育て達人第055回 石原 荘一

「エンジン研究48年」で最終講義   冷静に自分を見つめ進路決定を

理工学部 石原 荘一 教授(エンジン)

 卒業の季節は学生たちだけではありません。本学では3月、24人の教員が定年などで教壇に別れを告げます。理工学部の石原荘一教授もその一人。3月6日には最終講義「内燃エンジン小研究の48年」も予定されており、40年の教員生活を締めくくります。

――工業高校から本学理工学部に進まれたわけですね。

「名城大学で40年間教え続けられたことに感謝しています」と語る石原教授

「名城大学で40年間教え続けられたことに感謝しています」と語る石原教授

 三重県の四日市工業高校機械科の出身です。親は「手に職をつけてほしい」と願ったのでしょう。戦後の高度経済成長期で、多くの親がそう考える時代だったようです。教えていただいた非常勤講師の先生が名城大学の非常勤講師も兼ねていて、大学進学を勧めてくれました。高校、大学、大学院までずっとエンジンとかかわってきました。名城大学で教壇に立ったのは1970年4月からですからちょうど40年の教員生活になります。学部においては「エンジン」を講義し、大学院では「エネルギー科学」(修士課程)、「熱現象計測」(博士課程)を担当してきました。

――エンジン研究一筋の人生を振り返っての感想をお聞かせ下さい。

 教員生活の前に明治大学での大学院生活が8年あります。2サイクルエンジンの世界的権威である富塚清先生らから教えを受けました。富塚先生は現在の東京大学の機械の先生方も育てられた方ですが、当時、定年2年前で、私は「最後の弟子」ということで育てていただきました。工業高校でモノ作りの教育を叩き込まれていたこともあり、脱線することなくエンジンの研究を続けることができました。富塚先生をはじめ、素晴らしい先生方と出会えた幸せを感じます。大学院時代と合わせて48年間、内燃エンジンの研究をすることができたこと、そして好きな授業をさせてもらったことに感謝の気持ちでいっぱいです。

――最近の学生はゲーム機世代です。エンジンへの関心はどうですか。

 交通科学科に入学してくる学生は乗り物好きです。車好き、特にF1に興味のある学生もたくさんいます。エンジンを学ぶことは基本であり、抵抗感はないと思います。専門の授業が始まる2年生がまず体験するのはエンジンの組み立てですが、学生たちは油にまみれるのを嫌がりません。与えられた課題にはすごく熱心です。

――エンジニア希望学生のための求人・就職学」(新理工評論出版)という本を書かれ、学内書店でも発売中です。長年、学生の就職活動をサポートしてきた立場だから書ける内容だと思いました。

 私は40年間エンジン、モノづくりを教える一方で、学生と共にエンジンについて考え、一緒に実験してきました。指導してきた学生たちはどこかへ就職しなければならないわけですから、その手伝いもしてきました。せっかくのチャンスでもあったので、学生が入社しようという会社に一緒に出かけ、いろんな会社や工場、機械、施設を見させてもらってきました。そうした経験を積むことで、学生個々によってどんな企業に紹介したらよいかというコツもつかめたと思いますし、企業が求める人材像も知ることができました。

――就職活動のサポートを続けてきて感じる大きな変化は何でしょう。

 昔の理工学部の各研究室は企業の求人活動の窓口でした。電話で「だれかいませんか」と求められ、「この会社ならいいな」と思えばその場で学生を指さして決めたこともあります。「先生は1秒もかけないで人の一生を決めた」と教え子の結婚式で冷やかされたこともありますが、紹介での失敗例はありません。現在は、就職活動は基本的にキャリアセンターが窓口ですが、もちろんまだ企業の人事担当者たちとの付き合いもあります。最近はウェブ情報が全盛となり、学生の気質もだいぶ変わりました。企業の採用担当者も若い人が多くなり、人間的なつながりが重視された時代とは大きく様変わりした気がします。

――3月6日には最終講義が予定されています。

 教え子たちが準備してくれ、2月中旬現在で360人の参加申し込みがあるそうです。テーマは「内燃エンジン小研究の48年」です。すでに定年退職された方々も含めた年輩の卒業生の皆さんもわざわざ足を運んでくださるそうで、ありがたく思っています。名城大学での生活を終えるにあたって、子どものころ、友達と夜空を見上げて、「あれが1等星」「あの辺が3等星」と指さしていた情景をよく思い浮かべます。研究者としての私はけして1等星ではなく4等星くらいの輝きくらいしかなかったかも知れませんが、私の記憶する名城大学の最終講義では考えられないくらいの多くの皆さんに見守られて最後の講義ができることに無上の喜びを感じます。

――学生たちにも一言お願いします。

 キャンパスがきれいなこともあってか本学の学生たちはきれい好きでまじめです。「名城ならほしい」という企業はたくさんあります。進路を決めるにあたっては自信を持ち、独りよがりにならず、冷静に自分を見つめたうえで決断して下さい。

石原 荘一(いしはら・そういち)

三重県桑名市出身。名城大学理工学部機械工学科卒。明治大学大学院工学研究科機械工学専攻博士課程修了。工学博士。1970年4月から名城大学理工学部講師。87年から教授。理工学部就職委員、学生委員会委員長など歴任。72歳。

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