育て達人第070回 奥出 宗重

東京~大阪14分 夢の音速滑走体に挑む   逃げずに立ち向かう姿勢が大事

学務センター長 理工学部 奥出 宗重 教授(流体力学)

 新学期。夏休み前と比べキャンパスの様子が少し変わったことに気づいた皆さんもいると思います。タワー75の3、4階にある学務センターのリニューアル、午後1時になると流れる学歌のメロディーです。「学生にもっと元気になってもらおう」という対策に取り組んでいる学務センターの奥出宗重センター長にお話を聞きました。

――夏休み明けから、タワー75の学務センターの窓口配置が変わりました。狙いを教えて下さい。

「人は節目で成長する。苦しい時には我慢しなければ」と語る奥出センター長

「人は節目で成長する。苦しい時には我慢しなければ」と語る奥出センター長

 これまで学部窓口は3階、大学院窓口は4階に置かれていましたが、大学院の一部を除き3階フロアに1本化しました。学部から大学院までの教務系事務が一貫の流れとして対応できるようになり、学生・教員の皆さんにより身近なものとなりました。4階は課外活動や奨学金など学生支援窓口が中心となりました。今回のレイアウト変更は、学生にとってより利用しやすい事務組織となるための改革の第1段階です。さらに教員にとっても便利になるよう第2段階の改革を考えていきたいと思っています。

――学務センター長に就任されて4年目。振り返っての感想をお聞かせ下さい。

 私も名城大学OBですが、学生生活と向き合ってきて感じるのは学生たちが年々大人しくなってきていることです。我々の学生時代は、どんどん自分でものを言った気がします。その代わり、先生から厳しい指導を受け、受け入れなければならないと思った時は耐えました。しかし、最近は自分の考えをはっきり言わない、自分をぶつけようとしない学生が目立ちます。もっと元気になってもらいたいと思います。

――多くの大学に共通する傾向ですが、中途退学する学生も増えています。大人しい学生が増えていることと関係があるのでしょうか。

 学務センターとしてもこの4年間、名城大学の傾向を調べています。退学率(除籍率)は全国的に見るとそんなに悪い数字ではありませんが、退学・除籍者の60%程度が留年を経験していました。退学・除籍率を下げるには留年しないように指導することが大切です。私の授業を受けている学生を見ていても、やはり、ちょっと成績が悪いと落ち込んでしまう学生が目立ちます。心が弱くなっているのかも知れません。試験成績や単位の取得状況など、学務センターで把握したデータを各学部長に回して説明したこともありますが、今後も学務センターと各学部との連携がますます重要になってくると思います。

――学生を元気にさせる方法は何かお考えですか。

 学生がよく利用する学務センター窓口の改善もそうですが、後期の新学期から、昼休みに学歌のメロディーを流しています。名城大学で学ぶことに誇りを持てる環境づくりの一つとして考えました。タワー75、共通講義棟(北、南)で午後1時から流しています。メロディーを何回も耳にするうちに、「朝日に匂う鈴鹿嶺、希望に燃ゆる若人が~」と自然に口ずさんでもらえればと期待しています。

――高校を卒業して機械工学科を選んだ理由はなんですか。

 機械もの、いわゆる、モノづくりが好きだったからです。この地方は自動車関係の企業が多く、当時も就職に有利な機械系は人気でした。理工学部を卒業して岐阜大学の大学院に進み、精密機械を専攻しました。修了後は名城大学に助手として戻りましたが、担当させられたのが当時、乗客1000人を乗せ、東京~大阪間を時速2500キロ(マッハ1.98)、わずか14分で結ぼうという「音速滑走体」の実用化を目指していた小沢久之亟(おざわきゅうのじょう)教授のもとでの走行実験でした。

――「音速滑走体」の実現の可能性はあったのですか。

 昭和34年(1959)から行われていた走行実験に加わり、小沢先生の指揮で鍋田干拓地(愛知県弥富市)や農学部の鷹来キャンパス(同県春日井市)で実験に当たりました。鍋田干拓地では1600mのコースで、報道陣も見守る中での実験が続きました。10年かけての実験では、火薬力で発射した滑走体は170mで真空パイプに入り、563mで時速2535キロに達するまでになりました。しかし、衝撃波、重力、パイプ壁への衝突を回避する技術など課題は多く、小沢先生が亡くなられ実験も終わりました。騒音、公害のない「弾丸列車」に憧れて入学してくる学生もたくさんいました。私は今でも、原理的には不可能ではないと思っています。

――当時の元気のいい理工学部の熱気が伝わってくる気がします。今の学生たちが元気の出る学生生活を送るためのアドバイスをお願いします。

 頑張らなければならない時に頑張ることです。苦しいと感じる時、集中してやらなければならない時には逃げずに我慢し、立ち向かう姿勢が大事です。忍耐力をつけなさいということですね。

2号館(理工学部)に展示してある「音速滑走体」の模型。 小沢教授の定年退職記念として1978年に制作された。

2号館(理工学部)に展示してある「音速滑走体」の模型。 小沢教授の定年退職記念として1978年に制作された。

奥出 宗重(おくで・むねしげ)

奈良県出身。名城大学理工学部機械工学科卒、岐阜大学大学院工学研究科精密工学専攻修士課程修了。工学博士(東京大学)。名城大学助手、助教授を経て現職。情報センター長などを歴任し2007年4月から学務センター長。専門は流体力学、航空工学。69歳。

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