育て達人第022回 木村 裕三

実りあった清華大学との交流10年   大世帯・法学部ならではのたくましさを

法学部長 木村 裕三 教授(刑事法)

 法学部は北京の清華大学法学院との交流協定締結10周年記念行事として、同法学院から教員4氏を招いて式典と講演会を開催しました。木村裕三法学部長に、交流10周年の意義と、定員530人の大所帯学部の運営について語っていただきました。

――清華大学との交流10周年の感想をお聞かせください。

交流10周年で清華大学から贈られた記念品を手にする木村法学部長

交流10周年で清華大学から贈られた記念品を手にする木村法学部長

 清華大学からは申衛星副院長ら4人の先生方が名城大学を訪れてくださいました。申先生たちは名城大学との交流に至るいきさつや、交流10年間の内容を私たち以上にしっかりと把握されていました。清華大学は胡錦涛主席をはじめ、多くの中国政府要人が学んだ超エリート校です。10年間の交流では、本学法学部に清華大学から先生をお招きして夏季集中講義を隔年で開催したり、本学からも3人の先生方が招へい研究員として訪れました。2006年に清華大学で開催された法学院創立95周年記念シンポジウムには本学から網中政機元学長らがパネリストとして参加しましたし、大学院生たちも訪れ、交流を深めてきました。実質の伴った交流が続いた10年間だったと思います。

――名駅サテライトでの公開記念講演会では、「中国における財産法の現状と課題」をテーマに、4人の先生方が講演されました。

 中国は土地の所有権は国家で、国民に認められているのは利用権です。政策の立案や法律の施行もスピーディーです。日本のように公共施設の建設が個人の反対でなかなか進まないなどのケースは考えらません。日本とは根本的に違う法体系の中で、「国際物品売買契約に関する国際連合条約(CISG)と中国契約法」「中国動産抵当登記の効力の規則」など興味深い講演を聞かせていただきました。参加した大学院生たちにも有益な講演だったと思います。

――本学の法学部は定員が530人で理工学部に次ぐマンモス学部です。大所帯の学部を束ねる学部長としての思いをお聞かせ下さい。

 「就職に強い名城大学」と言われますが、法学部の学生たちが、たましく進路を切り開いている点も大きな評価になっていると思います。大所帯での学生生活ですから、学生時代には一人ひとりは目立ちにくい面もありますが、社会に出て、キラリ光る活躍をされている人たちがたくさんいます。大人数の中でもまれるせいか馬力を感じます。学生生活でも、法学部の学生たちはいろんな分野で活躍しています。10月の「杜の都駅伝」に出場した女子駅伝部に所属する学生たちも多くが法学部生です。部員たちは授業態度もまじめです。今年はV位奪回はなりませんでしたが、きっと挽回してくれると信じています。我々教員も、できるだけきめ細かい教育をしようと、少人数ゼミなど工夫を凝らした授業を心がけています。もちろん学生数に対応して教員の数を増やなどの対策も必要だと考えています。

――法務研究科(法科大学院)ができて4年。もう一つの大学院である法学研究科の役割についてのお考えをお聞かせ下さい。

 法務研究科には、法曹資格をめざす超難関の司法試験だけでなく、司法書士試験などの資格試験に挑戦する学生たちがこれからもどんどん目指してくると思います。そうした学生たちの意欲に応えるため、指導はさらに徹底しなければなりません。実務家を育てる法務研究科に対し、従来からある法学研究科は、研究者の養成と現代社会の要請に応えるための高度専門職業人の養成を目指しています。特に広い視野で学んだ法律の知識を、将来の自分の仕事にどう生かすかが大事だと思います。これからの社会では、法のシステムをしっかり理解したうえで、行政の仕組みや、都市の防災、社会の安全、安心などについて分析する力が必要です。修士課程で学ぶ学生たちの中には公務員志望者も多く、そうした勉強をして警察官や検察事務官になりたいという学生もいます。

――木村先生が法律を本格的に学ぼうと思ったきっかけは何ですか。

 私は大学院の修士課程を修了し、そのまま25歳で、福岡市にある短大の法科(Ⅱ部)に講師として就職しました。当時、福岡には夜間に法律を学べる大学、短大は他になく、年配の裁判所職員とか、市役所職員の方々がたくさん学んでいました。父親のような世代の方々に、学ぶことへの情熱も含め、多くのことを教えていただきました。それが刺激となって、改めて法律を本格的に学ぼうと、少年法についての研究に取り組み、イギリスにも留学しました。まだ、あまり研究されていなかった少年法を選んだのは、国連で女性への差別撤廃条約が採択されるなど、戦後30年を経て、社会の流れが大きく変わってきたことを感じたからです。

――学生たちの指導にあたるうえで、心にとめてきたことはありますか。

 欠点を指摘するより、長所を伸ばしてやろうという点です。長所に気づいた学生はどんどん成長し、やがては達人の域まで達すると思っています。これは、私の小学生時代の恩師の影響もあります。「人間はだれでも大切な存在として生まれて来ている。自分を最後まで信じて、やろうと思うことをやるべきなんですよ」と、おばあちゃん先生の恩師は私たちを諭してくれました。自分の可能性をいかにして見つけるか、見つけたら評価してもらえるようどれだけ努力するか。学生たちには、そういう「生きる力」をしっかりつかんでほしいと思っています。

木村 裕三(きむら・ゆうぞう)

新潟県出身。名城大学法学部卒、大学院法学研究科修士課程修了。法学博士。西日本短期大学講師、助教授を経て名城大学講師、助教授、教授。学生部長、法学部長、キャリアセンター長などを歴任し、2007年度から2回目の法学部長、法学研究科長。専門は刑事法。64歳。

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