育て達人第071回 田中 武憲
学生を鍛える同志社大学との合同ゼミ 自分を伸ばそうという意欲を大切に
経営学部国際経営学科長 田中 武憲 教授(国際経営論)
経営学部教授の田中武憲ゼミが同志社大学との合同ゼミを始めて今年で7回目になります。全て学生たちの手で運営される合同ゼミは、お互いのゼミの1年間の集大成でもあり、京都と名古屋で1年おきに開催され、今年も12月に同志社大学で開催されます。白熱のディベートもある“他流試合”はゼミ生たちの大きな自信につながっているようです。
――経営学部は夏休みにフランスでの「国際フィールドワーク」を行いました。学生たちの反応はいかがでしたか。
「合同ゼミで学生たちはどんどん伸びています」と語る田中教授
9月1日から13日まで、2、3年生を中心に20人が参加しました。経営学部の海外実習科目はフランスと中国で隔年実施していますが、今年のフランスは大規模なストと重なり、前々回と前回の訪問調査で好評だった次世代小型車「スマート」を生産するスマート社の訪問はできませんでした。しかし、実習前半の拠点のナンシーにある世界的にも有名なドーム社のガラス工房を訪問調査することができました。また、今年は「円高ユーロ安」の恩恵で学生も割安に過ごせましたが、フランスではたとえば安いチョコレートの付加価値税(消費税)が5.5%に対して高級ブランドのチョコだと19.6%です。学生たちは為替レートや消費税についても現地ならではの体験をすることができたと思います。
――厳しい雇用情勢の日本では学生たちの就活も大変です。フランスはどうでしたか。
経済の厳しさという点では2年前のリーマンショック以降、日本やヨーロッパだけでなく、今年訪れた台湾やタイも中国も、世界中どこも同じだと思います。現在の就職活動の厳しさは、企業の国境を越えたグローバルな人材獲得競争であるという意識を持つことが日本の学生には必要だと感じます。
――経済学に関心を持ったのはいつごろからですか。
高校までは自動車などの機械に興味があり、大学も理系志望でした。高3だった1989年、日本は昭和から平成に移り、バブル経済期でした。また、世界はベルリンの壁の崩壊、天安門事件と大きく揺れ動きました。もともと社会科学への関心は強い方でしたが、世界が激動する様子に大きな刺激を受けて進路を変え、大学は経済学部ばかり受験しました。時代のテンポが1年遅れていたらそのまま理系の分野に進んでいたと思います。
――同志社大学との合同ゼミが学生たちには大人気のようですね。
同志社は出身大学なので教員に知り合いも多く、情報交換をしている中で合同ゼミのアイデアが自然に生まれました。お互いの担当ゼミの集大成として7年前から京都と名古屋で毎年交互に実施しています。今年は同志社大で12月18、19日に開催予定です。名城大は私の2、3年生のゼミ生が参加し、同志社からは経済学部の2つのゼミに所属する3年生が参加します。開催日の決定と班づくりだけは教員がやりますが、発表するテーマの決定や運営、打ち上げまであとは全て学生たちに任せています。学会報告の形式で行う班もあればディベート形式の班もあります。名城大で開催した昨年の参加者は名城が30人、同志社が60人近くで、私のゼミでは地元ということで愛知の経済やトヨタ自動車をテーマに発表を行いました。
――合同ゼミを通じて学生たちの交流も深まっていると聞きました。
その通りです。学生たちにとっては他大学の学生との出会いはいい刺激になり、新しい友を得るチャンスでもあります。就活の情報交換をしている学生もいます。合同ゼミを始めた当初は、同志社ブランドに引け目を感じる名城大生もいましたし、討論を聞いていてそのような様子も見受けられました。しかし、最近は全くそんなことは感じません。名城の学生たちはどんどん伸びているなと実感しています。学生たちが他流試合を通して研究面だけでなく、精神的にも鍛えられ、当初の期待以上の成果を生み出しつつあります。
――学生が元気になれるためのアドバイスをお願いします。
最近、気になっているのは、学生たちが自分で苦労して何事でもとにかく体験してみることへの意欲や関心が薄くなっているということです。普段からネットでの情報収集に頼り、就職活動をして初めて実社会というものを体験し、挫折するようでは困ります。現状に満足することなく、積極的に外の世界に目を向けてほしいと思います。一番大切なのは自分を伸ばそうという意識があるかどうかです。我々教員は、学生が方向性で迷った時にアドバイスをしてあげることはできますが、まず大切なのは本人のやる気や意識です。自分を伸ばそうという学生がどんどん増えてくることを期待しています。
活発な意見が交わされた昨年の同志社大学との合同ゼミ(名城大学で)
田中 武憲(たなか・たけのり)
奈良県出身。同志社大学経済学部卒。同大大学院経済学研究科博士後期課程満期退学。1999年に名城大学商学部専任講師。経営学部への改組後、専任講師、助教授、准教授を経て2009年から教授。専門は国際経営論、自動車産業論。地域産業集積研究所に所属し、愛知県のみならず九州や山陰、東北地方、海外などで現地調査活動を続けている。38歳。