育て達人第023回 成塚 重弥

自学自習時間が長いほど高い授業満足度   チャンスがあるのに勉強しないのは惜しい

FD委員会学生満足度チーム座長 理工学部 成塚 重弥 教授(電子材料)

 本学FD委員会(委員長・池田輝政副学長)では2000年度から、「授業満足度アンケート調査」を実施しています。11月4日に全学の教職員、学生を対象に開かれた第10回FD講演会では学生満足度チーム座長の成塚重弥理工学部教授が今年のアンケート結果を報告、授業満足度には学生たちのやる気、すなわち「自学自習」時間が大きく影響している点を指摘しました。

――授業満足度アンケート調査の狙いを教えてください。

「勉強できる環境にいながら勉強をしないのは 本当に惜しい」と語る成塚教授

「勉強できる環境にいながら勉強をしないのは 本当に惜しい」と語る成塚教授

 もちろん大学としての教育力を高めるためです。学生たちの授業に対する満足度を把握し、改善点、要望事項を把握する一方、教員の授業に対する意識を調査し、双方の意識のズレを明らかにすることを狙っています。8年前から実施しており、今年は6月23日~7月11日、全学で実施しました。ご協力いただいた先生方は636人(専任323人、非常勤313人)。実施した授業は各教員が担当する最も履修者が多い講義科目の671授業(調査対象の91%)です。8学部と教職課程、全学共通教育部門で授業を受けた延べ4万4821人の学生たちから回答を得ました。集計結果は、授業期間中の改善に役立つよう、各先生たちにフィードバックされました。

――調査結果で注目したのはどんな点ですか。

 先生方はこれまで、アンケート結果に疑心暗鬼になっていたと思います。「学生にとって満足度の高い授業とは、単位を簡単に出す授業ではないのか」「学生に迎合する授業が満足度の点数が高いのではないか」という思いが少なからずあったと思います。実は私も、4年前にアンケートチームに加わるまでは、そんな思いがくすぶっていました。ところが、今回の調査でよりはっきりしたのは、学生たちは必ずしも「たやすく単位を出す先生がいい先生」とは考えていないという点です。学生たちの本心をアンケートに反映させようと、この間、学生と教員の双方からの声を聞く方法に変えましたが、今回からアンケート項目も増やしました。その結果、学生にとっての本当に満足がいく授業とは、勉強が面白くて、一生懸命やって、それで学べたと実感する授業であるという点が鮮明になりました。

――具体的な事例を紹介して下さい。

 例えば、教員がどの学力レベルに合わせて授業をするかで、学生の満足度は変わってきます。教員には、学生たちの成績を上位、中位、下位に分けたとき、「授業ではどのレベルの学生に合わせているか」を聞きました。学生たちには「自分の学力はどのレベルに属すると思いますか」と質問し、教員とのレベルの一致度と満足度との関係を調べました。学生の満足度で最も高かったのが教員と学生のレベルが「上で一致」した場合で、「強く満足」「やや満足」を合わせてほぼ70%に達しました。最も低かったのは「下で一致」の40%でした。教員が下の層に合わせ、わかりやすく教えようとしても学生は満足していないわけで、驚きでした。先生たちが、なるべく多くの学生に単位を与えようと授業レベルを下げても満足度はけっして上がらないということです。

――勉強時間と満足度の相関性はありますか。

 あります。「自学自習をまったくしない」という学生たちの比率は、学部によって異なり、最も多かった文系の学部では64%にも達しました。最も少なかった薬学部は34%で、薬学部、理工学部では自学自習時間の長さが目立ちました。全学部とも、家での勉強時間が週3時間以上の学生たちは授業に最も満足しており、勉強していない学生は授業から受ける感動が少ないということです。自学自習時間が長いほど満足度が右肩上がりのデータを示す傾向は、昨年も全く同様でした。昨年10月の結果は学生たちにも「FD NEWS速報」のパンフを作成して配布しています。授業で満足するにはやはり主体的にしっかり勉強することです。せっかく大学に来て、授業に満足できないのは寂しいことです。

――そのほかにも注目すべき点がありましたか。

 例えば1クラスの出席数別の満足度は、40人以下では満足度が10%も上昇しました。少人数クラスは40人以下で有効ということです。また、教室での着席位置と授業満足度の関係では、前方に着席する積極的な学生は、自学自習時間が長く、授業満足度も高い。学力も上位傾向にあります。一方、「興味がわくよう工夫した進め方」「内容が興味深く魅力的」「重要なポイントをきちんと示す」「教員の意欲や熱意を感じる」「新しいことを学べる」を強調した授業の満足度は高く、専任、非常勤にかかわらず多くの先生たちが授業改善に取り組んでいる点も明らかになりました。

――アンケート全体を通しての感想をお聞かせください。

 名城大学の先生方のFDに対する意識が高く、授業改善のために非常に努力されていることがわかった反面、学生の満足度は、学生が努力し、勉強して初めて得られるという点も浮き彫りにされました。これまでは、どちらかというとアンケート結果によって、先生がムチをあてられて、悪いところをどんどん修正しないといけないというイメージでしたが、やはり、勉強するのは学生であって、学生が勉強しなければどうしようもありません。教員による良き動機づけとともに、学生たちにはもっとガッツを持って勉強してほしいと思います。勉強できる環境にいながら勉強しないのは本当に惜しいと思います。チャンスを生かしチャレンジする精神が大切です。

成塚 重弥(なりつか・しげや)

岐阜県出身。名古屋工業大学卒、東京工業大学大学院修士課程修了。東芝総合研究所に12年勤務後、東京大学大学院工学系研究科電子工学専攻博士課程修了。博士(工学)。東大講師を経て名城大学理工学部助教授、教授。専門は電子材料。52歳。

  • 情報工学部始動
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