育て達人第093回 船隈 透

復興へ、被災地研究者との共同研究を支援   授業の中には自分探しのヒントがいっぱい

学術研究支援センター長 農学部 船隈 透 教授(植物生化学)

 名城大学では東日本大震災の復興支援として、生活支援、教育支援、研究支援の立場から様々な支援活動を展開中ですが、研究支援では、被災地の研究者と本学教員がスクラムを組んで取り組む復興支援研究のバックアップが行われています。研究支援本部長である船隈透・学術研究支援センター長に聞きました。

――東日本大震災での、本学の研究面での支援体制について教えてください。

「授業の中には自分探しのヒントが詰まっている」と語る船隈教授

「授業の中には自分探しのヒントが詰まっている」と語る船隈教授

 大震災では多くの尊い命のみならず、これまでの長い歴史の上に積み重ねられてきた貴重な文化、生活基盤のほとんど全てが、突然、強制的に奪われました。その惨状を見聞きするたびに本当に心が痛みます。一刻も早い復旧、復興を願わずにはいられません。名城大学では4月8日に、復興支援のための全学集会が開催され、生活、教育、研究面での支援を決めました。研究面では研究支援本部が発足し、学術研究支援センターが中心になって、共同研究支援、本学施設・設備の開放支援を実施しています。

――支援する共同研究とは、被災地域の研究者と名城大学の教員が共同して取り組む研究のことですか。

 大学としてできる支援は何かを考えた時、やはり特色が出るのは研究支援だと思います。支援では2つのタイプを設けました。研究続行に支障をきたしている被災地域の大学や研究機関に所属する研究者が、本学の教員と連携し、本学で行う研究を助成する「被災研究者支援事業」と、本学の専任教員が被災地の大学・研究機関の研究者と共同して、被災地復興を目的として行う研究に対して助成を行う「震災復興支援事業」です。

――具体的にはどんな支援しているのでしょう。

 被災研究者支援事業の対象になったのは1件で、東北大学の先生と本学薬学部の先生との共同研究です。東北大学で研究に使っていた機器類が使えなくなり、名城大学に来てもらって研究を継続してもらっており、旅費も負担しています。震災復興支援事業は4件。理工学部、農学部、都市情報学部の教員が被災地研究者とタイアップした研究を支援するもので、「東日本大震災による三陸沿岸海域の大規模海洋環境変動に対する高次捕食動物の応答機構の解明」「東日本大地震津波によって被災破壊した海岸の復旧・復興~砂浜海岸を対象にして~」などがテーマです。いずれも応募の中から採択したもので、助成金の総額は5件で650万円。被災地域の復旧、復興につながればと願っています。研究は大学の本質とも言える使命であり、ぜひ成果を上げてほしいと思います。

――大震災では原発事故による食の安全、風評被害も大きな問題になっています。

 作物には栄養源として17の無機元素が必要で、多くは根から吸収しています。ただ、それだけを吸収してくれればいいのですが、実際には人間に有害な重金属とか、それ以外も取り込む植物も知られています。原発事故の周辺地域などに生息する植物については、放射性物質の植物体表面への付着だけでなく、特定の植物が放射性物質を根から吸収し、蓄積してしまう可能性を排除できません。風評被害等をなくすためにも、当該地域の作物や植物について、まんべんなく放射線量を測定して公表し、問題となるような数値であれば直ちに除染、除去対策を取ることが大切です。

――4月から学術研究支援センター長に就任されました。先生方への注文はやはり、しっかり研究してほしいということでしょうか。

 そうです。大学は研究あっての教育だと思います。研究力のアップは我々教員の使命でもあります。科研費の申請や外部資金の獲得は外部からの評価の証でもありますので、積極的に支援していきたいと考えています。

――学生たちに対して気になっている点はありますか。

 自分が何を目指すか、どんな生き方をしたいかなど、「自分探し」ができていない学生が増えているような気がします。私も含め教員の多くは、学生たちの将来の生き方に役立ってほしいという思いを込めて授業をしています。授業の中では、今後の生き方や考え方の重要なヒントや参考となることがたくさん語られているはずです。共鳴、共感できることは積極的に取り入れてやろうという気構えで授業に臨んでほしいと思います。どの教員も、学生に比べたら豊富な経験を持ち、その道を極めた人たちです。いろんなヒントが詰まっているはずで、それを見逃すのはもったいないことです。

――与えられたチャンスは貪欲に生かすべきだということですね。

 「人間万事塞翁が馬」という言葉がありますが、ものごとはどう転ぶかわかりません。結果は、その時の運もありますが、一生懸命にやることです。学生たちの就職活動とかを見ていると特にそう思います。人事を尽くして天命を待つ生き方が私は好きです。

植物機能科学研究室で(10月3日)

植物機能科学研究室で(10月3日)

船隈 透(ふなぐま・とおる)

鹿児島県出身。九州大学農学部卒、同大大学院農学研究科博士課程修了。農学博士。1977年、名城大学農学部助手。講師、助教授を経て教授。2005年から2009年まで農学部長。2011年4月から学術研究支援センター長。研究室は生物環境学科の植物機能科学研究室。

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