育て達人第067回 平野 雅子

資格取得での全力投球が大きな財産に   発想の転換で攻めの工夫も大切

エクステンション講座(旅行業務取扱管理者) 平野 雅子 講師

 名城大学では公務員試験や資格試験に挑戦し、将来の職業選択の可能性を広げようという学生のためにエクステンション講座を開講しています。今年度も65の講座を約3000人が受講しています。旅行業務取扱管理者講座を担当して10年目の平野雅子講師に、厳しい就職戦線に立ち向かう学生たちへのエールを送っていただきました。

――旅行業務取扱管理者とはどういう資格ですか。

「コミュニケーション力は絶対必要」と語る平野さん

「コミュニケーション力は絶対必要」と語る平野さん

 旅行業界への就職を目指す人はぜひ取っておいてほしい国家資格です。旅行業務管理者には、旅行者との契約の締結から書面の交付、旅行における広告など業務が円滑、公平に行われるよう管理、監督することなどが求められます。法令や実務だけでなく国内、海外の地理や名所まで幅広く学習しますので、学部を問わず、「旅が好き」という方にお勧めの資格ですが、必要とされる知識の絶対量が多く、結構ハードな資格です。簡単に取れる資格ではない分、取ることで次の自信につながるのは間違いありません。旅行業は仕事ができれば男女関係なく頑張れる仕事です。

――合格率はどれくらいですか。

 国家試験は毎年9月に国内旅行業務取扱管理者試験が、10月には海外旅行業務取扱管理者の資格も合わせて取得できる総合旅行業務取扱管理者試験が行われます。2009年度の合格率は国内40.1%、総合15.1%でした。名城大学生の合格率は毎年、全国平均を大きく上回っており、昨年の国内は80%を超えています。この資格を取ったから就職に特に有利というわけではありませんが、「こんなに頑張ったのは初めて」という学生たちが目立ちます。今年の受講者は38人で男女ほぼ半々。他大学に比べて男子受講者が多いのが特徴です。

――試験前には神社で合格祈願をし、全員にお守りを配り、試験会場に出向きエールを送ると聞きましたが。

 私が名城大でこの講座を最初に持ったのが2001年ですが、受講者は3年生、2年生の計19人でした。旅行会社に就職したのは4人で、多くは直接、旅行とは関係ない分野に就職しましたが、資格を取るために全力投球した経験が大きな財産になっていると思います。今では講座の卒業生も300人を超え、卒業生が中心となって「平野道場」という名のコミュニティーができ、旅行・飲み会等々の企画のみならず、現役学生の試験対策、就活にも尽力してくれます。

――旅行社で仕事をしたいというのは学生時代からの夢だったのですか。

 旅が好きで旅行社にあこがれましたが、私の卒業時も大変な就職難の時代でした。特に女子学生は大苦戦を強いられ、就職部も「自分で探しなさい」というほど。運よく日本交通公社(JTBの前身)の中部営業本部(名古屋)に採用していただき16年間、勤務しました。店頭業務や旅行商品をつくる企画部門、営業部門などいろんな仕事を担当しました。

――いろんな場面でのコミュニケーション力が必要ですね。

 そのとおりです。私が対応したツアー客の9割は日本人ということもあり、語学的なことより、いろんな分野の知識やコミュニケーション力の大切さを痛感しました。サッカーが好き、ベートーベンが好き、美術館が好き、史跡巡りが好きなど旅行客の興味は多様です。どんな話題にもある程度はついていけることが重要になります。さらにコミュニケーション力が問われるのは台風などの災害や突発事故が発生した場合です。ツアーの大幅な変更が求められるわけで、客や家族との連絡、海外も含めた旅行社スタッフ間の迅速な対応が急務となります。1994 年4月26日、ゴールデンウイークを前に起きた名古屋空港での中華航空機墜落事故では、空港閉鎖に伴い予定していたツアーをどうするかの対応で大変でした。エクステンション講座では、こうした体験も交え、コミュニケーション力の大切さを語っています。

――学生たちは厳しい就職戦線に立たされています。

 受講生の多くは10月までは国家試験に全力投球して、それから就職活動に入っていきます。受講後も国家試験だけでなく、就活のアドバイスを求めてくる学生もいますが、メールでの相談にも応じるなど、全力で応援したいと思っています。ご指摘のように、厳しい経済情勢もあり、多くの学生たちが苦戦を強いられていますね。ただ、「ここでなければだめ」と決め込むことでうまくいかないケースもあります。ちょっと視野を広げて発想を転換させ、攻め方を工夫することでチャンスが広がることもあります。臨機応変に視野が切り替えられるようになるにはいろんな体験が役立ちます。本格的な就職活動を始める前に、仲間と車で日本一周するとか、思い切り弾けた学生生活も送ってほしいですね。

平野 雅子(ひらの・まさこ)

愛知県北名古屋市出身。南山大学文学部仏文学科卒。日本交通公社社員として1981年~97年勤務。2001年から名城大学エクステンションセンター講師。JTBサポート中部に所属し、旅行業界向け研修や学生や若年層向けキャリアアップ講座など幅広い研修を担当。

  • 情報工学部始動
  • 社会連携センターPLAT
  • MS-26 学びのコミュニティ