育て達人第090回 生田 京子

被災地の高齢者用福祉施設に注目   フレンドリーで刺激し合う関係を

理工学部 生田 京子 准教授(建築計画)

 東日本大震災では、理工学部建築学科の生田京子准教授の研究分野である高齢者用福祉施設も大きな被害を受け多くの犠牲者を出しました。生田准教授も宮城、岩手の被災地に足を運び被災した高齢者のグループホームなどを調査しました。被災地の様子と建築を学ぶ心構えなどについて語ってもらいました。

――東日本大震災の被災地を回ってみての感想をお聞かせ下さい。

「いろんな場でしっかりとコミュニケーションを」と語る生田准教授

「いろんな場でしっかりとコミュニケーションを」と語る生田准教授

 最初に岩手県陸前高田市、宮城県気仙沼市など両県沿岸部を見て回り、2回目には仙台市周辺の高齢者福祉施設に足を運びました。仙台市若林区は完全に水浸しになりましたが、高齢者用グループホームの施設長さんにお話しを聞きました。ここでは経営する2ホームのうち1つが流されました。残ったホームの入居者は18人でしたが、流されたホームから避難した11人が合流し、さらに、子供さんが小さすぎて避難所に行けないという人も数人受け入れ、電気や水道も止まったなかで、救援物資が届かないまま3日間を過ごした話は衝撃的でした。

――高齢者用施設の入所者も大変な思いをされたのですね。

 私の専門である建築計画では、建物にどういう状況が起き、どのように使われるかという話は必ずつきまといます。18人で暮らしていたところに11人が加わり、しかも電気や水などインフラが断たれた状態で、お年寄りたちがどういう風に過ごされたかというのは、瞬間的な話ではありますが、起こりえる状況として記録しておかなければなりません。特別養護老人ホームでも、停電などにより、暮らしていたお年寄りたちが何日間か食堂で大勢で寝て過ごすなど生活環境は激変しました。ただ、訪問した時期には現地ではまだまだ落ち着いて話を聞かせてもらえる状況ではありませんでした。被災地では被災したグループホーム入居者や身寄りのない高齢者らを対象にした福祉仮設住宅の建設が進んでおり、間もなく入居が始まるはずです。福祉仮設住宅の様子は、落ち着いた段階でぜひ見に行きたいと思っています。

――建築計画は時代や社会の動きとかなり連動しているよう見えます。

 大学入試では、「何となく楽しそうだから」といった感じで建築学科を選びましたが、入学して、学んでいくごとに建築が面白くなっていきました。博士課程時代に1年ほど、福祉先進国であるデンマークに留学し、論文でテーマにしたこともあり、高齢者の福祉施設や住宅に関する研究はずっと続けていますが、福祉に限らずいろんな建物に興味を持っています。確かに建築計画という分野は行政とか社会の動きに連動する分野です。例えば小学校の新しいスタンダード(標準モデル)を作ろうということになると、教育行政や社会の動向を見ながら、ではどんな小学校がいいのかということが検討されていきます。博士課程で学んでいた当時は、高齢者福祉施設の新しいタイプの施設がほぼ1年ごとに出現していました。学んでいくごとに建築が面白くなったといいましたが、奥が深いところが面白さなのかなとも思います。一つの作品を仕上げてもまた反省点が出てきて、やりたいと思うことが出てきて、なかなか終わりがありません。

――建築の可能性という点ではいろんな勉強をしなければなりませんね

 そうです。ソフト面でどのように運用されるのか、どんな人たちが使うのかということと、ハード面でどういう風に設計するのかといことは切っても切り離せない関係です。そこに面白い発想や考え方が入ってくることで、建物はガラッと変わります。私は博士課程に進む前に大林組(東京本社設計本部)に6年勤務しました。企業での仕事は、組織の一員として取り組み、巨大ビルの建設にも挑戦したりします。一方、大学の研究室などでは、自分らしさを出しながら考えられるという点があります。どちらも広く、深い知識が必要で楽しい世界だと思います。

――生田研究室の指導方針を教えて下さい。

 研究室には3年生10人、4年生9人、大学院生3人の計22人がいて女子学生は3人です。3年生でもできるだけ大学院生と討論したり、一緒に作業するよう指導しています。3年生と大学院生とではやれることのレベルは相当違いますが、学生たちにはできるだけ早い時期に刺激を感じてほしいと思っています。私1人から先生として教わるだけではなく、周囲にはいろんな情報があるわけで、いろんな立場の人から話を聞くことで意味合いが違ってきます。フレンドリーな関係でいて刺激し合うことが大切だと思っています。

――有意義な学生生活を送るためのアドバイスをお願いします。

 いろんな人とコミュニケーションを取ることだと思います。もちろん勉強することは大切ですが、先生とは儀礼的な関係ではなく、しっかり話ができて、自分の意見も言える関係がいいと思います。そして、研究室とかいろんな環境の人たちとコミュニケーションを取りながら刺激を受けるような学生生活を送ってほしいと思います。学んだ成果を学内だけでなく世の中に問う“他流試合”にも大いに挑戦してほしいと思います。

フレンドリーで刺激し合う関係をめざす生田研究室

フレンドリーで刺激し合う関係をめざす生田研究室

生田 京子(いくた・きょうこ)

埼玉県出身。早稲田大学理工学部建築学科卒、同大大学院理工学研究科建設工学専攻(建築学)修士課程修了。大林組勤務を経て名古屋大学大学院環境学研究科都市環境学専攻博士課程修了。名古屋大学施設計画推進室准教授を経て2010年から現職。共著に「デンマークのユーザー・デモクラシー・福祉・環境・まちづくりからみる地方分権社会」など。

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