育て達人第097回 髙畑 健二

準天頂衛星「みちびき」の精度アップや活用を研究   モノづくりの好きなエンジニアになってほしい

理工学部 髙畑 健二 准教授(制御工学)

 理工学部交通機械工学科(2~4年生は交通科学科)で、12月から就職活動が解禁になった3年生たちとOBたちの交流会が開かれました。厳しい就職戦線に立ち向かう学生たちの背中を、同じ学科のOBたちに後押ししてもらおうという狙いです。企画した同学科同窓会の交通機械会の幹事でもある髙畑健二准教授に聞きました。

――12月10日にタワー75で開かれた交流会には23人のOB、学生82人が参加しました。

「みちびき」の活用で「自動車や建設機械の無人運転も可能になる」と語る髙畑准教授

「みちびき」の活用で「自動車や建設機械の無人運転も可能になる」と語る髙畑准教授

 交通機械会には8000人の卒業生がおり、東海地方の自動車産業や航空機産業を中心に多くの人材を輩出しています。社長や自営業もかなり多く、後輩の面倒見がいいのも伝統です。これだけOBたちが活躍しているのに学生たちは就職で苦労している。それならば少しでも力になってやろうということになりました。昨年までは就職が決まっている4年生を対象に、役職クラスのOBが出席しての交流会でしたが、今年から就活本番を迎える3年生と現場で活躍中のOBたちとの交流の場にしました。

――手応えはどうでしたか。

 十分ありました。学生たちもゼミの配属が決まったばかりでしたので、いよいよ就職活動のスタートラインに立ったという自覚を持ったはずです。全3年生130人のうち82人が顔をそろえたことで競争心も芽生えたと思います。トヨタ自動車、三菱重工などハードルが高そうな会社でも、同じ学科の先輩ですので身近に感じたはずです。就職活動を進めるうえでのノウハウを伝授してもらい、名刺をもらっている学生たちもかなりいました。「一肌脱いでやろうか」という気になったOBたちも多かったようです。

――名城大学を卒業して昨年、34年ぶりに母校に戻っての教員生活を始められました。長年企業にいたからこそ、この種のイベントはやりたかったのでは。

 私は中菱エンジニアリングという会社で航空機の開発試験の仕事に関わってきましたが、学生たちとの面接も担当したこともあります。採用する立場からは成績も大事な要素ですが、紋切型よりは個性、コミュニケーション力があるのは魅力です。交流会に参加していただいたOBの皆さん方からもそういう指摘が目立ちました。キャリアセンターとは別に学生たちを支援させていただくことになりましたが、長年企業にいたこともあり、交通機械会幹事として、インターフェイス(交流支援)役をやらせていただきました。

――研究室では日本初の準天頂衛星「みちびき」の実用化に関する研究に取り組んでいるそうですが、どんな研究ですか。

パソコン画面を使って「みちびき」について語る髙畑准教授

パソコン画面を使って「みちびき」について語る髙畑准教授

 準天頂衛星とは真上(天頂)付近に滞在する衛星のことです。天頂衛星を使えば現在のGPS(全地球測位システム)より精度が高い測位が可能になります。GPSはビルの影に入ったりすると受信できなくなりますが、準天頂衛星ならそうした弱さが解消され、誤差も縮まります。GPSを使ったカーナビでは実際には5~10メートルの誤差があります。準天頂衛星なら誤差は75~40センチに縮めることが可能です。日本では昨年9月、初の準天頂衛星「みちびき」が打ち上げられました。全国の大学でもJAXA(宇宙航空研究開発機構)の募集に応じ、「みちびき」からの電波を計測しています。名城大学でも天白区周辺にはどれくらい降り注いでいるかを今年3月から計測しています。

――「みちびき」と名城大学に接点があることは知りませんでした。「みちびき」に興味を持ってゼミに入ってくる学生もいるのですか。

 多いですよ。私も1年生向けの「理工学概論」の講義などでPRしています。実用的な例を出して話すと学生たちは「なるほど、こういう風に役立つのか」と、俄然、興味を示します。電波は受信機で受けてパソコンに取り込み、インターネットを使いJAXAのサーバーに送り込み、このデータを各大学が共有して研究に役立てています。名城大学では誤差20センチ以下まで精度をあげる研究に取り組んでいます。先日も学生たちが三重県桑名市のレインボーサーキットまで出かけ、動的環境下での「みちびき」のデータを集めてきました。研究室の10人の学生たちは、計測、車線変更安定性シミュレーションなどへの応用、精度アップの3グループで研究しています。

――OBの立場も含め、学生たちへのメッセージをお願いします。

 名城大学には昔から「自由の学府」ということで伝統があります。私の学生時代も自動車関係では本当に自由に勉強させていただきました。東海地方の中堅エンジニアの多くは名城大学OBたちで占められていますが、そうした先輩たちに続く、モノづくりの好きなエンジニアになってほしいですね。12月10日に学生たちとの交流会に来てくれたOBたちの多くは学生時代にフォーミュラカーや省エネカーづくりに夢中になっていた方々です。

OB23人と学生82人が参加した交流会(12月10日、タワー75で)

OB23人と学生82人が参加した交流会(12月10日、タワー75で)

髙畑 健二(たかはた・けんじ)

愛知県稲沢市出身。名城大学理工学部交通機械学科卒。三菱重工系の中菱エンジニアリングに入社。航空電子技術部製品開発試室主管などを歴任。博士(工学、名城大学)。論文に「加速度誤差分離に基づく走行軌跡・姿勢角推定アルゴリズムの研究」など。2010年から現職。58歳。

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