期待しています。学生時代に何かに打ち込んだという体験をするのは素晴らしいことです。

【写真】 不用の樹木を伐採し、里山づくりに取り組む学生たち

【写真】 不用の樹木を伐採し、里山づくりに取り組む学生たち

小池 聡(こいけ・さとし)

東京都出身。筑波大学第二学群(農林)卒、京都大学大学院農学研究科博士課程修了。農学博士。農水省所管の財団法人で農村整備などにかかわる政策、立案に携わった後、2000年度から現職。専門は地域計画論。農村計画学会、農業土木学会などに所属。48歳。

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