育て達人第046回 伊勢田 敬

常連2番手の壁越えて悲願の校歌   地道な努力で大輪咲かせよう

附属高校軟式野球部監督 伊勢田 敬 教諭(地理)

 附属高校軟式野球部が今夏、第54回全国高校軟式野球選手権大会に出場。初出場ながら準優勝に輝くと同時に、エース小林投手の史上初の完全試合という快挙もチーム一丸で達成させました。教員歴14年、監督歴10年の伊勢田敬教諭は、「生徒たちと一緒に校歌が歌えたことが一番嬉しかった」と晴れ舞台の感動を語ってくれました。

――全国大会初出場でしたが、東海大会出場ではいつも王手をかけていました。

準優勝、完全試合の盾を手にする伊勢田監督(右)と菱田部長

準優勝、完全試合の盾を手にする伊勢田監督(右)と菱田部長

 東海大会は14回目の出場でした。夏5回、秋4回、春5回です。優勝は2回目で、秋季大会で1度優勝しています。硬式高校野球のように、秋季優勝でも春のセンバツに匹敵する全国大会は用意されておらず、全国舞台への道は夏だけです。東海大会では6回準優勝しています。他校の先生方からも「準優勝が好きだねえ」と言われていました。

――今年は常連2番手の壁を越えるきっかけがあったのでしょうか。

 壁は自分でも感じていました。4月に新任の体育教員である菱田佳紀教諭に部長に就任していただきました。専門は陸上ですが、選手たちの自己管理やメンタル面での指導にあたってくれました。また、OBで本学人間学部3年生の浜田邦裕君が、授業が終わるとコーチとして足を運んでくれました。37歳の私と26歳の菱田部長、選手たちの兄貴格の21歳の浜田コーチのトライアングルの力が、新しい力を引き出してくれたのかもしれません。

――軟式野球と硬式野球の違いを教えて下さい。

 絶対的な違いはボールです。軟式はボールが軽い分、空気抵抗で遠くに飛びません。硬式なら打ち損じてもフライがホームランになることもあります。軟式はボールが弾む縦の動きを生かしてゴロを打つ方が得策です。守る側からすれば失策がそのまま得点につながることにもなります。トーナメントは1回負ければ終わりですので、とにかく負けないことを念頭におくと守備に力を入れた方がいい。ゼロに抑えれば絶対負けないという発想でやっています。

――初めて体験した全国舞台。緊張しましたか。

 初戦の相手は大阪の初芝富田林でした。私は富田林市の出身なので運命の巡りあわせを感じました。しかし、終わってみれば7-0。東海大会でずっと2番手だったと言いましたが、2番になりたくてなっているわけではありません。東海大会の決勝戦では岐阜の中京高校、静岡の静岡商業、浜松商業がいつも立ちはだかっていました。中京高校が全国3連覇を目指していた時も決勝で惜敗しました。東海大会の決勝戦というのは全国大会の決勝、準決勝くらいの重みがあります。

――その初芝富田林戦では小林雄太投手が、54回の歴史を持つ大会で初の完全試合も達成しました。予感はありましたか。

 彼は絶対にフォアボールを出さないピッチャーです。連続ツーストライクを取った後ボールが3つ続き2-3になっても6球目のストライクに絶対的な自信を持っています。ノースリーになっても笑顔でストライクを投げてきます。安心して見ていられるというか自滅しない子です。完全試合は硬式の甲子園大会でも達成されておらず、高野連が急きょ準備してくださり、チーム一丸の守備力で達成できた記録ということで、チームとしてもトロフィーをいただきました。チームは全国大会の全4試合で無失策でした。

――全国大会では名城大学学歌と同じ附属高校の校歌がグラウンドに響きました。

 県大会、東海大会では勝っても校歌は歌えません。自主的に歌っていたことはありますが、初めて公式の場で堂々と歌うことができました。甲子園と同様に球場に高らかに校歌が流され、応援していただいたスタンドの皆さんと一緒に声を張り上げ、歓喜を分かち合えるのは素晴らしいことです。決勝戦ではケーブルテレビの中継もあり、あとでご父兄からビデオをいただきました。試合後には10数人もの報道陣に取り囲まれるという初体験もありました。

――全国準優勝の体験を通して附属高校生や名城大学生たちへのエールをお願いします。

 軟式野球部の生徒たちは、打力には自信がなくても、守り、走ることには自信を持っています。歴代部員でも、投手は中学時代はエースではなく2番手とか、違うポジションの生徒が多い。硬式野球部に入って甲子園を目指すかどうか葛藤した生徒も多いと思います。しかし、大学に進んでから硬式に転じる子もたくさんおり、エースナンバーを背負って堂々とマウンドに立つ子もいます。やろうという気さえあれば結果はついてくるものです。私も1年の大半を陽が暮れるまで生徒たちの練習に付き合っていますが、生徒たちから多くのことを学びました。コツコツと努力を続けることで大輪の花火を打ち上げることができるのかなということです。自分で可能性の限界を決めることなく、頑張ることが大切です。

伊勢田 敬(いせだ・けい)

大阪府出身。関西学院大学文学部史学科卒。1996年から名城大学附属高校教諭。担当教科は地理。人間学部との高大一貫教育を進める普通科国際クラスの担任になって6年目。打ち合わせや会議で天白キャンパスにはよく足を運ぶ。6歳と3歳の男の子が2人。37歳。

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