育て達人第082回 中山 春子

63歳で夢がかなった   あこがれだった大学卒業の春

2010年度人間学部卒業生 中山春子さん

 3月18日に行われた2010年度卒業式。3586人の卒業・修了生の中に、4年前に人間学部に入学した名古屋市南区の主婦中山春子さん(63)の姿がありました。夫とともに電気設備工事の会社を切り盛りしながら、長年の夢だった「大学での学び」を終えた中山さん。「夢はいつかかなう」と信じ続け、若い学生たちとともに迎えた喜びの春でした。

――4年前、名城大学入学を思い立った経緯を教えて下さい。

「楽しく充実した学生生活でした」と語る中山さん

「楽しく充実した学生生活でした」と語る中山さん

 私は団塊世代ですが、高校へは進学せずに専門学校で簿記とタイプを学び就職しました。中学校の先生の進路指導に反発したんですね。就職先は商社。社員のほとんどが大卒で、外国の大学を出ている人もいました。そうした職場で仕事をしながら、知識や教養を深め、世界観を広げてくれる大学生活にあこがれました。しかし結婚してからは、夫の経営する電気設備工事会社の経理などの手伝いを続けました。夫が身一つで起こした会社には、多い時は30人近い従業員がいました。信用を得るには立ち止まることはできず懸命でした。仕事が一段落し、2人の息子もそれぞれ仕事に就くようになると、心の片隅に置いていた大学生活を体験してみたいという思いがもたげてきました。

――大学に入るには高卒資格が必要ですね。

 大検(大学入学資格検定)も考えましたが、同世代の多くが体験している高校生活も、遅ればせながら体験しました。向陽高校定時制では80歳を超えてなお向学心旺盛な方、学びの場で挫折し、心に傷を持つ子らも見てきました。先生方はみな熱心で、大学進学を目指す生徒にはまるで家庭教師のような指導をしてくれました。私にとってこの期間は、教育の場とは何か、指導する力、生徒の家庭環境、生徒本人の自覚と弱さ、格差社会とか、いろんなことを考えさせられ、すごく勉強になりました。

――大学では若い学生たちとうまく付き合えましたか。

 定時制高校でも若い子たちと一緒に勉強してきましたので、大学でもスムーズにやれるとは思っていました。まず感じたのは、学生とは何と恵まれた子たちなのだろうという点です。100万円を超す学費は、親が「入ってほしいから」と出してくれているわけですから。初めて入った図書館では「何でもそろっているんだ」と感動しました。何しろ私は晩学の身。講義を聞いて何かを覚えたつもりでも、口に出して言おうと思った時には忘れてしまっている年代です。ただ、幸いなことに優しいクラスメイトたちに恵まれました。「ハルちゃん、この前習ったのにもう忘れたの」「でも忘れるんだよ」「マジ?」。そんな日々でした。若い子たちに励まされ、試験前には図書館で午後10時の閉館ぎりぎりまで勉強もしました。我が家に泊まりに来て、主人が入院した時には見舞いに来てくれた子たちもいました。

――学生生活は充実しましたか。

 充実しました。家業の経営に役立てようと経済学部の授業にも出ました。専門として学んだのは心理学です。機会があったら不登校や、学校に行けなかった子たちをサポートしてやれたらと思ったからです。英語サークルの「楽読クラブ」にも入れてもらい、名城大学Dayでの紙芝居劇「リトルチャロ」では、おせっかいで陽気な犬、マルガリータ役を演じました。マシンガントークの場面もあり猛練習しました。中身の濃い4年間でしたが3年生の時の6月、夫が病気で倒れ、一時は休学も考えました。しかし、ここで中断したらもう一生、大学には戻れないだろうと自分に言い聞かせ、通い続けました。もちろんクラスの仲間や先生方にも励ましていただき、胸にしみる言葉に涙ぐみながら、自分の経験をもとに、脳血管障害者を家族に持つ場合の介護における精神状態や心理不安を集計分析し卒論を仕上げました。

――学生たちにとっては頼りがいのあるクラスメイトだったのでは。

 就職活動では、成績も人柄も申し分ない学生たちが苦戦していて、本当にかわいそうでした。「最終選考でダメだったの」と落胆して寄ってくる学生に、「面接でうまく話せなくても、それは個性だからいいんだよ。しっかりした個性と真面目さがあれば、採用する方だってバカじゃないし」と励ますのですが、「でも、今は時代が違うのよ」と声を落す学生もいました。学生たちには本当に気の毒な時代です。頼りにならない相談相手でしたが「ハルちゃんありがとう」と言ってもらえるとうれしかったですね。

――卒業生となった立場から学生たちへのエールをお願いします。

 私は「I Have a Dream」という言葉が好きです。「私には夢がある」という故キング牧師の言葉です。夫とオーストラリア、ニュージーランドなど海外でスカイダイビングやスキューバーに挑戦するという夢も実現させてきました。名城大学では、夢だった学生生活を実現できました。勉強することが負担に感じた時は、「楽しんでいないぞ」と、勉強に集中できていない自分を戒めました。学生の皆さんは、親から学ぶチャンスを与えてもらった幸せ、親の苦労をかみしめ、4年間という学びの時間を大切にしてほしいと思います。そして、最後まで夢を追い続けて下さい。追い続ければ夢はきっとかないます。

愛知県体育館での卒業式前の中山さん

愛知県体育館での卒業式前の中山さん

「楽読クラブ」でのお別れ会に臨んだ中山さん

「楽読クラブ」でのお別れ会に臨んだ中山さん

中山 春子(なかやま・はるこ)

名古屋市南区出身。夫の経営する電気設備工事会社を手伝いながら59歳で名城大学人間学部に入学。2011年3月卒業。在学中は英語サークル「楽読クラブ」と茶道部に所属。学生たちからは「ハルちゃん」と慕われ、イエローヘアーと和服スタイルも貫いた。63歳。

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