育て達人第029回 曽山 和彦

人とのかかわりを大切に   学びのチャンスを生かそう

教職センター 曽山 和彦 准教授(生徒指導)

 教職センターの曽山和彦准教授は、東京都や秋田県での養護学校教員や秋田県教育委員会勤務を経て2年前から大学の教壇に立っています。「学校におけるカウンセリングを考える会」など学外での活動も多い曽山准教授は、「人とのかかわりなど、身近にある学びの場を積極的に活用してほしい」と強調しています。

――障害のある子どもたちへの教育を担う特別支援学校(従来の養護学校)の教員として18年間、東京都や秋田県の学校現場におられたそうですが、どうして特別支援学校の教員を選んだのですか。

「学ぶチャンスはいくらでもある」と語る曽山准教授

「学ぶチャンスはいくらでもある」と語る曽山准教授

 最初5年間は東京都の養護学校に勤務し、その後は妻の実家のある秋田県の学校現場にいました。子どもが好きだから教員になったわけですが、小学部での担任が長かったせいか、本当にかわいいと思いました。車いすの子、知的障害のある子たちを教えていて、教師としてのやりがいを感じました。養護学校では教員同士のチームプレーがとても大切で、3、4人が組んでの指導に取り組みます。学習面、生活面の課題のクリアが難しいと思っていた子どもたちがいろんなことができるようになっていく。子どもたちは成長していくんだという手ごたえを感じました。

――教育現場を離れ、大学院で学び直したそうですが。

 養護学校に通う子どもたちの不登校問題を体験し、十分に教えきれなかった力量不足を感じたからです。教員としての籍を残しながら、秋田大学の大学院教育学研究科(修士課程)に入学したのが38歳の時。23歳で教師になってから15年たっていました。私たちの世代では、学部卒業後すぐに大学院に進学するというのはまだ大変な時代でした。わずか1年間でしたが、もう一度大学で勉強できるということは素晴らしいことだと思いました。愛知県もそうですが、今は教員が仕事を続けながら大学院で学ぶ制度を設けている県はたくさんあります。学部を出て、そのまま大学院に進む道もありますが、現場で様々な体験をし、そのうえで大学院で理論を学ぶと、ポイントが絞られ、密度の濃い学びや研究ができると思います。30歳代後半でもう一度、学生体験をし、論文を書き、そこで出会ったのがカウンセリングなど教育相談の分野でした。

――秋田県では教育委員会でのお仕事もされていますね。

 大学院で学んだ後、1年ほどまた学校で担任をしましたが、その後は秋田県教委で仕事をしました。指導主事として3年間学校現場を回った後、管理主事として2年間、教員の採用の仕事をしました。秋田県は市町村合併もあり、小学校教員の倍率が50倍を超すなど教員への道は全国屈指の狭き門になっていますが、私の県教委勤務時代にも、素晴らしい教師になるだろうなと期待していた学生たちが、秋田県では採用されずに首都圏の学校に流出していました。彼らの、地元で教えたいという夢に応えられず、悔しい思いをしました。

――本学の教員紹介冊子の中で、学生たちが授業を受ける姿勢について「ひとみが輝いているようだ」と書かれていました。

 その通りです。教職課程の授業ということもありますが、学部の科目に加え、時間もお金も余分にかけて教員免許をとろうという意欲が現れているのだと思います。前列席に陣取り、身を乗り出して聞き入る学生もたくさんいます。教職センターでは、いろんな勉強会も開いていますが、積極的に参加している学生もたくさんいます。ただ、気になるのは、ノートも一生懸命に取って、まじめに授業には通ってはいるものの、家にまっすぐ帰り、ゲームなどをして過ごしているという学生も結構いることです。

――人とのかかわりが希薄な学生も目立つということでしょうか。

 そうです。学生時代は、ぜひ、人とかかわる居場所をつくってほしいと思います。スポーツ等の部活でもいいし、サークルでも構わない。将来、どんな仕事についても、人との関係は一生欠かせません。指導を依頼されて学校現場を回ることも多いのですが、最近、特に感じているのが、先生たちのストレスです。職員室も私が教員だったころの雰囲気とは相当変わってきているように思います。昔は何か困ったことがあると、先輩の先生とかに相談に乗ってもらいましたが、今は、わからないことはインターネットのヤフーやグーグルに頼る先生たちもいます。親たちとの関係も、ボタンの掛け違いでサポーターではなくクレーマーにしてしまうケースもあります。大学の授業でも、学部が違うこともあるのかもしれませんが、お互いの名前も知らない同士の学生たちがいるのは残念なことです。

――後期試験も終りました。4月から新しい学年に迎える学生たちにアドバイスはありませんか。

 身の回りには多くの学びの場があります。様々な人とかかわり、友達を増やすことは大切な学びの一つです。学生時代には、そうした学びを通して、いろんな引き出しをつくってほしいと思います。実は私は今、大学教員をしながら、また学生をやっています。学部時代の恩師の誘いもあり、ある大学の大学院博士課程で、福祉的な視点からのスクールソーシャルワーカーについての論文に取り組んでいます。学びのチャンスはいくらでもあります。

曽山 和彦(そやま・かずひこ)

群馬県出身。東京学芸大学教育学部卒。東京都や秋田県の養護学校などでの教員生活を経て秋田大学大学院教育学研究科修士課程修了。2007年4月から名城大学教職センター准教授。専門は生徒指導・教育相談、特別支援教育。秋田県時代同様に、名古屋でも「学校におけるカウンセリングを考える会」を主宰。47歳。

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