育て達人第066回 加茂 省三

1930年代の日本のアフリカ進出で新資料   世界を広げるアンテナを延ばそう

人間学部 加茂 省三 准教授

 人間学部の加茂省三准教授の専門は国際関係論で、アフリカについてフランス外交との関係から研究を続けています。昨年度はパリ政治学院に留学し、1930年代の日本のアフリカ進出の経過について調査。フランスが日本のアフリカ進出に注目し、警戒感まで抱いたことを示す資料を発掘するなど、新たな視点での研究にも取り組んでいます。

――アフリカ研究に興味を持ったきっかけを教えて下さい。

「世界の情報を集めるのに有効なのは何と言ってもメディアの活用」と語る加茂准教授(壁の写真は加茂准教授が撮影)

「世界の情報を集めるのに有効なのは何と言ってもメディアの活用」と語る加茂准教授(壁の写真は加茂准教授が撮影)

 高校が大学付属ということもあり、興味深い授業も行われていました。地理の授業では岩波新書の「バナナと日本人」を読み、安くて甘いバナナもひと皮むけば、多国籍企業の暗躍など南北問題の存在があることを知りました。小学5年生の時、父の仕事の関係で過ごしたメキシコで見た靴磨きや物乞いの少年たちのイメージとも重なり、大学では国際政治を通した南北問題を学ぼうと思いました。大学にはアフリカ、中国、東南アジア、ラテンアメリカなどを専門とする多彩な先生たちがそろっていましたが、アフリカ研究の第一人者である小田英郎先生に惹かれてアフリカ研究を選びました。

――アフリカをフランス外交との関連で研究したのは植民地政策との関係ですか。

 学部の卒論ではセネガル共和国初代大統領のサンゴールを取り上げました。フランス語に堪能で、詩人としても著名な文化人でもある指導者です。アフリカ的な考えを主張した反面、非常にフランスの影響を受けた人で、サンゴールとセネガルの研究を深めるには植民地として統治したフランスとの縁は切れないと思いました。小田先生の助言もあり、大学院ではセネガルなどアフリカ諸国の約4割を占めるフランス語を公用語とするフランス語圏諸国とフランスとの関係について、時期的には第2次大戦の少し前から、ドゴール、ポンピドー両大統領の時代までに焦点をあて研究しました。

――在フランス日本大使館専門調査員を3年されていますが、どういう仕事ですか。

 日本の外交政策を充実させるために民間人の専門知識も反映させようという外務省のポストです。1999年から3年間、パリの日本大使館に勤務し、情報収集のような調査活動に加えて、外交交渉や大使館の業務といった実務的な仕事もしました。私のポストはフランスのアフリカ外交に関わることでしたので、自分の専門的な知識を生かしてその分野でいろいろな人と出会い、大学の研究室では得られない人たちや研究者たちとのネットワークをつくることができました。

――昨年度1年間のパリ政治学院への留学ではどういう研究をされたのですか。

 日本は昭和初期の1930年代、アフリカに進出し始めます。1936年にエチオピアと外交関係を樹立しましたが、これは日本がアフリカの国と最初に外交関係を樹立したケースです。当時のエチオピアは皇帝が治める国でしたから、皇室同士の付き合いもありました。また南アフリカや東アフリカを中心に日本の繊維製品を売り込む貿易活動を本格的に展開し始めたのもこの時期でした。日本とアフリカの歴史的な関係を考える上でこの時期は非常に重要なのですがこの分野での研究は十分に進んでいるとはいえない状況です。今回の留学機会を生かし、フランス国内の多くの図書館や史料館をあたったところ、南フランスにあるフランス国立公文書館の植民地分館に貴重な史料が所蔵されていることを発見し収集してきました。現在、収集した資料の分析、研究に取り組んでいますが、当時のフランスが日本のアフリカ進出に注目し警戒感まで示していたことが記されています。こういった事実はこれまで全く明らかにされていなかった点で、知的関心を大いに刺激させられています。フランスのアフリカ外交研究に関しても新しい発見がありました。

――1年ぶりに名城大学に帰り、感じていることはありまか。

 まじめな学生が多いので、さらに自分の世界を広げるためのアンテナを延ばしてほしいと思います。授業では、学生たちが国際社会への窓を広げるきっかけになればと、フランスで撮影してきたフランス社会の様子や、国連の活動、アフリカ問題を扱ったドキュメント番組なども紹介しています。国際社会に興味を持ち、アフリカや発展途上国について勉強してみようという学生たちがどんどん出てくるのを期待しています。

――自分のアンテナを延ばす最も効果的方法はなんでしょう。

 もちろん、直接海外に出向き、自分の目で見て、体験してくることが一番ですが、日常的に有効な方法はメディアの活用です。毎日配達される新聞は身近な教材ですが、人間学部の資料室では、世界の主要紙に掲載された話題記事を日本語で採録した月刊誌も定期購読しています。バックナンバーも図書館で見ることもできます。海外メディアの日本語版に興味を持ったら次は原文でニュースを読むことにトライして下さい。インターネットを使えばいくらでもリアルな情報に近づくことができます。

加茂 省三(かも・しょうぞう)

東京都出身。慶応義塾大学法学部政治学科卒。同大学大学院法学研究科後期博士課程単位取得満期退学。フランス・ボルドー政治学院D.E.A取得。在フランス日本大使館専門調査員などを経て2005年に名城大学講師。2009年から現職。専門は国際関係論、フランス外交、アフリカ現代政治。著書に「アフリカ国家を再考する」(共著)など。40歳。

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