育て達人第054回 大場 正春

諸先輩の苦労があっての農学部60周年   COP10では学生たちも学会運営に一役

農学部長 大場 正春 教授(物理化学)

 農学部では2月13日、合同卒業研究発表会を開きます。3学科の4年生全員が自分の卒業研究について共通講義棟北1階ロビーでパネル発表を行うもので、研究室単位の枠を越えた学部全体での発表会は初めてです。2010年度で学部開設60周年を迎える農学部の大場正春学部長に語っていただきました。

――農学部は2010年度で開設60年です。学部長としての感想をお聞かせ下さい。

「学生時代には勉強だけでなくいろんな経験をしてほしい」と語る大場農学部長

「学生時代には勉強だけでなくいろんな経験をしてほしい」と語る大場農学部長

 私が名城大の教員として赴任したのは13年前で、それ以前のことは直接知りません。ただ農学部の50年史を読むなどして、諸先輩や卒業生の方々が大変な苦労をされたことは知っています。学部は春日井市で誕生しましたが、学生がなかなか集まらず、赤字で苦しんでいた時期もあったようです。開設当初は戦後の食糧難の時代で、農学部には食糧増産のための品種改良、肥料や農薬の開発などの役割も求められました。しかし、時代とともに農学部の使命も変わってきました。地球環境問題、食料問題など現代社会の抱える最重要課題の多くは、まさに本学農学部が研究・教育の目的として掲げている「生命・食料・環境に関する課題解決」そのものでもあります。

――60周年にあたる今年は、生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が名古屋市で開催されます。農学部としての取り組みを教えて下さい。

 9月18、19日の2日間、60周年記念事業を行います。18日(名城大学Dayの日)には学術講演会Ⅰとして、COP10のパートナーシップ事業である研究基盤形成支援事業「アグリオミクスによる環境調和型物質循環の構築」の講演会を昨年に引き続き開催します。「アグリオミクス」とは、農業分野を4分野(微生物、植物、機能性物質、生態系)から研究していこうという造語です。本学ではCOP10に関連する学会も相次いで開催されます。5月には日本造園学会全国大会も開かれ、農学部の学生たちにも応援してもらうことになります。造園学会と言っても庭木の剪定とかではありません。都市環境や里山環境など人間が管理する自然環境について研究する学会です。学生たちの役割は、まずは運営の手伝いですが、会場にいるだけでも学べることがたくさんあります。実際に発表する人の手伝いを通して将来の自分の研究の方向が見えてくるかもしれません。COP10開催は、農学部で学ぶ立場から、何が求められているかを考えるいい機会であると思います。

――農学部では2月13日、4年生たちによる初めての合同卒業研究発表会が開催されます。狙いを教えて下さい。

 1年近く前に始まった4年生たちの卒業研究もいよいよ収穫の時期です。発表会を通して研究室間の交流が広がり、互いに切磋琢磨することで農学部の教育・研究全体のレベルが上がっていくことを期待しています。お互いの研究成果を見ることはいい刺激になるはずです。相互の理解や批判もあるでしょうし、研究室間の共同研究などの新たな取り組みが始まるかもしれません。下級生たちにとっても、発表会は農学の全貌を知り、自分が勉強していることがどういう意味を持つのかを知るいい機会になるはずです。合同研究発表会でお互いの努力をたたえ合い、論文の仕上げに生かしてほしいと思います。

――これからの農学部の課題は何でしょう。

 農場を活用した実習教育の充実だと思います。「生命、食料、環境」について学ぶ農学部では授業と研究室での実験、そして現場体験が大切です。本学の農場は春日井市にあり、生物資源学科は1、2年生が週3回の農場実習をしています。応用生物化学科は集中形式で、生物環境学科はより広いフィールドでの調査の一環で農場を利用しています。宿泊実習もあり、日本の私立大学ではこれだけの施設を持つ大学は少なく、ぜひ強みとして生かしていければと思います。現実的には老朽施設の建て替えが必要です。

――学生たちと一緒にお酒を飲む機会もあるのですか。

 飲みます。学生たちがわいわい言い合って飲んでいるのを見ながら飲むだけで楽しくなります。同じ店で飲んでいる隣の学生たちを見ていると、イッキ、イッキと声が上がったと思うと静かになり、しばらくしてまたイッキ、イッキを繰り返すグループもあります。せっかく酒を酌み交わしているのに会話する力ができていない、コミュニケーション力がないわけですね。もったいないと思います。

――学生たちへのアドバイスをお願いします。

 勉強をしっかりやるのは当然ですが、遊ぶときはたっぷり遊び、いろんな経験をしてほしいと思います。大学で学んだ知識や技術は、長い人生では基礎的なものです。社会に出れば自分の意識を根本的に問い直さなければならない場面がたくさん出てきます。大学を出てからの人生の方が圧倒的に長いわけで、世の中はどんどん変わっていきます。その中でどう新しいことを学んでいくかが大切になります。学生時代にできるだけ多くの体験をして、常に新しいことを学んでいく力をつけてほしいと思います。

大場 正春(おおば・まさはる)

静岡県出身。大阪市立大学理学部卒、同大大学院理学研究科(修士)、北海道大学大学院理学研究科化学専攻博士後期課程修了。理学博士。名城大学農学部助教授を経て教授。2009年4月から農学部長。日本化学会、農芸化学会などに所属。59歳。趣味は川釣り。

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