育て達人第051回 長谷川 乃理

見通しを持つ習慣を   「相手に伝える意識」を持って

法学部 長谷川 乃理 助教(企業法)

 法学部の長谷川乃理助教は本学の教員としては1年生。名城ホール(600席)での大人数講義からゼミ指導までの授業をこなす一方で、様々な学内行事にも参加、発言しています。エネルギッシュに飛び回る長谷川先生に教員生活8か月を振り返ってもらいました。

――3年生たちの就職活動がスタートしました。11月5日にキャリアセンターが開いた、内定・採用実績のある270社を招いての情報交換会の法学部ブースでは、順番を待って次々に席に着く採用担当者たちと延べ3時間も話し込んでいました。どんな話をされたのですか。

「見通しを持つ習慣を身につけることが大切」と語る長谷川助教

「見通しを持つ習慣を身につけることが大切」と語る長谷川助教

 ブースでは13社、懇親会も含めると20社以上の方とお話をしました。こちらからは就職動向のほかに、学生たちが在学中にやっておいたら良いことはどのようなことかという質問をしました。返ってきた答えの多くが「コミュニケーション力をつけてほしい」という要望でした。そのためには、例えば「同世代の人以外と接する機会を設けると良い」とも伺いました。聞く人のことを念頭において話す習慣をつけてほしいということなのだろうと思います。

――就職をする心構えについてはどうでしょう。

 「今、なぜ自分は就職しなければならないのか」という、根本的な疑問に対して、自分なりに答えを出してから就職して欲しいということを複数の方から指摘されました。内定が出てから、または就職してから迷い始めるのは、本来自分がやりたいことと内定(または就職)先がずれているように思われます。自分がやりたいことが明確でなければ、暗闇に対して怯えているようなもので、ついふらふらと辞めてしまうことにつながってしまいます。実は私自身、学部4年のときに就職か進学かで迷いながら就職活動を始めました。結局、内定をいただいたにもかかわらず、最終的には留学・大学院進学を選択しました。その選択には後悔はしていませんが、伺うことができたお話や自分の経験は、できるだけ学生に話していけたらと思っています。

――学生たちのコミュニケーション力で気になる点はありますか。

 コミュニケーション力は、本来、日常生活の中で培うことができる能力だと思います。例えば、講義で私が質問したことを理解し、自分の知識の範囲内で的確に回答することもコミュニケーションです。レポートにしても同じです。レポートには教員という読み手がいます。読み手に伝わる書き方を意識するだけで文章は変わってきます。最近気になっているのは、私の講義の受講生たちの姿勢の中にも、どのような過程を通じてその答えに至ったのかを軽視して、「答え」ばかりを知りたがる傾向があるように思えることです。同じ山でも登山口や登り方が違えば、まったく違う登山になります。同じように、たとえ結論は同じでも、どのような理論付けをするのかでまったく異なる学説を採ることもありえます。本来、このような問題は講義を通じて、学生のみなさんにできるだけ細やかにお話しすべきことだと思うのですが、私が今期担当している講義は受講生が700人を超えています。授業途中で理解度をはかろうにも、理由を含めて論述するレポートなどを採点することがなかなかできません。○×式で答えだけを問う小テストであれば、実施もかろうじて可能なのですが、コミュニケーションという点ではとても十分とは言えず悩んでいます。

――情報交換会に参加した採用担当者には名城大学のOBも多かったのでは。

 名城大学主催の企画にあれだけたくさんの採用担当者の方々が来てくださったわけで、ありがたいと思います。名城大学OBも結構お見えで、「採用した後輩たちが頑張っている様子を知らせにきた」という方もいらっしゃり、「名城大学の学生さんは素直で感じがいい」というお褒めの言葉をいただきました。一方で「OBだからこそ言うが、内定辞退の連絡をしてこない学生が昨年に続いて今年もいた。これではいかん」とあえて苦言を呈して下さる会社幹部もお見えでした。こうした辛口のご指摘は授業で学生たちに伝えています。

――学生たちへのアドバイスはありませんか。

 おおまかでもいいので見通しを持つ習慣を身につけることが大切だと思います。大学の4年間は、ある程度自由に時間の使い方を決められますが、気がつくとあっという間に過ぎてしまう時間で、意外と暇はありません。自分にとって必要なものはどれなのか、見通しを持つことで取捨選択して生かすことができます。大まかな見通しさえ立てておけば、そこに何かをプラスしていくのは可能です。見通しを持って行動することでさらに可能性は広がっていくと思います。

長谷川 乃理(はせがわ・のり)

岐阜県瑞浪市出身。名古屋大学法学部卒、同大大学院法学研究科博士課程満期退学。2009年4月から現職。専門は企業法。アジア(特に韓国)との比較研究も行っている。31歳。

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