育て達人第041回 伊川 正樹

知識の習得だけでなく実践力を身につけてほしい   「達人への道」は悩むことも大切

法学部 伊川 正樹 准教授(租税法)

 法学部は6月、今年で4回目となるゼミ対抗スポーツ大会を開催しました。1学年の学生数が600~800人という大所帯の学部だけに、この大会は学生同士の交流を深める絶好の機会となっているようです。企画、運営はすべて学生によって行われていますが、この大会を第1回目からサポートしている伊川正樹准教授にお話を伺いました。

――ゼミ対抗スポーツ対抗が盛況でした。

「学生時代はだれもが悩む時期。悩んで成長する」と語る伊川准教授

「学生時代はだれもが悩む時期。悩んで成長する」と語る伊川准教授

 法学部では学生数が多いので、3年生になって専門演習が始まりようやく本格的に学生同士でまとまって活動するような状況です。他学部のように入学時に何らかの企画をやろうと試みたのですが、大所帯の法学部では限界があります。そこで、現在の規模でできるものをと考えた結果、とりあえず、ゼミという単位でまとまりができる3年生を対象として、このような行事を始めました。今年の大会は、合計22ゼミ、34チームが参加して、ソフトバレーボールを楽しみました。準備や運営は実行委員の学生たちに任せています。

――講義に臨む基本姿勢を教えて下さい。

 教科書や書物に書いてある知識を単に得るだけでなく、法が社会の中でどのように生かされているのか、法を使って問題をどのように解決するのか、そうしたほんものの力を身につけてほしいとの思いを込めて講義を行っています。そこまで踏み込まないと法を学ぶ意味は理解できないと思います。私の専門である租税法は、学生にとって縁遠い話のようでもありますが、卒業して社会に出れば、否が応でも係わりをもつようになります。自分が納税者になれば無関心ではいられません。講義では、ニュース等で紹介された話題を積極的に紹介し、現実の社会で生起する問題に関心が向くよう注意を払っています。税というものは、課税する側と課税される側の双方の立場・主張があります。両方の立場を理解してこそ、公平な税制が実現できるのです。ゼミではディベートを通じて、相手の主張を聴いた上で、自分の主張を伝えて、建設的に議論できる力が身に付くよう指導しています。

――学生数が多いのでコミュニケーションを取るのが大変ではありませんか。

 学生の声にはできるだけ耳を傾けるようにしています。ただ、学部の規模が大きいだけに、ゼミや講義で接する機会がなければ、在学中、教員と話をするチャンスがないまま卒業する学生もいます。高校までと違って、大学では常に教員から学生に働きかけるわけではありませんから。ですので、学生にはもっと積極的であってほしいと願っています。私は、学生からの相談に対しては、いつでも門戸を開いています。

――法学部と交流協定を結んでいるハワイ大学に在外研究で滞在されていた時、ある教授の研究室に掲げられていた「I love education」という言葉に感銘を受けたそうですが。

 ハワイ大学ロースクールには2003年夏から2005年夏に留学しました。そこでは教員と学生が共に運営に携わるという仕組みがあって、一体となってロースクールをつくりあげるという感覚が根付いていることを実感しました。「I love education」というフレーズに象徴されるように、教員の教育に対する熱意に感銘を受けました。この時の体験もあって、私は、研究はもちろん、学生と接する機会をできるだけ大事にしています。

――本学では「名城育ちの達人を社会に送りだす」というミッションステートメントを掲げています。法学部の卒業生はかなりの数にのぼり、活躍中の「達人」も多いと思いますが、それに続く現在の学生たちへメッセージをお願いします。

 学生時代に何かを極めることはもちろん、どのような「達人」を目指すのかという方向性を見つけること自体、学生にとっては難しいことです。しかし、お金をもらって仕事をするということは、それぞれの分野での専門家、いわばその道の達人になることを意味しています。社会人として、そのような心構えを忘れてはならないと思います。自分はどんな道に進めばいいのか、何に向いているのか、そう簡単に答えが見つかるものではありません。しかし真剣に悩むことが大切です。大学時代の4年間は誰もがそのような悩みを抱える時期なのです。悩んでも答えが見つからないというのは、答えを出すだけの力が自分に備わっていないということだと思います。それを解決するためには、本を読んで知識をインプットすることも必要ですし、直接体験をすることも貴重です。勉強で頑張る学生、スポーツで活躍する学生など、それぞれの得意分野で自分なりの達人を目指してほしいと思います。学生数の多い法学部では、それだけ多様なタイプの学生がいるので、そうした強みを生かして多様な価値観と触れ合ってほしいと思います。

伊川 正樹(いがわ・まさき)

沖縄県出身。名城大学法学部卒、同大大学院法学研究科博士後期課程満期退学。2001年から名城大学教員。助手、講師、助教授を経て現職。専門は租税法、行政法。現在、法学部では入試委員、資格支援委員長、法学会庶務委員などを務め、学生支援に当たっている。名古屋市税制研究会委員として同市の税制についても提言している。

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