育て達人第075回 片山 信吾

着実に増える教員採用試験での現役合格者   学生時代にたくましさを磨いてほしい

教職センター 片山 信吾 准教授(教育行政学)

 本学出身の公立学校教員採用試験での合格者が増えています。2010年度は75人(現役25人、既卒50人)で、中学校英語教員として初の現役合格者も出ました。2011年度速報でも合格者は90人(現役19人、既卒71人)に達しており、現役合格者の躍進が目立ちます。教員志望学生たちの指導にあたる教職センターの片山信吾准教授に聞きました。

――どんな学生時代でしたか

「学生時代にはいろんなことに挑戦し、懐の深い教師を目指してほしい」と語る片山准教授

「学生時代にはいろんなことに挑戦し、懐の深い教師を目指してほしい」と語る片山准教授

 障害児教育にかかわるボランティアサークルをやっていて、卒論でも障害児の就学問題を扱いました。時代ごとの教育政策に興味を持っていましたが、名古屋大学には鈴木英一先生という戦後教育改革が専門の教授がおられ、大学院で指導していただきました。歴史、学説、外国研究のどれかをじっくり研究したうえで、それを土台に現状分析に入るべきだと助言をいただき、取り組んだのがイギリスの教育行政です。戦時中に戦後の教育改革を定めた1944年教育法のあたりから時代区分を設定して研究を積み上げてきました。

――12月18日に行われた大学・学校づくり研究科の定例研究会では「学校運営協議会で学校運営はどう変わるのか~委員としての活動の経験から」というテーマで報告されました。

 学校運営協議会は地域社会が公立学校の運営にかかわるにあたって中核をなす制度です。たまたま2年前、愛知県のある小学校の運営協議会の委員になり、経験を通して気づいたことを報告しました。地域の運営といっても、人事とか財政、教育方針について権限があるわけではありませんが、地域が学校をどう育てていくかを考える意味でいい制度だと思います。研究者が文献で判断するだけでは得られないことを学ぶことができましたし、地域の皆さんの学校への愛着、先生方の日頃の姿も見えてきました。

――教職センターで教師をめざす学生たちを指導されて6年目ですが、名城育ちの先生は増えているのでしょうか。

 2010年度採用の公立学校教員採用試験合格者は75人で、既卒者50人、現役合格者が25人です。25人の内訳は愛知県13人、名古屋市2人、岐阜県3人、神奈川、静岡県各2人、三重、長野県、京都府各1人。現役合格者は08年度10人、09年度16人でしたので順調に増えています。私が教職センターに赴任当時の現役合格者はずっと1桁でしたから大変な増加ぶりです。団塊世代の先生方がどっと退職されたこともあったのでしょう、現場で講師として頑張ってきた既卒者の方々の合格も増えました。11年度採用でもすでに90人(既卒71人、現役19人)の合格が判明しており、最終的には100人を超すと思います。

――学部別の合格者で多いのはやはり理工学部ですか。

 そうです。理工学部数学科で、2010年度採用も中学、高校の数学での合格が増加しました。理工学部だけでなく、10年度は人間学部からは中学校英語の合格者が愛知県で出ました。英語での合格は03年4月に教職センター発足以来初めてです。11年度採用では法学部、経済学部から社会、農学部からは理科での合格者も出ました。このほか、既卒者が中心ですが09年~11年で32人が小学校に合格しました。通信教育などで資格を取っての挑戦です。こうした目覚ましい実績もあり、合格祝賀会もささやかな会ではおさまらなくなり、3月にタワー75で盛大にやるようになりました。

――教職センターの先生方がそれぞれ開いている勉強会も活発ですね

 とりあえず教員免許は取ろうという学生もいて、どうしても教職科目の授業規模は大きくなってしまいます。このため、教職一本に絞って採用試験を目指す学生たちに対しては、教職センターの先生方、人間学部の有志教員、愛知県の現職高校教員などで勉強会が開かれています。熱心な先生がそろっていますので小論文の指導などにも力を入れています。現役合格者たちはいずれも勉強会で学び、13号館にある教職センターにひんぱんに出入りしている学生たちです。名城育ちの教員が増えているということは受験生にも伝わっているようで、教員志望の意思を強く持って入学してくる学生たちは確実に増えています。

――教員志望の学生たちへの注文をお聞かせ下さい。

 学校現場では、子供たちが抱える問題も複雑化しています。保護者からの注文もエスカレートする一方で、教師の仕事は多忙を極めています。純粋な気持ちで教職に就いても重圧に耐えきれず教壇を去る教師も増えています。短期間の教育実習では体験しなかった困難と向き合わなければなりません。そういう時に必要な教師力は、授業や勉強会だけで得られるわけではありません。何よりもいざという時に立ち向かえるたくましさと、相談し合える人間関係が築ける力が大切です。学生時代に部活やサークル活動などにも励むことでそうした力をつけ、人の気持ちが分かる、懐の深い教師をめざしてほしいと思います。

片山 信吾(かたやま・しんご)

愛知県出身。名古屋大学教育学部卒、同大大学院教育学研究科博士課程単位取得退学。2005年に名城大学教職センター講師となり現職。専門は教育行政学。共著に「学校のための法学―自律的・協同的な学校をめざして」「現代教育と教師」など。大学院大学・学校づくり研究科では生涯学習論特殊講義を担当。43歳。

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